入道雲やうろこ雲など、雲は気象条件や大気の状態によってさまざまな形に変化します。「瑞雲」(ずいうん)とはそのような気象条件で生まれる現象のひとつ。太陽の近くを通りかかった雲が赤や緑など虹のように彩られる雲のことです。瑞雲は幸運の予兆として昔から縁起がいいものとされ、お祝いの席などでもその表現が使われます。

この記事では瑞雲が発生する仕組みや、知っておくとタメになる瑞雲の小ネタなどについてご紹介します。

  • 「瑞雲」とは虹のような雲!

    気象条件によって、太陽の近くの雲が美しく色づく現象。瑞雲は吉兆の象徴とされています

瑞雲とは 

瑞雲とは、どのような現象なのでしょうか。瑞雲の発生する仕組みやほかの呼び方など詳しくみていきましょう。

瑞雲は吉兆を表す

「瑞雲」とは、太陽の近くにある雲のふちや内部が、虹のような美しい光で彩られる現象のことです。風になびくような色づき方をする場合もあれば、円の形に色づくこともあります。その色味もうっすらとしたものから、かなり鮮やかに色づくものまでさまざま。1色しか見えないこともあれば、複数色見えることもあります。

仏教画では菩薩を従えた美しい瑞雲に乗る阿弥陀如来などが描かれたものもあり、瑞雲は昔から瑞相(良いことが起きる前触れ)のひとつとされています。また瑞雲の「瑞」自体に「めでたい」という意味があり、そのことからも瑞雲は吉兆を表すと言われています。

瑞雲のほかの呼び名はこんなにある!

瑞雲には、ほかにもさまざまな呼び方があります。代表的なのは「彩雲」で、そのほかに祥雲や景雲、慶雲と呼ばれることがあります。英語では虹色を表す「iridescent」を用いて「iridescent cloud」と言います。

瑞雲が発生する仕組み  

神々しさを感じる瑞雲ですが、実は雲の水滴による光の回折現象で、特別珍しい現象ではありません。基本的には太陽や月に薄い雲がかかったときに、周りが色づいたように見える光環と同様の原理です。

太陽光が比較的同じ大きさの水滴の集合体を通過すると、 光の波長と水滴の大きさに応じた縞模様ができます。 一方で雲の端では雲を形成する水分が蒸発し、 雲の端に近づくほど水滴が小さいサイズでそろっていきます。この縞模様と雲の端の水滴が重なると、雲の形にそって色がつきます。

虹のように色が淡く見えるのは、縞模様の中にあるほかの波長の光もいくつか混ざるためで、赤・緑・青の順で見えやすくなっています。

瑞雲が見られるのはどんな空?

瑞雲は晴れた日に空をよく見上げていれば、意外に遭遇率が高い現象です。水滴の蒸発がさかんな雲で発生しやすいため、晴天時に薄い雲が空高く太陽の近くにある場合に高頻度で見ることができます。

巻積雲や高積雲、またこれらの積雲がちぎれて細くなった状態などで発生しやすいとされています。これらの雲を見つけたら、雲が太陽付近を通り過ぎるのを待ちましょう。ひょっとしたら瑞雲を見られるかもしれません。特に冬型の気圧配置でからっと晴れた日は、瑞雲が発生する条件がそろいやすくなります。見つけられたら嬉しいですよね。

なお太陽を見るときには直視すると目を傷めますので、手や本などで隠す、もしくはサングラスなどを着用するようにしましょう。

  • 「瑞雲」とは虹のような雲!

    意外と瑞雲を見るチャンスは多いもの。晴れた秋や冬の空、太陽のそばの雲を観察してみよう

瑞雲にまつわる小ネタ

瑞雲とは雲が色づく気象現象ですが、その美しさは吉兆を表すものと認識され、おめでたいシーンなどでよく使われる語句です。ここからは知っておくと役に立つ、瑞雲の小ネタをご紹介しましょう。

瑞雲と環水平アークとの違いは?

瑞雲は雲の中に鮮やかな色が広範囲にみられる「環水平アーク」と誤認されることがあります。

瑞雲は一箇所にかたまって見られますが、環水平アークは色づいた雲が一直線に空を横切るように伸びます。広範囲に直線が伸びたようなものは、瑞雲ではなく環水平アークだと言えるでしょう。また環水平アークは瑞雲よりもそれぞれの色がはっきりと見え、特に青色は瑞雲よりも濃く見えるとされています。

なお、彩雲や環水平アークは地震の前兆とされる説もあるようですが、彩雲や環水平アークは大気中の状態によって発生する現象なので、地震とは関係がありません。

瑞雲は光環と同じ原理!

瑞雲と似たような気象条件で見られる現象に「光環」があります。コロナとも呼ばれる光環は、太陽や月の周りを取り囲むように現れる色のついた光の輪のことです。瑞雲と同様に、雲の中の水滴や氷の粒によって光が回折することで虹のような光の環が見えます。

瑞雲と光環の違いは「太陽や月の周りをまるく取り囲んでいるかどうか」です。まるく囲んでいれば光環、形が崩れているものや、円形でも太陽や月の周りを囲んでいない場合は瑞雲となります。

改元のきっかけにもなった

吉兆の兆しでもある瑞雲は、過去に改元のきっかけにもなっています。

飛鳥時代の西暦704年6月には、宮中から瑞雲が見えたとして元号が「慶雲」に改められました。同様に奈良時代の西暦767年には瑞雲のような虹色の雲が日本各地で見られたことから、「神護景雲」に改元されています。

  • 雑談力を磨く! 知っておきたい瑞雲の小ネタ

    環水平アークは瑞雲とは異なり、まっすぐ一直線に見える現象。色も瑞雲より鮮やかに見えます

瑞雲は雲以外にも使われる

瑞雲は雲そのもの以外にも、別のものを表す呼称として使われる場合もあります。瑞雲と呼ばれるものをチェックしていきましょう。

着物の紋様

日本文化の代表である着物には美しい紋様が施されており、その紋様すべてに日本古来の美意識や感覚が込められています。

着物の紋様のひとつである「瑞雲」は、たなびく雲の形を紋様で表現したもので、「吉祥紋様」(めでたい印を表現した紋様)と呼ばれます。瑞雲のほかにも松竹梅や鶴亀・ 橘などがあり、吉祥紋様の着物は結婚式などおめでたい席に適した礼服です。

大日本帝国海軍の水上偵察機

第一次世界対戦時の大日本帝国海軍(日本海軍)に、「瑞雲」と命名された水上偵察機がありました。

愛知航空機が1942年、「十四試水上偵察機」として試作。水上偵察機としてだけではなく、急降下爆撃といった戦闘機と同等の攻撃能力が求められていました。現在は模型やプラモデルとして、その姿を確認することができます。

  • 瑞雲は雲以外にも使われる

    吉兆とされる瑞雲は、縁起がいい紋様。お祝いの席に着用する着物や帯の柄としてもおすすめです

瑞雲は幸運の前兆! お祝いの席にもぴったり

瑞雲は、仏教で「おめでたいことの予兆として出現する、紫色や五色の珍しい雲」を指します。祝典や結婚式が行われる会場名にもよく見かけるように、縁起が良いとされるこの言葉。知っていればビジネスシーンできっと役立つことでしょう。

瑞雲という現象そのものも、とても美しく神秘的です。空高く、瑞雲が見つかれば何かいいことが起こるかもしれません。晴れた日に空を見上げて探してみましょう。