渡辺名人は斎藤八段の急戦矢倉相手に攻め合って勝利
渡辺明名人に斎藤慎太郎八段が挑戦する将棋のタイトル戦、第79期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)の第3局が5月4、5日に愛知県「亀岳林 万松寺」で行われました。結果は94手で渡辺名人の勝利。2連勝でシリーズ成績を2勝1敗としています。
本局は先手番の斎藤八段が急戦矢倉を採用しました。対する渡辺名人は6筋の位を取った後、角を6四に設置してカウンター狙いの布陣に構えました。
1日目の午後、51分の考慮で斎藤八段が4筋から仕掛けていきました。仕掛けるとは言っても、一気に相手を攻め潰すようなものではなく、歩を交換しておいて次に本格的な攻めを繰り出そうという狙いです。
ところが局後の検討では、この斎藤八段の構想が疑問とされました。なぜなら斎藤八段が次の攻めの準備をする間に、渡辺名人の反撃が間に合ってしまったからです。渡辺名人は7筋から機敏に反撃し、桂を跳ねて先手陣の弱点である7七の地点を攻めていきました。
斎藤八段も負けじと2筋から攻めていって、両者相手の飛車角を取り合う激しい攻め合いに。この一直線の攻め合いで抜け出したのは渡辺名人でした。斎藤玉は周りに金銀がいない丸裸の状態に対し、渡辺玉は金2枚で守られているのが大きな違い。斎藤八段は詰めろ、詰めろで渡辺玉に迫っていきますが、渡辺名人に的確に受けられて攻めがあと一歩届きません。
最後は斎藤八段が渡辺玉に詰めろをかけるために持ち駒を使い果たしたタイミングで、渡辺名人が斎藤玉を詰まして終局となりました。渡辺名人は持ち時間9時間の対局ながら、2時間21分も余らせての快勝。終局時刻は17時25分で、18時からの夕休に入る前の決着となりました。
第1局は大逆転負けで落としたものの、その後は2連勝の渡辺名人。特に本局は後手番のため、非常に価値の高い勝利です。次の第4局は主導権を握れる先手番。渡辺名人は局後のインタビューで「(対局日が)近くなったら作戦を練って臨みたいです」と語りました。
一方、先手番を落としてしまった斎藤八段は次局へ向けて「前局、本局と中盤でミスが出ているので、なんとか改善できるようにやっていきたい」とコメント。2勝2敗で追い付くか、カド番に追い詰められるかは大違い。第4局は斎藤八段にとって大きな山場となります。
注目の第4局は5月19、20日に長野県「緑霞山宿 藤井荘」で行われます。