「これなら毎日でも食べられる」と思えるラーメンが、この世にどれだけあるだろうか。

京都に本社を構える「京都北白川ラーメン 魁力屋」は、地元の味を追求した京都背脂醤油ラーメンをウリにする人気店だが、大きな国道沿いやショッピングモールなどを中心に展開していることもあって、まだその味を試したことがないという都心の人も多いだろう。

筆者もそのひとりだったが、ラーメンチェーン店の魅力に気付いた今、ぜひとも魁力屋のラーメンを味わってみたい。そう思ってさっそく立ち寄ってみたのだが、まずは結末からお伝えしよう。

これ、毎日でも食べたいです。

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そこはかとなく漂う"ねぎまみれ"になる予感

「京都北白川ラーメン 魁力屋」は、全国に100店舗超を出店するチェーン店。大きな赤い看板が目印で、店内はテーブル席なども多く、家族連れも多い様子。

メニューで推しているのはもちろん、京都背脂醤油系のラーメン。ふむ、腹が減っているので、どうしても「全部のせラーメン」に惹かれてしまう。いや、ちょっと待てよ? 数量限定の「九条ねぎラーメン」も良さそうだ。九条ねぎといえば京都の名物のひとつ。せっかくなら京都を味わい尽くすべきか?

店内の看板でもデカデカと主張している。よし、九条ねぎラーメンに決めた! これに焼きめし(小)を付けた「焼きめし定食」でオーダーを完了。麺の好みを聞かれたので固めでお願いすることに。初訪問にしてはなかなかテッパン、かつ渋いチョイスをしたのではないだろうか。

そんな自画自賛はさておこう。

ところで、最近いろんな店を訪問してわかったことだが、ラーメンチェーンというのは卓上に個性が表れる気がする。来来亭などは梅干しが置かれていてビックリしたものだ。では魁力屋はどうかというと……

ねぎである。どうやら今日はねぎまみれの1日になりそうだ。もちろん、ねぎ好きとしては望むところだし、ありがたい話。早くも期待が膨らむというものだ。

「九条ねぎの比叡山や~」いざ、ねぎ祭り開幕!

まもなく開催されるねぎ祭りに胸をときめかせること数分、ついに九条ねぎラーメンの焼きめし定食が到着。おお~! これこれ! これだよ!

この惜しげもなく乗った九条ねぎ!

「九条ねぎの比叡山や~」という声がどこからともなく聞こえてくる気がする。九条ねぎに目が奪われてしまうが、スープはいわゆる"背脂チャッチャ系"。こういうの、大好きです。さて、麺が伸びる前にいただこう。もちろん、まずはスープから。

ああ、美味しい……。味わい深い醤油味のスープに甘みのある背脂。意外にあっさりしているが、しっかりコクもある。ベースは厳選した国産の鶏がらを炊きあげた清湯スープだそうだ。

しかしやはり際立つのは、醤油の風味である。使われているのは、大豆の旨みを引き出すことにこだわって数種類の醤油を調合した「特製醤油」。実は魁力屋の店主の先祖は京都の老舗醤油店・藤田商店を営んでいたそうで、醤油屋の家系だからこそ、ラーメンの"かえし"である醤油のセレクトには徹底的にこだわったようだ。実際、素晴らしい仕上がりである。

麺はプツプツした歯ごたえが心地良い低加水麺。スープとよく絡み、のど越しもとてもいい。小麦粉は数百種類の中から厳選したものを使用し、麺は決まった温度と湿度で熟成させて味わいを深めているという。

では、いよいよ九条ねぎを絡めていただきましょう。

ねぎ祭りきたー! 待ってました、このシャキシャキ食感。いや、もはや存在感がありすぎてジャクジャク食感といった具合である。歯ごたえがすごくいい。

味も変な辛さはまったくなく、むしろ甘みと香りが際立っている。噛めば噛むほど味が出る。スープとの相性も抜群だ。

チャーシューもしっかりとした旨みが利いている。チャーシューも醤油に漬け込んで下味をつけているのだという。スライサーであえて薄くカットし、しっかりとした食感と柔らかさのバランスをとるのが京都流らしい。特別に個性を主張するわけではないが、麺やねぎとよく絡んでいい仕事をしている。

九条ねぎは食べても食べてもまだ尽きない。この安心感よ……。熱々スープに浸かって、若干しなったときの食感もまたいい。いっそ、このままねぎの海に溺れてしまいたい。

ということで卓上のねぎを追加。九条ねぎとは違う、いつものねぎの食感と味だ。やや辛みがあって、これもこれでまたよし。

しかし、このスープは本当にねぎとよく合う。

そして、なんとチャーハンまでねぎがたっぷり入っているではないか。ねぎも米や他の具材と一緒に炒められているが、割としっかりめなシャキシャキ食感が残っている。米はパラパラしていて口の中でしっかりと解ける。こちらもクオリティが高い。

ねぎ祭りもいよいよ終幕。最後までとても美味しく食べることができた。

あっさりなのに、しっかりとコクと旨みがある正統派ラーメンだが、そこに大量のねぎを加えることで、しっかりと遊び心も併せ持った一杯へと表情を変えた。途中で食べ疲れることなどありえない。毎日でも食べたいと思えるし、何ならちょっと遅めの朝ごはんとしても全然イケちゃいそう。

11時開店の店舗が多いようなので、次回は開店と同時に来て、今流行りの"朝ラー"っぽく試してみよう。ごちそうさまでした!

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