「棚から牡丹餅」ということわざは、「思いがけない幸運が転がりこんだり、苦労せずによいものを手にしたりすること」を意味することわざです。「たなぼた」と略して使われるほど親しまれていますが、その由来や語源をご存知でしょうか? 普段から何気なく使っている棚から牡丹餅も、意味を深く知れば語彙力を高めてビジネスに役立てることが可能です。
本記事では、棚から牡丹餅の意味や由来、使い方や類義語などについて詳しく解説していきます。英語表現もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
棚から牡丹餅(ぼたもち)の意味
棚から牡丹餅は「棚から牡丹餅が落ちて、棚の下で寝ていた人の口の中に入る様子」から、「予想もしなかった幸運が舞い込むこと」を意味することわざです。棚から落ちた牡丹餅が口に入る様が「予想もしなかった状況」を表し、牡丹餅は「幸運」を意味しています。
「棚から牡丹餅(ぼたもち)」の由来
昔は砂糖が貴重品だったため、甘いものを口にする機会がほとんどなかった庶民にとっては牡丹餅が幸運の象徴にもなっていました。
棚は食器棚のようなものを指すと考えられているので、「予想もしなかった場所から幸運が舞い込んでくる」という意味も含まれています。
棚から牡丹餅(ぼたもち)の使い方
棚から牡丹餅を使うときの重要ポイントは、以下の3つです。
- 予想をしていないシチュエーションだった
幸運が予想できる状況では使いません。
- たいして苦労していない
苦労をして幸運を手に入れた場合は「たなぼた」にはならないので注意しましょう。
- よいことが起きる
牡丹餅は幸運の象徴なので、不幸な出来事には使えません。
たとえば、「営業活動中に手ごたえを感じた顧客との成約」は、ある程度予想できることなので棚から牡丹餅にはなりません。また、予想もしなかったことの対象は良いことに限られるため、「あんな事故に遭うなんて棚から牡丹餅だ」のように使うのは誤りです。
棚から牡丹餅(ぼたもち)の例文
棚から牡丹餅の例文をご紹介します。
「初対面のクライアントから大きな仕事をいただけるなんて、まさに棚から牡丹餅だ」
ビジネスシーンでも、思いがけない幸運が舞い込んだときには棚から牡丹餅が使えます。自分だけではなく、同僚に予期せぬ幸運が訪れたときにも「それはまさに棚から牡丹餅だね」のような使い方ができます。
「突然のキャンセルが発生し、買えないと思っていたコンサートのチケットを購入できた。まさに棚から牡丹餅だ」
棚から牡丹餅は、プライベートで思わぬ幸運が舞い込んだときにも自然に使えることわざです。「こんな幸運、まさにたなぼただ」と略して使っても問題ありません。
「棚から牡丹餅を期待しているようでは成功しないよ」
幸運が舞い込んだときだけではなく、「思いがけない幸運を期待しているようではダメだ」と他人を諭すときなどにも使われます。
棚から牡丹餅(ぼたもち)の類義語
棚から牡丹餅の類義語を3つご紹介します。
開いた口へ牡丹餅
「開いた口へ牡丹餅」や「開いた口へ餅」は、どちらも思いがけない幸運を意味することわざです。開いた口に偶然にも餅が飛び込んでくるような都合のいい出来事などに使います。
もっけの幸い
「もっけの幸い」は、「予想もしなかった幸運が訪れること」を意味する言葉です。もともと「もっけ」は死霊や妖怪を指す「物の怪(もののけ)」を意味する言葉でしたが、やがて「不思議なこと」という意味に変わり、さらに「意外なこと」を意味する言葉へと転じました。
鴨が葱を背負ってくる
鴨が葱を背負ってくれば鴨鍋の主要な材料がそろうので、「自分にとって都合のよいことが訪れる」などの意味で使われます。棚から牡丹餅は「予期せぬ事柄や事象」に対して用いられる一方、鴨が葱を背負ってくるは「相手の行動」に対して用いられることわざです。
鴨が自分で鴨鍋の材料を持ってくることから、「お人好しが他人に利益を与える様子」を表すときなどにも使われます。現在では「カモネギ」と略されることも少なくありません。
棚から牡丹餅(ぼたもち)の対義語
棚から牡丹餅の対義語を2つご紹介します。
虎穴に入らずんば虎児を得ず
「虎穴(こけつ)に入らずんば虎児(こじ)を得ず」は、「虎の子どもを得るためには、危険を冒して虎の巣穴に入る必要がある」という意味のことわざです。苦労せずに幸運が舞い込むことを意味する「棚から牡丹餅」とは逆に「大きな成果はリスクと引き換えであること」を示しています。
蒔かぬ種は生えぬ
「蒔かぬ種は生えぬ」は、「種をまかなければ芽が出ることもなく、何も収穫がないこと」を意味することわざです。努力もしないでいい結果を期待しても無駄という意味合いなので、「棚から牡丹餅」の対義語としてそのまま使えます。
棚から牡丹餅(ぼたもち)の英語表現
棚から牡丹餅の英語表現をご紹介します。
windfall
windfallは「風によって落ちた意外な授かりもの」などを意味するため、そのまま棚から牡丹餅の意味として使えます。
He thinks that roasted larks will fall into his mouth
英語のことわざで、直訳は「彼はヒバリのあぶり肉が落ちてこないかと思っている」となります。棚から牡丹餅のように「思いがけない幸運を期待する」という意味合いで使えます。
棚から牡丹餅(ぼたもち)は素直に喜んでOK
棚から牡丹餅は、思いがけない幸運や、労せずよいものを手に入れたときなどに使うことわざです。
予期せぬ幸運が転がり込んでくるのは喜ばしいことですが、いつやってくるかわからないのが棚ぼたです。普段の仕事において、過度に期待するのはやめるようにしましょう。