"たんたんめん"というワードを目にしたとき、どんな絵が頭に浮かぶだろうか?
多くの場合、赤いラー油が浮いたオレンジ色のスープに挽き肉や青梗菜が載った"担々麺"を想像するはずだ。しかし、「元祖ニュータンタンメン本舗」が作る"タンタンメン"は、我々が思い浮かべる、あの担々麺とは少し趣向が違う。
これまで何度かその看板を見かけたことがあったが、なんとなく入店せずにいた。もっと洗練された個人店がたくさんあるだろう、と漠然と考えていたのだ。
だが、元祖ニュータンタンメン本舗のタンタンメンはオリジナリティ豊かな、ここでしか味わえない中毒性の高い一杯だった。これはハマるぜ……!
元祖ニュータンタンメン本舗は「川崎のソウルフード」
元祖ニュータンタンメン本舗は、神奈川を中心に東京、埼玉、長野、宮城などに約40店舗を展開するラーメンチェーンだ。
1963年の創業で、本店を構える川崎市では「川崎のソウルフード」とも呼ばれている。地元で「たんたんめん」と言えば、真っ先に元祖ニュータンタンメン本舗の「タンタンメン」が真っ先に思い浮かぶほど市民に深く浸透しているという。
メニューはシンプルで、表ページのみの1枚で勝負。麺類はタンタンメンの他にも「まぜタン」「味噌らーめん」なども見受けられる。トッピングも豊富で、おつまみメニューやお酒類も提供しているらしい。
おっ、セットメニューもあるじゃないか。餃子・半ライス付きがAセットで、ミニよだれ鶏丼付きがBセットか……よし、今日はBセットを食べてみよう。
さっそくオーダーしてみると、「タンタンメンの辛さはどうされますか?」と店員さん。なるほど、辛さが選べるのね。う~ん、どうしようかなぁ。一番人気はどの辛さなんだろう?
「一番人気は中辛かもしれません。最初は"普通"でご注文されるお客様も多いのですが、常連様の場合は中辛、または大辛にする方が多いと思います。うちの唐辛子はそんなに辛いわけではなくて、どちらかと言うと、辛さを上げることでドロッとしたとろみが楽しめるイメージです」。
もし「唐辛子が足りない」と感じたら、後から追加もできるらしい。ということで、店員さんのアドバイスに従って、とりあえず中辛をオーダー。さぁ、どんな「たんたんめん」が出てくるのか楽しみだ!
一般的な"担々麺"とは違った個性派が登場! そのお味は……
数分後、タンタンメンとミニよだれ鶏丼が到着。こ、これは……!
玉子と唐辛子が織りなすイエローとレッドのコントラスト……一般的な「担々麺」とは全然違う! なんという個性だ。味の想像もまったくつかない。パッと見た感じ、めちゃくちゃ辛そうだけど大丈夫だろうか……。
さて、まずスープから。あっ! レンゲですくってみると、スープが意外なほど透き通っている! 一般的な担々麺はミルキーなものが多いが、このあたりのコンセプトもまるで違うようだ。そのお味のほうは……。
……美味い。えっ、旨味がスゴい! めっちゃ出汁が出てる! スープは豚ガラベースで、同時に強烈なニンニクの旨味もガツンと感じる。そして確かに、見た目ほど辛くない! 粗挽きされた唐辛子のドロっとした感じが斬新。ニンニクと唐辛子のW効果パンチで早くも昇天しそうだ……これ、大好き!
では、麺はどうか。一般的な担々麺の場合は細麺であることが多いが、こちらはツルツル&モチモチ食感のストレートの麺。やや太めだから、食べごたえもたっぷりだ。スープや唐辛子、挽肉が程よく絡んで美味しい。
このふんわり玉子もポイントだ。ラーメンや担々麺に「溶き卵」を合わせるとはなかなか珍しい。しかし、玉子とスープが混ざり合ったことで、ピリッとしたタンタンメンがまろやかになり、全体のバランスが上手く調和しているようだ。
調理の火加減が絶妙なのだろう、このふんわり食感がたまらない。量も多くて素晴らしい。玉子2個分くらいは使われているのでは?
ニンニクの大きさもご覧いただきたい。1センチ四方とまではいかないが、大きめにダイスカットされたニンニクがごろごろと入っている。店員さんによると、「大体、タンタンメン一杯あたりにニンニク4かけくらいは入っていると思います」とのこと。
香り高いスープに食べごたえのある麺、粗挽き唐辛子、ふんわり玉子、そしてゴロッと入った大量のニンニク。シンプルながら計算された食材たちが見事なハーモニーを奏で、強い中毒性を生み出している。
もう麺がなくなっているというのに、いつまでもスープをズルズルと飲んでしまう。舌にビリビリくるような辛さはないのだが、さすがに唐辛子だけあって、発汗作用が働いているのか、汗がドバドバと吹き出してくる!
当然、ミニよだれ鶏丼も美味しかった。肉は薄めで鶏ハムのようなしっとり食感。味付けはやや甘辛仕立てで、ご飯との相性も抜群だ。箸休め的にさっぱりと食べることができる。
最後まで大変美味しゅうございました。気付けばスープまで完飲。血圧高めなのに、やっちまった~……。
ちなみに、元祖ニュータンタンメン本舗のタンタンメンは、創業者が中国で本場の担々麺を味わい、その味を日本向けにアレンジして生み出したものだという。
1963年といえば、まだラーメンの種類も少なければ、激辛料理なども今ほどメジャーではない時代のはず。そんな時代にあって、川崎から「新しい担々麺」を発信し、「スタミナがつく料理」として打ち出し、50年以上も暖簾を守り、店舗を増やしてきたというわけだ。
そんな歴史と心意気に敬意を抱き、今後も頻繁にスタミナをチャージしに訪れたい。