日本を代表するストライカーとして、世界で戦ってきた元プロサッカー選手の大黒将志さん。今年1月、22年に及んだ長い現役生活を終え、現在はガンバ大阪でストライカーコーチとしてプロの卵たちの指導にあたっています。
前編では、ストライカーコーチに就任した経緯や理由、仕事のやりがいなどについてお話を伺いました。後編となる今回は、指導者として第二のサッカー人生を歩み始めた大黒さんに、日々のルーティンワークや今後の夢についてお聞きします。
■ストライカーコーチに就任した経緯や仕事のやりがいとは? 前編はこちらから
コーチとして常に心掛けているのは「準備」の大切さ
――大黒さんがこの仕事をするうえで、心掛けていることは何でしょう?
まず、常に「準備」は大切ですよね。選手に指導するということは、それだけ責任感も伴います。ミーティングで見てもらう映像もしっかり準備しないといけません。体調管理も同じです。自分がだらしなかったら、選手に「体調を整えてこい!」なんて言っても響きませんよね。準備を怠ることなく、一所懸命に全力で選手に向き合うことはとても大切にしています。
――褒めると伸びる選手、叱ったら腐る選手など、それぞれタイプも違うでしょうから、向き合うのも簡単ではなさそうですね。
確かに、そのあたりも最初は気にしていました。でも、叱られるのが嫌な選手に対しても、しっかりと「それはダメだよ」と言ってあげないと、いいプレーができるようにはなりません。そのままトップチームに上がっても、結局困るのはその子ですからね。選手たちのためにも全員に対して公平にものを言うようにしています。
もちろん、誰かを贔屓するつもりもありません。プレーも公平に見ます。もし1年生がいいプレーをすればちゃんと褒めて、3年生にも「この子のプレーを見ておきなさい」と言うこともあります。3年生からすれば、「なんで1年生のプレーを見なアカンねん」って思うかもしれないけど、いいプレーは年齢に関係なく見習うべきですからね。そういう柔軟さがあれば、きっともっと伸びていくはずです。
――仕事をするうえで、心掛けているルーティンワークはありますか?
体調管理には、現役時代と変わらないくらい気を付けています。毎日のように走ったり、ジムでトレーニングしたり、選手に交じってアップに参加したり……急にフィールドに入ってもしっかりとプレーできるよう、コンディションは常に整えていますね。体重や体脂肪も管理していて、体年齢も32歳をキープしています。
指導中にデモンストレーションをすることも多々あるんですよ。そこで動きがキレていると選手も「おおっ!」ってなりますし、口で説明するだけだとわかりにくいので、ちゃんと見本になるプレーができないといけませんからね。
――ようやく長い現役生活を終えたばかりなのに、体が休まりませんね(笑)
僕も、引退したらもっとのんびりできるものかと思っていました……(笑)。でも、結局ストイックにやっちゃっていますね。やっぱり、何事も全力でやりたいんだと思います。
今の目標は「どんな環境でも得点できる選手を育てたい」
――仕事を好きでい続けるために努力していることはありますか?
強いて言えば「全力でやること」ですかね。できる限りいいコンディションで選手を見たいし、練習試合でも副審と一緒に走りながら、オフサイドラインで試合を見るようにしています(笑)。そうしないと細かい部分が見られないので。1日で2試合以上見るときもあるので、脚もめっちゃ疲れますけど(笑)。
――それはすごい運動量ですね(笑)。今後の目標について教えてください。
今はストライカーコーチとして、世界で戦えるような、どこのチームに所属してもゴールを決められるような選手を育てたいと思っています。もちろん、ガンバ大阪でプレーして、得点を量産してくれるのも嬉しいですよ。ただ、選手はどうしても移籍したり、日本代表に招集されたりもするものですから、どんなチームでも、どんな監督の下でも活躍できる、そんな選手を育てていきたいと思います。
――手応えはいかがでしょう?
ガンバ大阪のユースの選手たちは、もともと能力の高い子たちが多いので、改善点を伝えたらすぐに実行できます。今後の本人の努力や能力、性格やキャラクターにもかかってきますが、まずは僕が教えられることは全部教えて、あとは本人たちの伸びしろに託そうと思っています。
――監督業へのチャレンジはもう少し先になりますか?
まずは今年、A級ライセンスを取って、来年か再来年にはS級ライセンスを取りたいと思っています。将来、監督をやるためにも、今こうしてジュニアからユースまで指導させていただいているのはとても勉強になります。いつか監督をやるにも、こうした下積みや修行、土台作りが大切ですからね。そこへの挑戦は今まさに始まったばかりなので、このまま頑張っていきたいと思っています。