ますます人気が高まるクラシックカーの世界。電動化とも自動運転とも無縁だが、一歩足を踏み入れると、なかなか抜け出せない魅力があることは間違いない。海外のモデルだと今、どんなクルマが買えるものなのか。「オートモビル カウンシル2021」で見つけた珠玉のクルマたちを見ていこう。

  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」

    「AUTOMOBILE COUNCIL 2021」(オートモビル カウンシル)で出会った魅力あふれる輸入車たちを紹介したい

まだあった! 走行1.67万キロの「ゴルフ2」

トップに紹介するのは、フォルクスワーゲン(VW)「ゴルフ」専門店としてみなさんご存知の「スピニングガレージ」が展示販売していた最終1991年製の「ゴルフ2 GLi」だ。

  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」

    スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」

フルノーマルでシルバーのピカピカボディは、全長3,985mm、全幅1,665mm、全高1,415mmとコンパクト。現代のクルマでは見られない角ばったボディとフロントの丸型2眼ヘッドライトの組み合わせが素敵だ。

  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」

    角ばったクルマは最近、とみに少なくなってきている

パワートレインはフロントに横置きで搭載する1.8L直列4気筒で前輪を駆動する。トランスミッションは5速MTと3速ATの2種類で、この個体は後者のATモデル。つまり、AT限定免許でも乗ることができるのだ。

  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」
  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」
  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」
  • 3速ATでラゲッジの広さも十分。エンジンは1.8Lの直4をフロントに横置きで搭載

どんな状態なのか気になったので、同社の田邊大介班長に話を聞いてみた。この方、愛車は2リッター改の90年式「ゴルフ GLi」と88年式「ゴルフ カブリオ」というから、根っからのゴルフ大好き人間であるらしい。元々はお店のお客さんだったのが、好きが高じて買う方から売る方に回り、今や奥様までが同社の社員なのだという。

今回のゴルフ2、オドメーターを見ると走行距離はわずか1.67万キロ。ダッシュボードやステアリングのシボ、モケットシートの表皮の感じは、まだ新車の匂いを残している。とはいえ、生まれてから30年が経過しているので、きちんと走る状態とするため、水回りやブッシュ類の予防整備で100万円以上をかけているそうだ。

  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」
  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」
  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」
  • モケットのシートやステアリングの状態がすばらしいのは、走行距離わずか1.6万キロ台だから

昔から欲しかったシルバーボディのゴルフ2 GLi。筆者も見た瞬間に「買います!」と叫びそうになったのだが、379.8万円のプライスタグを見て、ギリギリで急ブレーキを踏んだ。危ういところだった。

  • スピニングガレージの1991年式「ゴルフ 2GLi」

    危うく買ってしまいそうになるほどの魅力がこのクルマにはあった

ポルシェクラシックのお墨付き! 「911ナロー」

「911はやっぱりナローじゃないと」とおっしゃる方に向けて、「オートダイレクト」が販売していたのが1971年製の「911E」だ。

  • 1971年製の「911E」

    1971年製の「911E」。状態は極上だ。ある時期に作られたポルシェ「911」は幅が狭くてボディが細身なので「ナローポルシェ」と呼ばれる

コンパクトなクーペボディの後部に排気量2,190ccの空冷水平対抗6気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動するRR方式を採用しているのは誰もが知っていること。ゴールドカラーの911エンブレムをリアに取り付けたこの時期のモデルは、最高出力155PSを発生する。

  • 1971年製の「911E」
  • 1971年製の「911E」
  • 1971年製の「911E」
  • リアに搭載する2.2リッター空冷水平対抗6気筒も調子がよさそう

同社によるとこの個体は、2020年7月にポルシェによる「ポルシェクラシック テクニカルサティフィケイト」を取得済み。車両識別番号、エンジンとトランスミッションの識別番号、オプション装備などがモデル年式と一致しているかどうか、全てチェックを受けているという。

  • 1971年製の「911E」
  • 1971年製の「911E」
  • 1971年製の「911E」
  • 5連メーターのスピードやオドメーターはマイル表示になっている

データよると、製造年月日は1970年11月12日。納車場所はUSAで、ボディカラーはシグナルオレンジ。その所見は「すべてのセクションがいい状態です。塗装はすばらしく、インテリアも年式相応の状態のよさです。エンジンは若干オイル滲みがあるものの、すぐに対処する必要はありません。ブレーキパッドや前後ローターの摩耗は少しだけ。サスペンションにも大きな問題は確認されませんでした」とのこと。ということは、70年式のこの911ナロー、1,600万円で買って、すぐに乗り出すことが可能ということだ。

  • 1971年製の「911E」

    すぐに乗れる状態の「911E」

京都で乗るクラシックシトロエン2台

京都のクラシックシトロエン専門店「アウトニーズ」が展示していたのは、鮮やかなフレンチブルーの「2CV」と渋いグリーンメタリックの「DS23」。どちらも、古いフランス車好きにはたまらないクルマだ。

  • シトロエンの「2CV」と「DS23」

    アウトニーズが展示していた「2CV」と「DS23」

それぞれを簡単に説明すると、2CVはフランス語で「2馬力」を意味し、日本でも「ニーシーブイ」とか「ドゥーシボー」と呼ばれて親しまれているクルマだ。ユーモラスで簡素なスタイルと4人が乗れる居住性、優れた経済性などにより、フランス人にとっての「国民車」となった。1948年から1990年まで生産が続けられたロングセラーモデルだ。フロントに搭載するのは空冷水平対抗2気筒OHVの602ccエンジンで、最高出力は2馬力ではなく約29馬力。左ハンドルでミッションは4MTだ。

  • シトロエン「2CV」
  • シトロエン「2CV」
  • シトロエン「2CV」
  • 「2CV」はフランスの国民車と呼べるクルマだ

  • シトロエン「2CV」
  • シトロエン「2CV」
  • シトロエン「2CV」
  • 内外装もエンジンも最高の状態

一方のDS23は、全長4,870mm、全幅1,800mm、全高1,460mmという大型のボディを持つ。1955年から1975年まで、シトロエンのアッパーミドルクラスとして名を馳せたモデルだ。エクステリアは前衛的な形状。サスペンションは油圧で作動する「ハイドロニューマチック」を採用していて、雲に乗っているかのような異次元の乗り心地を提供するという。

  • シトロエン「DS23」

    シトロエン「DS23」

展示車は「パラス」のサブネームがついた最終型。水冷OHV4気筒2,347ccのエンジンを搭載しており、最高出力140PS以上、最高速度188km/hの性能を誇った。内装もユニークで、時計の8時の位置が直進となる1本スポークのステアリングや、座ると家のソファーのようにお尻がふわりと沈み込む前後のシートなどは、当時の雰囲気をしっかりと残している。

  • シトロエン「DS23」
  • シトロエン「DS23」
  • シトロエン「DS23」
  • シトロエン「DS23」
  • 1本スポークのステアリングなどで当時の雰囲気を存分に味わえる

アウトニーズの伊藤悠太取締役によると、実はこの2台、2021年4月からはレンタカーとして活躍する予定だという。この取り組みについては、今回のイベントで初めて紹介したそうだ。利用料金は2CVが1日1.68万円、1泊2日で2.8万円、2泊3日で4.5万円、DS23が同2.8万円、5.2万円、7.5万円。上記以上の日程は応相談だという。

京都までは公共交通機関で行って、保険付きでメンテナンスも十分なクラシックシトロエンに乗り換えてドライブ観光を楽しむというのは、新たな提案として興味深い。操作は現代のクルマとちょっと違うが、乗車の前にはしっかりとレクチャーしてくれるので安心だ。

  • シトロエン「DS23」

    京都にクラシックシトロン。これは「ばえる」のでは?

今回のオートモビル カウンシル2021では、さまざまなクラシックカーに出会うことができた。これまでに、ヤナセ編国産車編でも紹介済みだ。どれもこれも極上の状態なので、ちょっと高いと思っても、それはそれぞれの車種で今買える最高額なのだと思えば納得がいく。同じものはないし、それぞれの個体の数も減ってきているので、値段は上昇気味。販売する側も買う側も、実車を目にすると思わず気合いが入ってしまうようだ。