ヒラメとカレイ。私たちの食卓でもなじみがあるこの2つの魚は、姿形がそっくりなことでよく知られています。もちろん、違いを見分けるポイントはいくつかあるのですが、明確に答えられる方は多くはないのでは。

ヒラメとカレイの違いを知っていると、料理をする際に役立つだけでなく、雑談時のちょっとしたネタにもなりますよ。

  • バットの上のヒラメ

    ヒラメとカレイの違いとは

ヒラメとカレイの違い

ヒラメとカレイはよく似た姿形をしています。ここでは2種の魚の違いを、特徴・生態・漁獲量・食材の4点から解説します。

■特徴

ヒラメは体が薄く、楕円形になっています。体の左側に両眼がつき、頭蓋骨が変形してねじれた「異体類」と呼ばれます。

カレイも楕円形の薄い体をした異体類です。カレイの両目は体の右側についています。

■生態

ヒラメとカレイは平らな体つきをしていますが、どちらも生後すぐは普通の魚のように、体の両側に目がついています。体長10mm程に成長すると、ヒラメは左側、カレイは右側に両目が移動しはじめます。生後40日ころには目の移動が完了し、成魚と同じように海底生活を始めます。

ヒラメはカレイ目ヒラメ科に属する魚で、世界に約80種のヒラメが確認されています。腹側を下にしたときに体の左側に目がくるのがヒラメとされ、カレイとの区別で「左ヒラメ右カレイ」と言われます。夜に活動する事が多く、海底近くに生息しています。

カレイはカレイ目カレイ科に属し、世界で約100種、日本沿岸には約40種のカレイが確認されています。「左ヒラメ右カレイ」と言われますが、すべての種類のカレイの目が右についているわけではありません。水深の浅い砂底泥に生息し、周囲の色に合わせて体の色を変える特徴があります。

■漁獲量

ヒラメとカレイの漁獲量は年々減少しています。農林水産省のデータによると、1986年には合わせて全国で約165,000トンの漁獲量でした。平成に入り100,000トンを切り、2017年には54,385トンまで落ちています。

ヒラメの漁獲量は、2017年時点で7,084トン。主に北海道や青森、宮城で収獲されます。ヒラメは育てやすいため、養殖も盛んに行われています。一方カレイの漁獲量は、2017年時点で47,301トン。主に北海道や宮城、島根などで収獲されます。

■食材

ヒラメは春先に産卵するため、冬に栄養を蓄えます。そのため冬がヒラメの旬になります。ヒラメの身は淡白な白身で、刺身やムニエルなどに向いています。泳ぐ際に発達したエンガワは希少な部位として重宝され、寿司ネタとして人気です。

一方カレイは、地方により収獲の時期が異なり、旬の季節も異なります。高タンパクで低脂肪、カルシウムとビタミンD、タウリンを多く含む、体によい食材です。一匹まるごと食べられる調理法が多く、煮付けや唐揚げが人気です。

  • カレイたち

    違いを知り理解を深めよう

ヒラメとカレイの由来

ヒラメとカレイの名前の由来はなんでしょうか。諸説ありますが、そのうちのいくつかをご紹介します。

ヒラメは比目魚

ヒラメは「平目」「比目魚」とも表記されます。平らな体の片方にふたつの眼が並んでいることから「比目魚」と表記されたといわれています。ヒラメは「鮃」とも書き、「平たい魚」という意味です。

カレイは唐えい

カレイの語源は、中国や朝鮮から食べ方が伝わったことから「唐えい(からえい)」や、やせたエイを意味する「涸れえい(かれえい)」が訛ったともいわれています。また、漢字表記の鰈は「葉」から来ており「薄いもの」を連想したという説もあります。表側が黒く裏側は白い体の特徴と、目が片方によっていることから「かたわれ魚」とも呼ばれ、それが変化した呼び方ともいわれます。

  • 砂の中のカレイ

    ヒラメとカレイの由来とは

ヒラメとカレイの見わけ方

ヒラメとカレイは同じような見た目をしています。見わけ方の参考になる、向き・目の位置・口の形・性格の4つのポイントについて解説します。

■向き

ヒラメは腹側を下にした時、目が左側にきます。一方カレイは目が右側にくるため、「左ヒラメ右カレイ」と言われます。しかし、すべてのカレイの目が右側に来るわけではないので、注意が必要です。

■目の位置

目の位置や付き方にも違いがあります。

ヒラメの目は体の片側についており、その両目は埋まったようについています。目の間は平坦になっており、自分の上を泳ぐものを見るのに適したつくりになっています。

一方カレイの目も体の片側についていますが、ヒラメとは対照的に目が飛び出すようについています。自分の近くで獲物を探すため、キョロキョロと探しやすいつくりになっているのです。

■口の形

ヒラメの口はとても大きく、上あごの骨の端は目の下あたりまで達して大きく開きます。両あごの歯は犬歯状で強く、成長すると魚、イカ、甲殻類も食べるようになります。

一方、カレイの口はとても小さく、あまり開きません。魚は食べず、ゴカイなどを追いかけて補食します。

■性格

口の形や食べるものにも表れていますが、ヒラメとカレイは性格も正反対です。

ヒラメは大きく尖ったあごと歯で、狙った獲物を俊敏に捕獲する獰猛な性格をしています。一方カレイは温厚で、小さな口で砂底にいる貝や虫などを捕食します。

  • 泳いでいる魚たち

    体の特徴も性格も違う

ヒラメとカレイのおすすめ料理

ヒラメとカレイ、それぞれのおすすめ料理をご紹介します。

ヒラメのおすすめ料理

ヒラメはくせのない淡白な白身魚で、さまざまな料理に使用できます。新鮮なうちはそのまま生でもいいし、焼いて揚げても旨味が凝縮されおいしく食べられます。

注意点として、ヒラメの身は引き締まっているため火を通しすぎると身が硬くなります。長時間火を通す料理には向いていません。

具体的なおすすめ料理をふたつご紹介します。

刺身

新鮮なヒラメは、刺身で食べるのがおすすめです。

ヒラメのさばき方は独特で、体の形状から3枚下ろしにできません。左右2枚を裏表、骨、で5枚におろします。ヒラメの白身はぷりぷりとした弾力が特徴で、歯ごたえが抜群です。そのため刺身にする際は包丁を倒して薄めに削ぐように薄造りにするのがおすすめです。

ヒラメを刺身にする際は、昆布を巻いて寝かせる昆布締めもいいでしょう。さらに旨味が引き出され、普段の刺身とは違った味わいが楽しめます。

ムニエル

ヒラメはムニエルにしてもおいしくいただけます。さっぱりと淡白な白身魚をバターでムニエルにする事で、コクと旨味が味わえます。

ムニエルとは、食材に小麦をまぶしてバターで香ばしく焼く調理法です。切り身にしたヒラメに薄く小麦粉をまぶし、バターを敷いて熱したフライパンで焼いていきます。焼いている途中、溶けたバターを魚にかけながら焼くことで、よりバターの香りが魚に移ります。皮目はカリッとし、中はふっくらと仕上がります。

カレイのおすすめ料理

カレイもヒラメと同じく、淡白でさっぱりとした白身魚です。ヒラメは身が引き締まっているのに対して、カレイはふっくらとした肉質の身が特徴です。そのため、じっくり火を通す料理が適しています。

煮付け

カレイの調理法といえば、やはり煮付けでしょう。カレイの煮付けはしょうゆやみりんを入れて煮込むだけなのでとても簡単です。くさみがでないように一手間かけると、より美味しい煮付になります。

くさみをとるためには、3つのポイントがあります。まず、切り身に塩をかけて20分程おき、くさみの元である水分をきれいに拭きとります。その後、熱湯で洗います。煮込むときには生姜やねぎなどの香味野菜を入れると、さらにくさみが消えます。

唐揚げ

火を通すと身がふっくら仕上がるカレイは、唐揚げにも最適です。小さいサイズのカレイなら丸ごと唐揚げにして、骨まで食べるのもいいでしょう。くさみ消しなどの下処理をしたカレイの水気をしっかりとり、下味をつけます。片栗粉を付けて火が通るまでカリッと揚げるだけなので、とても簡単です。あんをかけるなどのアレンジも楽しめます。

  • 緑色のソースの上に盛り付けてある魚の料理

    それぞれに合った料理がある

ヒラメとカレイの違いや見わけ方を知ろう

ヒラメとカレイは見た目がとても似ていますが、その生態や性格、特徴などは大きく違います。食材としても特徴があるため、それぞれに合う調理法を知っておくとよりおいしい料理が作れます。ヒラメとカレイの特徴を知り、食卓に取り入れてみましょう。