ユーザーインサイトとはユーザーの隠れた本音のことです。Webサイトにおいて訪問者の特徴や動向を捉え、サービス改善に活用することも多いようです。
ユーザー自身でも意識していない本音なので、直接把握しようとしても難しい面があります。具体的に本音を探るにはどうすれば良いのでしょうか。
今回はユーザーインサイトを活用すべき理由や把握する方法について見ていきましょう。
ユーザーインサイトとはユーザーの深層心理・隠された本音を意味する
ユーザーインサイトとは深層心理であり、普段意識していない本音のことです。人間は日ごろから情報を処理して行動していますが、その理由を自分で明確に意識しないケースも非常に多いとされています。
たとえば「どうしてこの商品を選ばないのか」と聞かれても「ただ何となく……」といったように、明確な回答が出てこないことがあります。深層心理や無意識の本音では何かしらの理由があるのですが、ユーザー自身も意識していないので適切に伝えられないのです。
ユーザーインサイトはマーケティング活動の役に立つ情報ではありますが、隠された本音を正確に捉えるのは簡単ではありません。さまざまな手段を駆使して、推測する必要があります。
なおWebマーケティングにおいては、Webサイト上のユーザーの行動をツールで解析することで、ユーザーインサイトを把握しようとする取り組みも数多く行われています。
ユーザーインサイトを把握する意義
ユーザーの深層心理を捉えることで、マーケティングにおいても下記のようなメリットがあります。
商品・サービスの改善点が分かる
ユーザーインサイトを発見することにより、利用者が潜在的に不満を感じているポイントが分かります。さらに細かく分析していくことで、不満点をどのように改善すれば良いのか、方向性も決められます。
成果を上げやすくなる
商品やサービスが改善されれば、成果も上がりやすくなります。Webサイトの成果となる指標で代表的なのはCVR(コンバージョン率)ですが、ユーザーインサイトに沿うようにWebサイトを改善することで、CVRの上昇も期待できます。
潜在的なニーズを把握できる
ユーザーインサイトは、新商品開発のヒントになることも。「こういう味や香りが良い」「こういう機能が欲しい」といった潜在的なニーズを捉えることで、それまでになかった新商品の誕生につながる可能性があります。
ユーザーインサイトを調査・解析する方法
マーケティングにおいても重要なユーザーインサイトですが、ユーザー自身が意識していないことを把握するのは簡単なことではありません。下記のようなさまざまな手段を通じて推測していく必要があります。
GoogleアナリティクスなどのWeb解析ツール
Web解析ツールとは、Webサイトでのユーザーの行動を数値で示すものです。
Googleアナリティクスではユーザーの動き、Google Search Consoleでは流入した検索キーワードなど、以下の指標の把握に役立ちます。
・閲覧したページ数
・滞在時間
・リピート訪問率
・広告クリック数
・コンバージョン率
・検索キーワード
など
ヒートマップ
ヒートマップとは、Webサイトの解析ツールの1つです。ユーザーがサイトで実際に見ている部分、操作している部分を色分けして映像化します。
行動の理由までは分からないものの、サイト上でどのような行動が多いのかが分かります。多くの人がスムーズに操作できない箇所が分かれば、ページ上の問題点の改善につながります。
Q&Aサイト
Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトには、多様なジャンルの質問と回答が投稿されています。取り組んでいるテーマに関連する言葉で検索してみましょう。
たとえば「キャッシュレス」のQ&Aを見ると、お得な決済方法はどれか知りたい、浪費につながらないか心配、なぜか決済できない、ポイント還元の仕組みが分からないといった内容の投稿が見られます。
上手に活用すると、多くのユーザーが悩んでいること・分からないことを把握できる可能性があります。
アンケートやインタビュー
解析ツールでは直接集めることができない「生の声」を集めるには、アンケートなどの市場調査が適しています。具体的に、以下の手法がありますので、調査をする目的やコストに応じて、適した手段を選びましょう。
・Webアンケート
・グループインタビュー
・個別インタビュー
・会場調査
Webアンケートはコストが安く、調査結果がすぐ集まるのがメリットです。一方でたくさんの質問はできないこと、聞ける内容に限界があるのがデメリットです。
グループインタビューなど人を集めて行う調査は、ゆっくり時間を取り、深い質問・細かい質問ができるのがメリットです。その一方でコストがかかること、たくさんの人を対象者にできないことが注意点と言えます。
ユーザーインサイトを探る際の注意点
マーケティングにも大いに役立つユーザーインサイトですが、以下のような注意が必要です。
調査の際は質問項目や対象者の設定に注意
Webアンケートやグループインタビューなどの定性調査は、質問の仕方に工夫が必要で、そのままダイレクトに聞いてもスムーズに回答が出てこないこともあります。
またそもそも「誰に聞くのか」も重要で、ターゲットをどこに定めるかも明確に決めましょう。広く浅くいろいろな人に聞いても、中途半端に多様な声が集まるだけで、本当の深層心理は見えてきません。
調査の技術をすぐに身に着けるのは難しいため、リサーチ会社に相談するのもおすすめです。ユーザーインサイト発見に適した調査を設計し、提案してもらえます。
Webサイトの改善ならA/Bテストが必須
ユーザーインサイトをWebサイトに改善する場合、実装する前に必ずA/Bテストを実施しましょう。A/Bテストとは、2つのパターンのサイトをランダムにユーザーに表示し、それぞれの違いを比較するテストです。
サイトの変更前後で成果がどの程度変動するのか、数値から判断できます。サイト上のボタンの位置・色、文字の大きさ・フォントなど、改善案を試すのにA/Bテストは有効です。
ユーザーインサイトの具体的な活用事例
ユーザーインサイトを把握し、サービス改善につながった成功事例を2つ紹介します。
パナソニックのテレビ「VIERA」
VIERAはパナソニックブランドのテレビであり、4K有機EL、液晶、ハイビジョンなどさまざまなラインナップがあります。VIERA専用サイトにおけるユーザーインタフェースの改善に、ヒートマップを活用したそうです。
製品紹介ページへの誘導がされていないこと、スペック表などユーザーに必要な情報が適切に表示されていないことが課題として把握できたとのこと。一覧性を高める、スペック表の場所を移動する、画像で解説するページを新たに用意するなどの施策を実施しました。
その結果、離脱率の低下、熟読エリアの広がり、製品ページへのクリック数の増加といった成果につながったそうです。
投資サービス「THEO」
THEOは近年増えている、ロボアドバイザー型投資サービスの1つ。資産の長期運用サービスを提供していますが、相場が不安定になったときに、一部のユーザーが解約・出金してしまうことが課題でした。
そこで、「相場不安定時にどのような行動をとるのか」という質問と回答を用意して、アンケートを実施。結果に合わせてユーザーの不安を解消する記事へ誘導し、相場が不安定になったときの行動を見直すよう促したとのこと。
施策を実施しなかった場合と比べて、継続率の向上に成功したそうです。
情報の多い時代、ユーザーの本音を知るために、正解とされる決まった方法があるわけではありません。ユーザーインサイトを探るための方法は日々変化し、進化を遂げていますので、さまざまな方法を駆使して、ユーザーにとってどのようなサービスや商品を提供すればいいのか、考え続けましょう。