忘年会や新年会、晩酌など、お酒を飲む機会は多いものですが、お酒にはビールやワイン、焼酎やウイスキーなど、多くの種類がありますね。これらは同じアルコール類でも「蒸留酒」と「醸造酒」という違いがあるのをご存じでしょうか?
この記事では、蒸留酒と醸造酒について、それぞれの製造方法や特徴をはじめ、代表的なお酒の種類、二日酔いしづらいお酒の種類などを紹介します。さらに、英語表現についてもまとめたので参考にしてみてください。
蒸留酒と醸造酒の違いは作り方にあり
蒸留酒と醸造酒の違いは製造方法にあります。「醸造酒」は穀類や果実などを発酵させて造ったお酒のことで、「蒸留酒」は醸造酒を蒸留したお酒のことです。
ビール・ワイン・日本酒などが「醸造酒」、ウイスキー・焼酎・ブランデーなどが「蒸留酒」にあたります。
蒸留酒と醸造酒の特徴とは
蒸留酒と醸造酒には、大きくわけて「アルコール度数」「味や飲み方」「酔い方」という特徴の違いが挙げられます。
アルコール度数
アルコール度数は蒸留酒のほうが高いです。「蒸留」とは、液体を沸騰させたときの蒸気を冷やし再度液体に戻すことで、純度を高める方法です。アルコールの沸点は約78度、水は約100度ですので、醸造酒を温めるとアルコールが水分よりも先に沸騰し蒸気になります。
この蒸気を冷やすことでアルコールが凝縮されるため、蒸留酒のほうが醸造酒よりもアルコール度数が高くなるのです。
ちなみに、醸造酒に比べて蒸留酒のほうがカロリーは低い傾向にあります。ダイエット中など気になる方には蒸留酒がおすすめです。
味や飲み方
醸造酒はそのまま飲み、蒸留酒は何かで割って飲むことが多いです。
醸造酒の代表的なお酒に、ビールやワイン、日本酒などがあります。これらは発酵された原料の豊かな味や香りをそのまま嗜(たしな)むのが特徴です。そのためお酒と食事のマリアージュを楽しむペアリングは、醸造酒で行われることが多い傾向にあります。
一方、蒸留酒の代表的なお酒、ウイスキーや焼酎、ウォッカやジンなどは、水割りやソーダ割り、その他レモンやジュースなどと混ぜられることが多いです。もちろんそのままの香りを楽しみたい方は、ロックやストレートで時間をかけて飲むこともあります。
二日酔いなど酔い方について
一般的に、醸造酒より蒸留酒のほうが、酔いがさめやすく二日酔いにもなりにくいと言われています。
蒸留酒は醸造酒を加熱しエタノールを凝縮させる作り方なので、エタノール以外のアルコールが取り除かれ、不純物が少なくなります。そのため、蒸留酒は「分解されやすい=二日酔いになりにくい」とされています。
とはいえアルコールは個人の体質やその日のコンディションでも大きく左右されます。また不純物の除去が十分ではない安価なものを飲む場合は、蒸留酒であっても二日酔いになりやすいです。お酒選びには注意し、適切な量にして楽しく飲みましょう。
醸造酒と蒸留酒の歴史
醸造酒であるワインの醸造は、新石器時代後期にメソポタミア地方で始まったといわれており、エジプトでも紀元前3,000年頃に酒壺やワイン醸造が行われていた壁画が残っています。
一方、蒸留酒は蒸留する技術が必要なため、醸造酒よりも後に発達しました。アルコールの蒸留は11世紀頃に医療用として南イタリアではじまったといわれており、16世紀の終わり頃にウイスキー、17世紀にジンやラムなどがヨーロッパに広まったとされています。
日本においては、奈良時代には麹(こうじ)を使用した日本酒造りが確立されていたようです。当時は儀式に使用する程度で、鎌倉時代になると嗜好品(しこうひん)として流通するようになりました。
醸造酒の代表的なお酒と特徴
醸造酒のお酒について、それぞれの種類と特徴を紹介します。
ビール
ビールは、デンプンを糖へと分解する糖化と呼ばれる工程と、その糖を酵母により発酵させる工程を別々に進行させる、単行複発酵で造られます。
各地の原材料や造り手の技術により味はさまざまであり、食事や好みにあわせて色んな味に手軽に挑戦できるのはビールの利点です。ここ数年、小規模な醸造所が造る多様で個性的なクラフトビールが増え、楽しみが広がった方も多いのではないでしょうか。
ワイン
ワインは、最古の醸造酒と言われ、芳醇(ほうじゅん)な味と香りを楽しめます。ブドウを樽(たる)で醸造しアルコールに変えるとてもシンプルなお酒ですが、安価なもの・高価なもの、辛口・甘口など種類が幅広いのが特徴です。
赤ワインと白ワインは使われているブドウが異なり、赤ワインの中でもカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、ボルドー、ブルゴーニュなどの種類があります。また白ワインには、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングなどがあります。
さらに、フランスのシャンパーニュ地方で造られ、かつフランスのワインの法律に規定された条件を満たした微発泡ワインが「シャンパン」です。この規定以外の微発泡ワインは、スパークリングワインとなります。
淡いピンク色が特徴的なロゼワインは、白ワインと赤ワインを混ぜたものではありません。ロゼワインの製法はいくつかありますが、赤ワインと同様に発酵させた後、適度なピンク色になったところで果皮などを取り除く手法が一般的です。
日本酒
日本特有の製法で造られた醸造酒が日本酒で、主原料はお米です。
日本酒は、米・麹・水だけで造る「純米酒」と、醸造アルコールを混ぜた「本醸造酒」に大きく分かれます。お米の華やかな風味やうまみを感じたい方は純米酒、キリッとさわやかな飲み口が好みの方は本醸造酒がおすすめです。
さらに、日本酒は使うお米の精米具合によっても種類が細かく分けられ、それぞれ味も違います。食事やシーンによって変えてみてはいかがでしょうか。
蒸留酒の代表的なお酒と特徴
蒸留酒の代表的なお酒といえば、焼酎・ウォッカ・ウイスキーです。蒸留酒はアルコール度数が高いため、割らずにストレートやロックで飲む場合は、ゆっくりと飲みましょう。
焼酎
焼酎は、米や芋、麦や黒糖が主原料です。ちなみに日本酒を蒸留すると米焼酎になります。
米や麦はシンプルな味わいですが、芋や黒糖焼酎は独特のクセや風味があります。同じ主原料でも地域や酒蔵によって違った味わいを楽しめるのが特徴です。
ウォッカ
ウォッカは大麦や小麦、ライ麦、ジャガイモが原料で、ロシアをはじめとする北欧圏で多く造られているお酒です。蒸留の過程で白樺(しらかば)の炭でろ過されるのが特徴で、アルコール臭以外は無味無臭になります。
日本ではカクテルとして飲む方も多く、オレンジジュースで割ったスクリュードライバーやジンジャーエールで割ったモスコミュールなどがあります。
ウイスキー
ウイスキーは大麦・小麦・トウモロコシを使って製造され、蒸留後に木樽で熟成させるのが特徴です。ウイスキーは原料によって種類が分かれ、大麦麦芽のみを使ったものをモルトウイスキーといい、小麦やトウモロコシなどの穀物に大麦麦芽を足したものをグレーンウイスキーといいます。
また、優れたウイスキー産地を世界5大ウイスキーと呼び、スコットランド・アイルランド・アメリカ・カナダ・日本が名を連ねています。
混成酒(梅酒、リキュールなど)もある
なお、お酒を分類すると、前述した醸造酒と蒸留酒の他に、それらに香料や糖、果実などを加えて造る「混成酒」があります。混成酒で代表的なのはリキュール、梅酒やベルモットなどです。併せて覚えておくといいでしょう。
醸造酒と蒸留酒の英語表現
醸造酒と蒸留酒の英語表現について、例文を交えて解説します。
醸造酒:brewage、brewed liquor
「brewage」は醸造、「brew」は醸造するという意味の英語で、「brewed liquor」で醸造酒と表現できます。
<使用例>
- Sake is a result of a brewing process that uses rice, yeast, and lots of water.(日本酒は水、米、麹を使い醸造します)
蒸留酒:distilled liquor
「distile」は蒸留するという意味の英語で、「distilled liquor」で蒸留酒という表現になります。この単語を使うことで、焼酎と日本酒の違いを説明できます。
<使用例>
The difference between Shochu and Sake is that Shochu is distilled but Sake is not distilled.(焼酎と酒の違いは、焼酎は蒸留されているが日本酒は蒸留されていないことです)
Shochu is a distilled liquor, just like whisky or vodka, while Sake a brewed alcohol, like wine.(焼酎はウイスキーやウォッカと同じで蒸留したお酒です。一方の日本酒は醸造されたお酒で、日本のワインのようなものです)
蒸留酒と醸造酒の違いを理解しよう
蒸留酒と醸造酒の違いについて解説しました。蒸留酒には焼酎・ウォッカ・ウイスキーが、醸造酒にはビール・ワイン・日本酒が分類されます。どれも普段何気なく口にしているお酒ですが、改めて違いを理解することで一層楽しめるのではないでしょうか。
蒸留酒はアルコール度数が高いものが多いですが、醸造酒でも10度を超えるものもあります。お酒を飲む際は、二日酔いで次の日動けない…なんてことにならないよう、適切な量を心がけましょう。