Luupが東京都内で開始した電動キックボードのシェアリングサービスが話題になっている。国の特例措置により、ヘルメットなしでも(着用は任意)公道を走れる国内初の取り組みだが、これが日常になると街はどう変わるのか。実際にボードに乗って、Luupの代表に話を聞いてきた。

  • Luupの電動キックボード

    ちょい乗り電動キックボードが普及すると移動が変わる?

自宅で借りて駅で乗り捨てが現実に?

電動キックボードは、今の世の中で普及している唯一の1人乗り電動小型モビリティだといえるかもしれない。海外ではすでに、シェアリングサービスが気軽な移動手段として人気を集めているというから、その利便性は実証済みだ。

なぜ日本では、普及していないのか。電動キックボードが現行法では「原動機付き自転車」に該当するため、サービスを展開しようにもさまざまな規制が壁となるからだ。

なかでも普及の高いハードルとなっていたと思われるのが、ヘルメットの着用義務。ヘルメットを外出のたびに持参するのは煩わしいし、電動キックボードとセットでシェアするのは、特に昨今のコロナ禍においてはなかなか難しい面があった。

そうした中、Luupは国が進める産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」の認定を受け、4月23日に電動キックボードのシェアリングサービスを都内でスタートさせた。

  • Luupの電動キックボード

    Luupは電動シェアサイクルアプリ「LUUP」に電動キックボードを追加してサービスを開始。台数は100台を用意しているが、今後も増やしていく予定だ

今のところ今回のサービスに限った措置にはなるものの、LUUPで使える電動キックボードは道路交通法上の「小型特殊自動車」に区分されるため、ヘルメットの着用は任意だ。ヘルメットをかぶらずに利用できる電動キックボードのシェアリングサービスは日本初の試みとなる。

  • Luupの電動キックボード

    道路運送車両法では引き続き「原動機付き自転車」として扱われる電動キックボード。そのため、二段階右折は禁止となっている一方で、ナンバーやウインカーなどは原付としての保安基準を満たす必要がある

こんなシェアリングサービスが身近で当たり前のものになると、街はどう変わるのか。Luup代表取締役兼CEOの岡井大輝さんは、「例えば、駅から徒歩20分の物件であっても、LUUPがあれば、駅から徒歩10分の物件価値に近づけられるかもしれない。そこまでいくことが目標ですね」と語る。

確かに、自宅近くで電動キックボードを借りて駅前で乗り捨てられる移動手段が一般化すれば、多少は駅から遠い物件であっても毎日の通勤や通学が楽になりそう。必ずしも「駅近」が優位な世の中ではなくなると、住まい探しの優先条件すら変わってしまうかもしれない。ちょい乗り電動キックボードの普及が進めば変わることは、まだまだありそうだ。

  • Luupの岡井代表

    自宅付近のポートで気軽に電動キックボードを借りて、駅前のポートで乗り捨てるような移動手段が当たり前になる。Luupの岡井代表は、そんな世界を思い描いているようだ

気になる利用方法は?

ここからは、実際に試乗して感じたことを踏まえながら利用方法を確認していきたい。

電動キックボードの利用料金は初乗り10分が110円。それ以降は1分ごとに16.5円が加算されていく。決済方法は現状、クレジット払いのみの対応となる。

電動キックボードを利用するには、同社のアプリ「LUUP」をダウンロードし、普通自動車運転免許や普通自動二輪免許などを登録したうえで、用意された設問に回答して合格点を獲得する必要がある。原動機付き自転車免許は対象外なので要注意だ。

次にマップ画面から乗り出したいポートを検索し、電動キックボードの有無を確認する。電動キックボードが利用できるポートは今のところ、渋谷区、新宿区、港区の3エリアにある約200カ所となっている。

  • Luupの電動キックボード

    渋谷区に設置されている実際のポート。テープで仕切られただけの簡易的なものだが、こういう作りにしたのは今後の増設を見据えてのことだという。ポートに充電設備がないので聞いてみると、電動キックボードのバッテリーは人力で充電済みのものに交換していく仕組みだそうだ

ポートがあればあるだけ利便性が増していくことは想像に難くないが、今後は利用状況を見ながら、需要のある地域を中心に増やしていく予定。1台あたり全長1,300mm×全幅591mmとコンパクトであり、ちょっとした空きスペースでも収益化が狙えることから、ポート活用が検討されるケースも増えていくのではないだろうか。

ポートに着いたらロック解除ボタンを押し、スマホのカメラでQRコードを読み取って目的地のポートを選択する。要は返却場所を予約するわけだ。

これで準備は完了。スマートロックが解除され、実際にライドできる状態となる。

最高時速が15キロという点は、公道を走るうえで少し不安を感じるところだが、安全な最高速度を見極めることも実証の目的のひとつ。ユーザーの声を聞きながら、最適な上限速度を国と話し合っていくという。とりあえず、乗ってみた感じとしては、すぐにトップスピードに到達するイメージで、あまり遅くは感じなかった。

  • Luupの電動キックボード

    普通のキックボードのように地面を蹴って初速をつけてから、ハンドル右側にあるアクセルボタンを押すのが運転時のコツだ

ライド時の注意点としては、Luupが自主的に設定している走行禁止道路の存在が挙げられる。車両走行が著しく多い道路については、安全性を鑑みて走行を禁止としているそうなので、アプリ上のマップでルートを確認しつつ走行しよう。

  • Luupの電動キックボード

    電動キックボードにはスマホホルダーを完備

無事に予約したポートに到着したら、枠線内に電動キックボードを返却。最後に返却時の写真を送信したら決済が完了し、ライド終了となる。

正しく返却しなければ決済が完了しないこともあるが、きちんと電動キックボードをとめないとポートのスペースが限られる分、設置台数が減少してしまうので、整列駐車の徹底は同サービスの運営に不可欠となる。それに、雑然とした印象になってしまうと周辺住民や店舗の人たちからのイメージダウンにもつながりかねないので、このあたりの周知徹底はサービス普及にとっても重要なポイントになりそうだ。