「松竹梅」は結婚式などお祝いの場でよく目にする言葉です。日本食のメニューに見かけることもあるでしょう。普段何気なく目にしている松竹梅ですが、どのような経緯で使われるようになったのでしょうか。
本記事では松竹梅の意味や由来、使い方についてご紹介します。類語や英語表現も合わせて解説するので、ビジネスシーンに役立ててみてください。
松竹梅の意味と由来
松、竹、梅は古来より歳寒三友(さいかんさんゆう)と呼ばれ、中国では宋のころから画の題材として好まれてきました。寒さのなかでも色褪せないことから「清廉潔白」や「節操」であるさまが表現されます。
松竹梅が持つ意味と由来を下記で詳しく見てみましょう。
日本では縁起物として扱われている
日本酒の名前に付けられるなど、日本ではおめでたいものの象徴である、松竹梅。一説ではこの言葉の並びは、おめでたいものとして定着した順番だとされています。
- 松:平安時代ごろ
- 竹:室町時代ごろ
- 梅:江戸時代ごろ
また、組み合わせが良いとされているものに、松に鶴、竹に雀、梅に鶯ともされています。
「松」の意味と由来
松は樹齢が数十~数百年と長く、「長寿・節操・不老不死」の象徴となっています。一株に雄と雌が存在していることや常緑樹で一年中緑を保ち、凛々しい姿を見せることから大変めでたい植物とされています。このことから、古くから神が宿る神聖な樹とみなされていました。
松は平安時代の頃から縁起物として扱われてきました。
「竹」の意味と由来
竹は地面にしっかり根を張りまっすぐ伸びることに加え、次々と新芽を出す様子から「子孫繁栄」の象徴となっています。常緑樹で一年中枯れることはなく、丈夫で成長が早いので「生命力・成長」という意味も含んでいます。
竹は室町時代の頃から縁起物として扱われてきました。
「梅」の意味と由来
梅は早春に他の植物に先駆けて、気高い香りを放ちながら花を咲かせます。また、苔が生えるほどに樹齢を重ねても、寒い冬に花を咲かせるほどの生命力を持っています。このことから梅は「気高さ・長寿」の象徴となっています。
梅は江戸時代の頃から縁起物として扱われてきました。
松竹梅のランク付けとしての使われ方
松竹梅は3つともがめでたく、慶事の象徴であるため、そこに優劣はありません。では、なぜ松竹梅がランク付けに使われるようになったのでしょうか。松竹梅が使われるシーンごとに見ていきましょう。
結婚式の席名
松竹梅は縁起物の象徴なので結婚式の席次でも使用されており、新郎側には松竹梅が、新婦側には福禄寿が用いられるケースが多いようです。そして、「松」は新郎の主賓卓、「福」は新婦の主賓卓で割り振られ、以降はテーブルの優先順位に沿って決められます。
松竹梅そのものに優劣はありませんが、席の優先順位をわかりやすくすることで、結婚式場のスタッフが対応しやすいという側面があります。
料理のランク付け
松竹梅という言葉が浸透すると、寿司屋や蕎麦屋のメニュー表で、「特上・上・並」を表すのに使われるようになりました。言葉の響きが美しいうえ、特上を注文するときの気取りや並を注文するときの卑屈さを隠すためだったとされています。
松竹梅の類語と英語表現
続いて、松竹梅の類語やビジネスシーンで活用できる英語表現を紹介します。
松竹梅の類語
【松竹梅と同じ縁起物として扱われている類語】
- 鶴亀(つるかめ)
「鶴は千年、亀は万年」と呼ばれるように、長寿を象徴する縁起物です。ご祝儀袋のデザインに多く用いられ、結婚式の席名でもよく使用されます。
- 雪月花(せつげっか)
冬の雪、秋の月、春の花と、四季が作り出す自然の美しさを表した言葉です。「美しいもの・縁起がいいもの」を象徴する意味もあるため、松竹梅と同じく結婚式の席名にも用いられています。
【松竹梅と同じくランク付けとして扱われている類語】
- 甲乙丙丁(こうおつへいてい)
古代中国の数詞で時間や空間を表す十干(じっかん:甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)の上位4つを指し、順番を表すときに用いられます。契約書などでは甲乙丙の3つだけが使用されることが多いです。
- 金銀銅(きんぎんどう) 金メダル・銀メダル・銅メダルなど、勝負事のランク付けで使用されます。地球上で希少価値の高い金を一番上に、その次に貴重な銀、銅が続き順番に反映されています。
松竹梅の英語表現
松竹梅は英語で「pine, bamboo and plum」と表現されます。また、日本での読み方と同じ「Shochikubai」と表記されることも多いです。
松竹梅のランク付けと同じような英語表現は下記を参考にしてください。
松 | premium(プレミアム・特典) | platinum(プラチナ・白金) | AAA |
竹 | special(特別) | gold(ゴールド・金) | AA |
梅 | regular / standard (普通 / 定番) | silver(シルバー・銀) | A |
ビジネスにおける「松竹梅の法則」とは
松竹梅がランク付けに使われるようになると、「松竹梅の法則」という現象も生まれました。これは人間の心理傾向を表すものです。
人間は複数のサービスからひとつを選ぶ場面に直面すると、「極端の回避性」という心理が働きます。極端の回避性は「一番高いものは自分には贅沢」、「一番安いものを選ぶとケチに思われないか心配」という心理が発生するため、真ん中のサービスが選ばれやすいという行動経済学です。
例えば、松コースが5,000円、竹コースが3,000円、梅コースが2,000円など、値段が異なる3段階のサービスがあれば、真ん中の竹コースの購買率が最も高くなり、その割合は松コース2:竹コース5:梅コース3の割合になるとされています。
松竹梅の法則を活かした販売
松竹梅の法則を逆手にとり、商品やサービスの価格設定では一番売りたい商品を真ん中にするという方法があります。
例えば一番売りたい商品(竹)を1万円に設定した場合、その上の商品(松)を2万円、下の商品(梅)を8,000円などに設定します。このときのポイントは、松と竹の価格を離して、竹と梅の価格を近づけること。すると一番売りたい竹の商品は、梅に2,000円足すだけで購入できるので、お客が選びやすくなるのです。
このようにビジネスシーンにおいて、松竹梅の法則を活用して商品が販売されることもあります。
基本的に優劣はないが商品のランク付けで使用されるケースが多い
松竹梅は中国の文人画で好まれていた画題のひとつで、平安時代以降には日本でも縁起物の象徴とされてきました。「特上・上・並」の代わりとして寿司屋や蕎麦屋のメニューに用いられるようになると、商品のランク付けとしての役割も持つようになりました。
松竹梅にもともとの優劣はありませんが、現代では商品やサービスのランクを表す際に使われることを認識しておきましょう。