「無病息災」という言葉は、神社での祈願やお守りなどで目にしたことがあるでしょう。人生の節目で使われる、大人として覚えておきたい言葉のひとつです。

この記事では、この無病息災という言葉の意味や成り立ち、使い方や例文、類義語や対義語などをご紹介します。

  • 「無病息災」の意味と成り立ち

    「無病息災」の意味や使い方などを紹介する記事です

「無病息災」の意味

無病息災とは、「病気をせずに元気で健康なこと」を意味します。「無病」「息災」それぞれでも意味を持ちますが、あわせて「無病息災」として使う機会の方が多いでしょう。

日常会話で頻繁に使うというわけではありませんが、一般的な言い回しとして覚えておきたい言葉です。

無病とは

無病息災の「無病」とは、健康なことや病気をしないことを表す言葉です。語源ははっきりしていないものの、1530年(室町時代)の「清原国賢書写本荘子抄」という書物には「薬もとらずして、父の無病なるは、ましたるべし」という一節があり、古くから無病という言葉が使われていたことがうかがえます。

息災とは

無病息災に使われている「息災」には、2種類の意味があります。

  • 仏の力であらゆる災いを防ぎ止めること
  • 病気をせず元気であることやその様子

もともとは前者の意味でしたが、意味が転じて後者の意味でも用いられるようになりました。

読み方は「むびょうそくさい」

無病息災の読み方は「むびょうそくさい」です。「息」という言葉は「いき」と読むことに慣れていて、すぐに思い浮かばないこともあるかもしれませんが、決して難しい読み方ではないので一度覚えてしまえば問題ないでしょう。

一方、漢字で書くときにも間違いには気を付けたいものです。特に「災」は「炎」と間違えやすいので注意が必要。読み方をわかっていれば間違えることもないはずなので、書き間違いを防ぐためにもしっかり覚えておきましょう。

「無病息災」の語源

無病息災は現在の日本でも比較的一般的な言葉ですが、正確な語源はわかっていません。

ただし、中国では紀元前200年頃(前漢時代)の書物に「無病」が記されており、「病気をしない」という意味で使われていました。また「息災」は、日本では平安時代の歴史書「日本紀略」で使用されています。2種類の類義語が結びついて、無病息災となったという説が有力です。

  • 「無病息災」の意味と成り立ち

    無病息災は古い時代から使われていた熟語が組み合わされたと考えられています

「無病息災」の正しい使い方と例文

無病息災はどういうシチュエーションで使われる言葉なのでしょうか。

神社での祈願

神社に訪れた際、一般的な参拝とは別に特別な祈願が受けられます。祈願の内容や名称は神社によって異なりますが、健康を願う場合には無病息災や「病気平癒」を選びます。

昨年は病気がちだったので初詣の際に無病息災のご祈願を受けた

年賀状

年賀状を送るとき、新年の挨拶に加え言葉を書き添える人は多いでしょう。無病息災は、相手の健康を願う言葉としても使え、年始のメッセージに適しています。相手の世代や家族構成など関係なく使える言葉です。

ご家族の無病息災をお祈りします

長寿のお祝い

両親や祖父母などの長寿を祝う場合にも無病息災は使われます。神社で長寿を願う無病息災のご祈祷を受けることもできます。また、今後の健康を祈ってお祝いの気持ちを伝える場合にも、無病息災は用いられます。

祖母の米寿を祝って、神社で無病息災のご祈祷を受けた

子どもの健康を願う言葉

無病息災は健康を祈る言葉として、子どもが生まれたときやお節句などでも使われます。子どもに対して、「病気をせずに育ってほしい」という気持ちを込めて贈られる言葉です。

我が子には無病息災に過ごしてもらいたいものだ

  • 「無病息災」の使い方例

    「無病息災」は相手の健康を願う際に使える言葉です

「無病息災」の類語

無病息災の類語は多く、さまざまな言葉で言いかえられます。代表的な言葉を紹介しましょう。

無事息災

「無事息災」とは、病気や災いなどの心配ごとがなく、平穏に暮らしていることやその様子を表す言葉です。無病息災に「平穏に暮らしている」という意味が加わっており、少し広い意味で使われます。無病息災と同様、神社のご祈願で用いられることも多いです。

息災延命

「息災延命」とは、神社仏閣への祈願の際によく用いられる言葉です。「災難をなくして、長生きすること」を意味しており、災難の内容は病気に限定されていません。

無病息災は幅広い年齢に向けた言葉ですが、息災延命は長寿を願う場合に使われます。

一病息災

一病息災とは「ちょっとした持病を持っている人の方が健康な人よりも体に気を配るので長生きする」という意味の言葉です。「病気をせずに」という意味の無病息災とは意味合いが異なりますが、無病息災からできた言葉なので、類語として覚えておくといいでしょう。

平穏無事

平穏無事とは「穏やかで特に変わったこともなく安らかなこと」を指す言葉です。間接的に病気や災いのない状態を言い表すことができるので、無病息災の言い換え表現としても使えるでしょう。

  • 「無病息災」の類義語を紹介

    「無病息災」と似た意味をもつ類義語は多いです

「無病息災」の対義語

「無病息災」の対義語を紹介します。

四百四病

「四百四病」とは仏教用語のひとつで、人間がかかる一切の病気を意味する言葉です。「しひゃくしびょう」と読みます。人間の体の4つの要素である地・水・火・風の調子が悪くなると、それぞれに101の病気が生まれることが由来です。

病気をせず無事であることをあらわす無病息災とは、真逆の意味といえます。

  • 「無病息災」の対義語とは

    「無病息災」には対義語もあります

「無病息災」の英語表現

ビジネスで海外の取引先などとやりとりしている人であれば、無病息災を英語で表現したいと考えることもあるかもしれません。

このような時は、「sound health」や「safe and sound」「good health」などを使うのが適しているでしょう。

「無病息災」は病気をせずに健康でいることを意味する

無病息災は「病気をせずに元気で健康なこと」を意味し、誰かの健康を願う場面で使われる言葉です。出産祝いやお節句などの子どもの成長を願う場合や、両親や祖父母に対して長寿祝いをする場合など、節目の挨拶でよく使われます。また、神社のお守りや健康祈願などでも使われる言葉です。

相手を思う気持ちを折々に表現できる、大人として覚えておきたい言葉と言えるでしょう。