コロナ禍の今、庭で楽しむ手軽な自宅バーベキュー(BBQ)が見直されています。とはいえ、BBQは炭を用意して火をおこすなど準備や片付けが大変ですし、火力の調整が難しい炭火調理では、食材が焦げたり生焼けだったりといった失敗がつきもの。

※:マンションやアパートといった集合住宅の規約では、ベランダで火を使う行為や調理などを明確に禁止している場合が多いので注意。賃貸一戸建て住宅の庭も同様。一戸建て持ち家の庭でも、煙、臭い、騒音など近隣への迷惑にならないよう気を付けたい。

そんななか、BBQ大国アメリカのBBQグリルメーカー「Weber(ウェーバー)」から、電気調理の「Weber Pulse 1000電気グリル」(以下、Pulse 1000)が2021年3月に日本で発売されました。名前の通り電気で調理するので面倒な「火起こし」や炭の片付けは必要なし。しかも、食材内部の温度をリアルタイムにチェックできるIoT機能も搭載していて、「厚い肉も失敗せず焼ける」とうたいます。

  • ウェーバーによると、IoT仕様の電気式BBQグリルは、Pulse 1000が世界初なんだとか。かなり期待が持てます

最新BBQグリルの使い勝手は実際どうなのか? 気になる調理の使用感やメンテナンスについてじっくりチェックしました。Pulse 1000の価格は59,990円です。

さすがアメリカ式!? ……本体でかい!

Pulse 1000の第一印象は「デカい!」。ウェーバーはアメリカのメーカーだけあって(?)、本体もアメリカンサイズの幅60.5×奥行き53.5×高さ33cmと、それなりの存在感があります。重さはすべてのパーツをセットした状態で約12kg(実測値)。軽いとはいえませんが、本体両脇に大きなハンドルが付いているので、非力な女性の筆者でも物置から庭に移動させる程度なら割と簡単に動かせました。

  • 付属品をセットする前のPulse 1000本体。フタがあってドーム型のUFOみたいなシルエット。本体だけの状態だと電子部品がないため、カバーをかけて雨のあたらない屋外に置いておくことも可能です

  • 使用時は付属のコントロールユニットを装着。コントロールユニットは水濡れ厳禁です

ウェーバーのBBQグリルは、なんといっても「フタ」があることが特徴。フタの裏(反射板)で熱を反射して食材を包み込むように加熱するため、肉や野菜が美味しく焼けるといいます。

準備中には、焼き網の重さにもびっくり。付属するホーロー加工された鋳鉄製焼き網は、2枚で4kgとかなりヘビー。手に持つと見た目よりズッシリきます。ただしそのぶん蓄熱性が高いのか、肉を焼くと驚くほどキレイな焼き目をつけられました。

  • 本体のフタを開いたところ。ヒーター「B」を横にしたような形のヒーターが配置されており、このヒーターからの熱を銀色の反射板で反射させて、食材を包み込むように加熱します

  • 付属の焼き網は2枚。ホーロー加工された鋳鉄製で、見た目よりかなり重さがあります。ホーロー加工なので、そのまま利用すると脂分の少ない肉などはくっついてしまうことも。使用前にキッチンペーパーなどで軽く油を塗るのがオススメ

  • 本体下には脂受けをセット。ホイル製の脂受けは1枚しか標準付属していないので、洗って繰り返し使います

最後に、忘れてはいけない付属品が温度を測るための「プローブ」。プローブのプラグをコントロールユニットに差し、反対側の針部分を食材に差し込むことで、食材の中心温度をリアルタイムにチェックしながら加熱調理が可能です。プローブは標準セットだと1本付属しますが、もう1本を買い足して最大2本まで同時に使えます。

  • 食材に差し込んで温度をチェックするためのプローブ。コントロールユニット下部にプラグを差して利用します

Pulse 1000で肉を焼く。使い勝手は? 味は?

いよいよPulse 1000で調理……の前に、まずはIoTのBBQグリルであるPulse 1000用アプリ「Weber Connect」をスマホにインストールしてPulse 1000と連携させます。このWeber Connectには、牛、豚、魚といった食材別のレシピがあり、レシピを選ぶと詳しい調理方法を説明。さらに、加熱中は食材をひっくり返すタイミングや焼き上がりを知らせてくれる優れモノです。

  • 2021年4月の時点で、牛肉(赤身)のレシピは9種類ありました。今回は「ステーキ」を選択。ステーキの厚さや焼き加減なども選べます。ただし、ステーキは一番薄い肉の設定で2cm。日本では1.5cmくらいの薄めのステーキ肉も多いのですが、このあたりもアメリカンな印象

アプリのレシピでは、ステーキの調理では肉を焼く前に余熱(275℃)が必要でした。注意したいのは、グリル内の温度は本体のダイヤルでしか変更できないこと。専用アプリでは「本体で設定した温度」「現在の庫内温度」「プローブ温度」はわかるのですが、アプリから設定温度を変更する機能はありません。個人的には、レシピを選んだら温度も自動調整してくれると便利だと感じるのですが、このあたりは今後のバージョンアップに期待したいところです。

もうひとつ気を付けたいのが、余熱にそこそこの時間がかかるところ。275℃の余熱には、だいたい25分かかりました。ちなみに、Pulse 1000の最高温度は360℃なのですが、360℃まで余熱するには30分強かかります。

  • レシピに従って肉に油をまぶし、塩こしょうをするマイナビニュース・デジタルの林編集長

  • レシピ通りに、肉の中央に届くようにプローブを差し込みます

  • 余熱が設定温度に達するとアプリに通知がくるので、すかさず肉を網へ!

  • 調理中はフタを閉めるので食材の焼け具合は見えませんが、食材をひっくり返すまでの時間や加熱終了までの残り時間は、アプリ上でカウントダウン(秒単位)しているので失敗はありません。その場を離れていても、焼き上がったら「グリルから取り出す」という通知がくるので、焼きすぎや生焼けの失敗はほとんどないはず

焼き上がった肉の味は……、驚くほどウマい! 赤身の肉は調理すると固くなりがちですが、フライパンで焼いたステーキより柔らかく、旨みもしっかりしていると感じました。今回の舞台裏では、Pulse 1000をセットしているときに夫が「こんな大きな家電、日本だと置く場所に困るね」と言っていたのですが、肉を試食したあとに「これは買う価値がある味……」とつぶやいていました。

  • ステーキレストランのようにしっかりとした焼き色! 焼き目はちょっとカリッとしていて香ばしさがあり、肉のアクセントになります

  • アプリに完成の通知がきたら火から下ろしてカット。「ミディアムレア」を選んだので、中はしっかり赤身ですが、食べるとちゃんと中心まで加熱されているのがわかります。絶妙な火加減です

一方でちょっと残念なのは、今のところ魚介系のレシピが少ないこと。Pulse 1000で金目鯛を一尾まるごと焼いてみたのですが、魚のレシピは基本的に「皮なし」のものばかりでした。唯一「皮付き」のレシピがあった「サーモンの切り身」というレシピで金目鯛を焼いたところ、魚の種類が違うためか皮がボロボロに……。このあたりは今後レシピが増えることを祈るばかりです。

  • 調理エリアは41×32.3cmと大きいので、皿からはみ出るような大きな魚まるごと一尾でもしっかり調理可能! 身はふっくらとしてとっても美味しく焼けますが、皮の薄い魚は皮がボロボロになってしまいました……

マニュアルモードならどんな食材でもOK!

ここまではアプリ内のレシピに沿って調理しましたが、個人的に気に入っているのが食材の中心温度を自分で指定できる「温度アラート」機能です。たとえば、前述したレシピの「ステーキ」では2cm以下の肉はうまく焼けない可能性がありますが、マニュアルモードならどんな薄さの肉でも理想通りに焼けるはずです。

筆者は牛肉は肉の中心温度が58℃、豚なら63℃くらいの焼き加減が好きなので、Pulse 1000でもそのように設定して肉を焼いたところ、薄いステーキ肉でも理想通りの火加減で完璧に調理できました。

  • 「温度アラート」で食材の中心温度が58℃になったら知らせるように設定。写真の小さい数字は設定した温度、大きな数字は現在の食材の中心温度

  • 中心温度を58℃に設定して焼いた、厚さ1cm強の薄い牛ステーキ肉。中心の焼き加減も完璧です

  • 豚ヒレ肉のブロックは中心温度が63℃になったあとも、加熱温度を下げてじっくり加熱。豚は殺菌のために63℃で30分加熱が推奨されていますが、Pulse 1000ならこんなコントロールもお手の物です。高温だとパサつきやすいヒレ肉も、しっとりジューシーに仕上がりました

BBQで面倒な後片付けも簡単

調理と食事を楽しんだら、もちろん片付けをしなければなりません。まず思った「炭の処理がない」のはすごくラクなこと。炭火のBBQでは、まず炭を火消しツボやバケツなどに移動させて消火する必要があり、火が消えた炭の処理も面倒。一方、Pulse 1000は電気式なので、コンセントを抜くだけで終了です。

本体の掃除は、メーカーによるとフタを閉めて最高温度で庫内の脂を炭化させ、網に残った炭をタワシなどでこすり落とすというもの。ただしこれは、週に一回などそれなりの頻繁で使う場合のメンテナンス方法。一般的な家庭だと1カ月に1回くらいの家族BBQが多いのではないでしょうか。汚れ具合にもよりますが、焼き網を水洗いして、焼き網以外の本体部分を濡らしたキッチンペーパーで拭き取れば十分と感じました。長期間使わない場合は、ドライバーを使ってヒーター部を取り外すことで、反射板もまるごと水洗いできます。

  • 使用後のPulse 1000。焼き網だけではなく、本体下側の反射板にも焦げた脂がべったりと付着しています

  • コントロールユニットを外すと、大きなネジがあるので大きいマイナスドライバーでネジを外します(写真上)。これでヒーターユニットを取り外せるように(写真下)

  • ヒーターを取り出すと、反射板も外せるようになります。反射板は切りっぱなしの金属で、端が鋭利なのでケガに注意

実は筆者、今回はじめて電気式のBBQグリルを使ったのですが、「炭ほどは美味しくならないだろう」と大きな期待はしていませんでした。ところが実際に調理してみると、フライパンで焼くより明らかに美味! とくに、肉とキノコ類、空豆などの豆類は「これ本当にいつものスーパーで買った食材?」と驚くほど美味しくなりました。電気式にすることでBBQの準備も片付けも簡単になるので、これなら2週間に一回くらいは普段の料理に取り入れても良いかも……と感じたくらいです。

覚えておきたいのは、消費電力が1,300Wと大きいこと。最近は電源が使えるキャンプ場所も増えていますが、消費電力1,000Wまでというケースが多く、そうした場所だとPulse 1000は使えません。持ち運び可能なポータブル電源も、定格出力1,000W以上の製品はかなり値が張りますし、予熱を含めてPulse 1000を使う時間を考えると厳しいものがあります。「キャンプ場にBBQグリルを持って行く」という目的でPulse 1000を検討するなら、消費電力には十分注意してください。