俳優の柳楽優弥と田中泯がW主演を務める、映画『HOKUSAI』(5月28日公開)の本編映像が5日、公開された。
同作は世界的アーティスト・葛飾北斎の知られざる生涯を描くオリジナル作。葛その才能は認められながらも、売れない絵師として葛藤の中で筆をとり続けた青年期の北斎を柳楽が、芸術家としての情熱を失うことなく孤独に自らの画才を磨き続けた老年期の北斎を田中がそれぞれ演じる。「人間・北斎」と、彼が描いた「三つの波の秘密」が生まれるに至った物語を描く。
この度公開されたのは、阿部寛演じる耕書堂の店主・蔦屋重三郎が逆境にも負けずに勝機を見据え、前へ進もうと力強い決意を見せる本編映像。蔦屋重三郎と言えば葛飾北斎はもちろん、喜多川歌麿や東洲斎写楽など世界中に名を轟かせる、数々の絵師をこの世に輩出した江戸時代の名プロデューサーで、レンタルビデオ・書店大手企業である“TSUTAYA”は、彼の名プロデューサーぶりにあやかって名付けられたともいう。日本独自の町人文化が栄えた頃、華やかな浮世絵は当時、庶民の間でも圧倒的な人気を誇っていたが、幕府の弾圧によりその状況は一転、版元や絵師は創作の自由を奪われていく。
本映像では、禁制を犯したとして幕府にいち早く目を付けられた耕書堂の作品たちが無情にも燃やされ、店中も乱されて荒れ果てた場面が映し出されていく。その光景に立ち1枚の絵を手に取る重三郎は、汚されてもなお妖艶な魅力を纏う喜多川歌麿の作品に改めて感嘆し、「全くありがてえもんだ、出る杭は打たれるってな。つまりうちが江戸で頭一つ抜けた版元だってお墨付きを貰えたってことだ」と今後の商いが危ぶまれそうな非常事態にも臆していない様子。さらに、「こいつは恵の雨ってもんよ。これで江戸中がうちの出方に目凝らしやがる。種を植えるには、またとねぇ折ってことよ」と、ピンチな時こそ勝機と捉えている。
阿部は蔦屋重三郎について、「いろいろな才能を集めて自分で育てていく、先見の明があったと思うんですよね。今で言うプロデューサー的な人。いろんな世界に入っていってどんどん新しいことを作り出していく、この人がいたから色んな才能が開花したのだと思います。幅広い人脈を大事にしながら交流の場を多く持って、様々な才能を見つけ出し、世界に発信していきたいという夢を持ちながらも、夢半ばで亡くなっていったんですよね」と語る。演じるにあたり、葛飾北斎や喜多川歌麿の絵が展示されている美術館に足を運んだことも明かし、「重三郎によるプロデュース後の北斎や歌麿が描いた作品の中にも、素晴らしい作品が多数あるんですよね。『あぁ、これを見ずして散っていったんだな』と思いました。それらの作品を目にした時に『きっとこういう才能のある人はすごく孤独だったんだろうな」と、今はそう思っています』と重三郎の生き様に触れ、思いを馳せた。
橋本一監督も自身が出演したラジオ番組で、「絵を描くということ自体は当然ですが、一番は北斎の不屈の心を描きたいと思っていました。期せずしてですが、コロナで大きな打撃を受けている現代やそれを取り巻く状況において”負けてはいけない”という強い心は不変であり、何度でも立ち上がれるのが人間だ、というメッセージを強く込めました」と本作への思いを明かし、未曽有の事態に直面している今だからこそ、あらゆる逆境に立ち向かい、道を切り開いていく大切さを感じさせるようなエネルギーが込められている。
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