「おられますか」という表現は、人によって解釈が大きく変わる可能性があることをご存じでしょうか。人によっては「おられますか」という言葉に違和感を抱くことも少なくありません。
本稿では、「おられますか」の基本的な意味と、違和感を抱く原因、方言による違いについてまとめた後、例文で正しい使い方をお伝えします。間違った使用例も紹介するので、「おられますか」という表現の理解にお役立てください。
「おられますか」の意味
「〇〇はおられますか?」は、「〇〇はいますか?」の敬語として用いる表現です。電話やメールなどでも使え、指定の人が相手方に居るかどうかを確認します。しかし、他人に対して「おられますか」という表現を使用するのは間違いと感じる人が一定数います。どうしてこのような解釈の違いが生じるのでしょうか。
「おられますか」はさまざまな意味に解釈できる
「おられますか」の「おる」は、書き言葉の「~しており」などのようにも使われ、「いる」の改まった表現だと解釈できます。その場合は、丁寧語の「おる」に尊敬語の「れる」をつけても、何の問題もありません。
しかし、その一方で「おる」を自分に使用する謙譲語として解釈する人もいます。「おる」が謙譲語だと、尊敬語の「れる」をつけると二重敬語となり、意味がおかしいと違和感を抱くことになります。
このように、主に「おられますか」の「おる」が個人差・地域格差によって敬語としての意味を変えてしまう点が、表現の揺らぎを与えている原因です。
「おられますか」の類語表現
「〇〇はいますか?」の敬語表現として「おられますか」を使いたい場合、類語表現に置き換えることで混乱を防止できます。代表的な類語は「いらっしゃいますか」「おいでになりますか」などです。
「おられますか」に違和感を持つ人は一定数存在
先述の通り、「おる」を「自分側」の行為などを相手に対して丁重に述べる「謙譲語Ⅱ」に相当する、と解釈する人は一定数います。そのような相手は他人に対して「おられますか」と表現することに抵抗を示しますので注意しましょう。基本的には「いらっしゃいますか」を利用するのが無難です。
方言によって変わる場合も
関西地方では、「おる」は敬語ではなく一般の動詞として使われます。そのため尊敬の意味の「れる」がついても違和感がありません。
一方関東では、「おる」を謙譲語として使うのが一般的です。そのため相手がいるかどうかを確認するのに「おられますか」を使うのには抵抗を感じます。
このように、「おられますか」は地域によって受け止め方に差のある表現です。NHKでは、地域によって意味合いの変わる「おられますか」は使用を極力控え、「いらっしゃいますか」などに置き換えています。
ビジネス上で関東・関西どちらも交流がある場合は、相手に合わせて「おられますか」「いらっしゃいますか」を使い分けることも考えましょう。
「おられますか」と類語を使った例文
ここからは、「おられますか」「いらっしゃいますか」「おりますか」を使った例文をいくつか紹介します。
「おられますか」の例文
「〇〇はいますか?」の敬語表現として「おられますか」を使った例文は以下の通りです。
- 御社の田中部長はおられますか?
- 鈴木先生はおられますか?
このように、目上の人に対して使用します。ただし、関東出身者など「おられますか」に違和感を持つ人に対しては使わないように注意しましょう。
「いらっしゃいますか」の例文
「おられますか」を他人に対して用いるのに抵抗がある場合は、「いらっしゃいますか」を置き換えて使えば問題ありません。
- 御社の田中部長はいらっしゃいますか?
- 鈴木先生はいらっしゃいますか?
「いらっしゃいますか」は、地域に関係なく相手に対する尊敬を示す敬語表現として通じる表現なので、覚えておくと便利です。
「おりますか」の例文
「おりますか」は、自分の身内に対して使用する謙譲表現ですので、以下のように身内や目下の人がいるかどうかを聞き手に問いかけるケースが一般的です。
- 娘の〇はおりますか?
- 弊社の〇課長がそちらにおりますでしょうか?
取引先の会社に対して自社の人間がいるかどうかを確認するときも、謙譲表現としてよく使う表現です。
「おられますか」の間違った使用例
「おられますか」の間違った使用例を確認しましょう。
尊敬語と謙譲語の間違い
取引先に対して、自社の△部長が訪問しているかを確認するのに「弊社の△部長おられますか」というのは間違った表現です。尊敬語の「れる」を取り除き「弊社の△部長おりますか」と言いましょう。
自社の人間を表現する際は敬語表現に注意
社外の人に対して自社の人間について表現する際は、たとえ自社の人間が部長など目上であっても、表現する際は相手にへりくだった表現としなければなりません。「間もなく、弊社部長の〇〇がいらっしゃいます」と表現すると、身内の部長に対して尊敬の気持ちを表現するためNGです。
「おられますか」よりも「いらっしゃいますか」が無難
「おられますか」は、謙譲語の「おる」と尊敬語の「れる」を同時に使っているため、敬語として間違っているという人や違和感を持つ人もいます。しかし、関西などでは、方言として問題なく「おられますか」が使われていることもあり、解釈は一定ではありません。
そのため、人によって意見が変わる「おられますか」ではなく、「いらっしゃいますか」を使うほうが、違和感を抱く相手は少なく無難です。ビジネスシーンで利用する際は、「いらっしゃいますか」を使うことをおすすめします。