柔軟性のあるワークスペース、機敏なサービス、テクノロジーの活用で働き方に革命をもたらしているWeWork。ニューヨークで生まれたWeWorkには、日本のスタートアップ・ベンチャー企業だけでなく、中堅・中小企業の入居も増加してきています。なぜ今、WeWorkに入居するのか。

本稿では前回に続き、WeWork丸の内北口にオフィスを構え、全国にクライアントを持つSAKURA United Solution代表・連続起業家の井上一生氏が、WeWork Japanでマーケティング・パブリックアフェアーズ・ストラテジー統括責任者を務める金哲利氏と「WeWorkの価値の本質」について語ります。

  • WeWorkに入居してわかった、その価値の本質【後編】

「情報発信」という価値

金哲利氏(以下、金氏):井上さんは、SAKURA United Solution公式YouTubeチャンネルやSAKURA DX出版など、動画や書籍での情報発信も積極的に行っていらっしゃいますよね?

井上一生氏(以下、井上氏):そうですね。いつもWeWorkさんの素敵なインテリアデザインを借景にしております。コロナ禍以降、セミナーや交流会をオンラインで行うことが一般的になってきました。「WeWork丸の内北口」で実施することで、情報発信にも「丸の内発」の付加価値が加えられます。

最近は『儲かり社長77のヒント』というYouTube Liveを隔週開催しています。経営者が成功するための極意や経営の原理原則、最近のトレンド、補助金や助成金、資金調達・融資に関する情報など、多岐に亘る有益な情報を発信しようと企画しているところです。

またオンラインだけでなく、リアルな交流を組み合わせることも重要だと考えており、毎月1回『丸の内交流会』という経営者交流会も開催しています。感染防止対策をしながら行いますが、リアルに会わないと伝わらないことや築けない信頼関係もありますよね。

YouTube Liveなどで情報発信するにしても、リアルな交流会をするにしても、動画収録するにしても、スタジオを借りるよりWeWorkで行うメリットがあると感じています。絨毯、テーブル、インテリア、すべてが最高品質で、実際にある有名な建築家もこちらの家具を見てそう言っていたと聞きました。WeWorkの質の高さは入居するとわかりますし、これ以上一流の場所はないでしょう。あとは、自分たちも一流にならないといけませんね。

:そう仰っていただけると嬉しいです。

「コミュニティ」という価値

:WeWorkをコミュニティの場としても活用されていますが、丸の内交流会には、どのような方々が参加されているのですか?

井上:主に経営者の方々で、銀行・金融機関の方も参加されています。経営者同士で交流してビジネスが生まれたり、経営者と銀行・金融機関との信頼関係ができたり、そういった良いコミュニティにしていきたいですし、WeWorkは出会いのデザインができる場所だなと感じますね。

WeWorkには、来て初めてわかる魅力がたくさんあると思います。これまで私は原宿の「WeWork Iceberg(アイスバーグ)」と京橋、丸の内北口を見ましたが、その場所その場所で特徴があるんです。例えば、アイスバーグはフリーランサーやアパレル関係の方が多い。京橋や丸の内北口は、スタートアップ・ベンチャーの方だけでなく大手企業も入居されていますよね。各拠点にコミュニティマネージャーの方がいて、多様なイベント企画なども行われています。そういった特徴があることも、WeWorkの魅力だと感じています。それに、WeWorkが入っているビルや周辺の街、そのエリアに集まる企業にも特色があるので、自社に合う拠点を戦略的に選ぶのも良いですよね。見学してみると、どうやってWeWorkを活用するかイメージも湧くと思います。

:実際に見ていただくことで伝わる魅力もあると思います。「All Access」という昨年発表した新プランでは、全国7都市30拠点以上の共用エリアを、1人あたり月額42,900円で自由にご利用いただけます。コロナ禍で生活様式が変化するなか、企業様も働き方やオフィスのあり方を見直している過渡期でしょう。新時代の働き方の実現に、WeWorkとしても貢献していきたいです。

井上:私どもも、会計事務所としてそういったお客様の力になりたいですね。SAKURA United Solutionには社労士事務所もありますし、社名に「United Solution」とあるように、グループ内だけでなく外部の専門家とのアライアンスで課題を解決していくのが信条です。徹底的に中小企業・スタートアップ・ベンチャー企業と伴走していきます。なので、丸の内北口の企業に限らず、他のWeWorkの入居企業の方々にも貢献できればと。

:「WeWorkだからこそ、つながることができた」という企業や人はいらっしゃいますか?

井上:もちろんいます。RPAの開発会社の方と知り合えたり、官僚の方が主宰する研究会メンバーにたまたま入れてもらうこともできました。これらは、WeWorkならではの出会いですし、ビジネスに直結するような出会いもあります。いろいろな方がこのオフィスにいらっしゃいます。偶然先日もお客様と打ち合わせをしていたら、お客様の知り合いがこちらのオフィスで事務ワークをされていて、ご紹介に発展しました。WeWorkにいると、偶然の出会いも必然に感じます。

今後は、丸の内交流会のほかにもコミュニティを企画しています。丸の内周辺で働いている人向けの朝活勉強会、例えば読書会やライティング勉強会、プレゼン勉強会、経営学を学ぶ会など、最近は副業を解禁する企業も多いですしね。日本放送作家協会・理事長のさらだたまこさんと、「放送作家大学の丸の内校をつくってみよう」なんて話もしています。

また、「WeWorkに来てみたい」「WeWorkに入りたい」という方は、やはり成長意欲や社会への問題意識も高いと感じます。そういった方々との出会いは、私も刺激を受けますし、成長させてもらえると思っています。WeWork丸の内北口は駅前にありますし、雨でも濡れずに来れるので、「お立ち寄りください」と言いやすい場所でもありますね。

:普通は、「オフィスに来てください」というのは少し遠慮があるかもしれないですね。

井上:「16時から20時までビールも飲み放題ですよ」と言葉を添えれば、グリップ力は抜群です。ビールも美味しいですから。来たことのない人は、一度来てみたいと思うオフィスですし、来客の頻度も上がります。丸の内だと次の訪問先に行くにも交通の便が良いですよね。なにより、お越しいただけるので私としても面談・商談の効率が良くなっています。これは、大変ありがたいことです。

入居して実感したのですが、WeWorkの家賃は価値の内の1/4くらいだと思います。残りの3/4は、「PR効果」「広告効果」「採用効果」「クロージング効果」「商談効率」や、「若い専門家とプロジェクトを組めること」など、家賃以外の価値がありますね。特に、私の会社の唯一の経営資源である「トップ=私」のお客様との接点時間の効率も上がりました。みなさんにお越しいただけることで、移動時間がほとんどなくなり、トップの生産性は向上します。

投資のバランス感覚が経営戦略

:実際にWeWorkを活用されている井上さんからそのような言葉をいただけると、とても嬉しいです。井上さんは税理士として多くの経営者の方々を見られています、彼らや先人たちから得た学びが今に活きているのでしょうか?

井上:それはもちろんあると思います。今まで見聞きしてきたことが、やはり経営に活かされていますね。例えば、お金の使い方のメリハリや投資のバランス感覚が、経営者には必要ということです。私どもは武蔵浦和にもオフィスを構えており、そこはスーパーマーケットの跡地を活用しています。これは、ニューヨークの倉庫街を視察したことがきっかけです。倉庫がオシャレなブティックになっていて、そこで見た光景が忘れられず、帰国後にスーパーマーケットの跡地を借りてオフィスにしました。イメージはレクサスのショールームで、内装費はかかりましたが数年で実質回収できたはずです。200坪で80万円の家賃なので投資対効果は抜群です。

武蔵浦和オフィスはいわば製造工場で、丸の内オフィスであるWeWorkは面談・商談の場です。家賃、つまりお金の使い方も場の目的も全く異なりますね。それに、WeWorkは1ヶ月単位の契約が可能なので、固定費ではなく変動費です。成長期にある企業ほど、WeWorkを活用するメリットは大きいと思います。退去費用も負担になりますからね。

また、個人の価値観が変化しているように、企業の価値観も変化しています。多くの大企業が、自社ビルを売却して手放していますよね。

:以前は、本社ビルを持つことが企業のステータスだと言われていた事もあったようですが、それも変化しているのでしょう。

井上:今後は、WeWorkのようなところを上手に活用することが重要ですね。ジョンソン・エンド・ジョンソンの代表取締役社長やカルビーの代表取締役会長兼CEOを務めた松本晃さんは、カルビー時代に赤羽の本社ビルを売却しています。「カルビーの本業はなんだ? ビルはいらないだろう」と仰ったそうです。また、「会社に来ることが仕事じゃない。お客様に奉仕することが仕事だ」「今、高いオフィスにいても、もし業績が悪くなったら安いオフィスに移れば良いわけだ」とも仰ったと聞きました。ですから、会社をダウンサイジングするにしても大きくするにしても、WeWorkのようなオフィスの在り方は、やはりメリットが大きいです。

WeWork×SAKURA×銀行・金融機関でソリューション提供を

井上:WeWorkに入居する経営者の方々とお話していると、みなさんは銀行・金融機関と親しくなる機会が少ないように感じます。丸の内交流会には、毎回銀行・金融機関の方をお呼びしていますので、ぜひ交流して信頼関係を築いていただきたいです。特に、地方銀行の東京支店は良い企業を探していますから。丸の内交流会で、「みんなで応援し合う文化をつくりたい」というのが、私の願いです。

投資家からの直接金融も良いのですが、間接金融とのバランス感覚も必要ですし、資本政策が必要だと思います。丸の内交流会で銀行・金融機関とのマッチングができますし、会計事務所として付き合い方のレクチャーもできます。また、多くの銀行・金融機関にとっては、スタートアップ・ベンチャー企業の商品やサービスはなかなか理解できないものだと思います。しかし、WeWorkに入居できている時点である意味では前さばきができているわけです。私どもからご紹介することもできますし、ぜひ気軽に相談していただきたいですね。

:WeWorkにSAKURAさんのような士業チームが拠点を置いてくださるのは、ご入居いただいている企業様にとっても心強いと思います。丸の内交流会のようなコミュニティでリアルな接点があるのも、銀行・金融機関の方々にとっては安心感があるかもしれませんね。

井上:ありがとうございます。今後は経理や給与計算、請求書発送代行などのバックオフィスサポートも行っていきたいですね。面倒な作業をアウトソーシングすることで、開発や販売に集中できる環境を提供することが私たちの役割でもあります。これからもWeWorkとともに、入居されている企業をサポートできればと考えています。