ある日曜日の夜、その店は幅広い年齢層の客で大いに賑わっていた。その名も「丸源ラーメン」。熟成醤油ラーメン「肉そば」をウリにするチェーン店である。

郊外の大通りなどで見かけることが多く、ほとんどが広々とした駐車場を完備。しかもテーブル席も数多く用意されているので、ファミリーウケも抜群だ。だが、老若男女のファンを獲得している真の理由は、どうやら多彩なメニュー構成にありそうだ。

先日、初めて入店してみたのだが、結論から言うと美味かった。そして楽しかった。

この丸源ラーメンを展開する物語コーポレーションは、「焼肉きんぐ」や「焼肉一番かるび」「寿司・しゃぶしゃぶ ゆず庵」など、国内に529店舗を展開する巨大飲食チェーン。その大きな企業力で創り上げたラーメンブランドは、どんな世代をも喜ばせる仕掛けに満ちていた。

■特集:ラーメンチェーン名店巡礼

「vs チャーハン」の火蓋は突如切って落とされた!

メニューの表紙を見ただけで、店のイチオシは「肉そば」であることがわかる。しかも650円と、随分コスパも良さそうだ。せっかくだからサイドメニューも付けよう。「チャーハンセット」があるみたいだから、今日はそれに決めた。

しかし、随分とメニューが賑やかな印象である。肉そばだけでもかなりの選択肢がある。

んっ!? メニューの裏に面白そうな記述を発見。えーっと……

ふむふむ。「肉そばの食べ方の極意」とな。よし、郷に入っては郷に従えという諺どおり、今日はこの通りに食べてみよう! そう心に決めたところでラーメンが到着。

どどんっ。

おお~、なかなかの個性派である。このオレンジ色の物体は「柚子胡椒おろし」というものらしい。オニオンスライスが乗ったラーメンというのも初めて見たかもしれない。

さて、さっそくいただ……おっと、チャーハンも来たようだ。……ん!? えぇー!?

なんと、店員さんが突然「失礼しま~す」と目の前で玉子を投入! ジュー!という音とともに玉子がグツグツ泡を立てる。

「すぐに混ぜてお召し上がりください!」とのこと。ちょ待てよっ、心の準備が……いやいや、とりあえずやるしかない! うおおぉらぁぁぁああ!

よし、こんなもんか? アツアツのうちにいただきます!

うンまーっ! 玉子がふわっふわ! 出来たて……というか炒めている最中のチャーハンをハフハフしながら食べるなど初経験だが、これはいい。スペシャル感がすごい。味付けは優しいタイプのチャーハンである。アツアツの米や具がパラパラと口のなかでバラけていく。

た、楽しい……。

「肉そばの食べ方の極意」で楽しむ5変化

さて、順番は前後したが、いよいよラーメンである。

どれどれ、「肉そばの食べ方の極意」によると……【先ずはスープをひとくち】。そりゃそうか。では、いただきます。

……美味い! 思ったよりもずっとまろやかなだし、かなり味の深みと強いコクが感じられる。

それもそのはずで、スープは豚と鶏、香味野菜、昆布で旨味をとり、香り付けにうるめ干し、さば節、鶏ガラなどを使用、乳化のためには豚背脂、豚腹脂、鶏脂を使っているらしい。

かえしは3つの産地の醤油をブレンドし、やはり鶏、豚、鰹節など20種類以上の食材を投入。焦がさないよう丁寧に混ぜ、15日もの熟成期間を経て完成を迎えるのだという。この複雑で香り高いスープは、相当数の厳選素材の旨味が混じり合った結晶なのだ。

続いては第二段階。【お箸で肉を絡ませながら麺をすする】か。こんな感じかな?

うん、麺も肉もいい。麺はコシが強いストレートの細打ち麺。スープもよく絡む。肉は豚一頭から数キロしか取れない希少部位を使っているそうで、甘みが強くて美味。赤身と脂身のバランスも絶妙だ。

この次は、【柚子胡椒おろしをスープに溶かす】ね。了解です!

うん、一気にスープの印象が変わる。柚子と大根おろしの爽やかな香りが引き立っていて、すっきりとした辛みが心地いい。スープにもよく合う……というか、この生のオニオンスライスといいコンビと言ったほうがいいのかもしれない。

柚子胡椒おろしとオニオンスライスのすっきり感が、濃厚なスープの旨味に涼やかな風を吹かせているイメージである。

そして、【半分食べたところで「どろだれラー油」を入れる】。どろだれラー油? あぁ、これか。

原料は、えーと、なになに……赤エシャロット、にんにく、生姜、すり胡麻、豆板醤、唐辛子、XO醤、干し貝柱、オイスター……すごいな! こだわりまくった秘伝のラー油というわけだ。どれどれ……

う~ん、濃厚な旨味がぶわっと広がる。辛味ももちろんあるのだが、旨味が強い。これ単品で持ち帰り販売しているだけある。確かに、自宅にほしくなる……。

さぁ、いよいよフィナーレだ。【〆にはレンゲ半分の酢をスープへ!】。どんな味になったかな?

なるほど、バッチリ合う! スープがまろやかだからか、酢の酸味もうまく中和されているようだ。これはこれでオリジナルスープとして独立できるレベルである。胃もたれせず、さっぱりと〆られるというのはありがたい。

ラストまで変化を感じながら美味しく完食! 常に味の変化が楽しめるラーメンで、一口ごとに発見の連続であった。目の前で卵を焼くパターンのチャーハンにも驚いたが、ラーメンの奥深さにもビックリさせられたし、本当に楽しかった!

これだけ変化が楽しめるなら、どんな年代でも、どんな性別でも、自分の好みの味は必ず見つけられるだろう。もちろん、チャーハンのようなアトラクション的な仕掛けは、子どもにとってはアドベンチャーである。

こんな壮大なサービスが提供できるのも、飲食の世界でしのぎを削る巨大チェーンならでは。見事でした!

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