「一陽来復」という言葉の意味を知っていますか。あまり聞き慣れないかもしれませんが、お守りやお札にも使われる縁起の良い言葉で、ビジネスシーンでも活用できます。言葉の意味や使い方、語源などを知り、理解を深めましょう。

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    一陽来復の意味を知りましょう

一陽来復の意味とは

「一陽来復」には、3つの意味があります。

  • 冬至の日であること
  • 冬が去り、春が来ること(新年が来ること)
  • 悪いことが続いた後で、幸運に向かうこと

「一陽」とは陽の気を指し、「来復」とは再び巡ってくることを指します。冬の間の陰の状態から、陽の状態の春へ転じるという意味が含まれています。ここでいう陰や陽は、世の中のあらゆるものを二分化するという中国独自の考え方です。

一陽来復の由来・語源

由来は古代中国の書物「易経」だとされています。易経とは天文や地理、人事、物象などを、陰陽変化という中国独自の考えに基づいて説明した書物です。

一陽来復については、「旧暦5月、夏至に陰がはじめて生じてから、冬至になり、7カ月経って、陽が戻ってきた」と記されています。このことから、「陰が立ち込めていたところへ、ようやく陽の兆しが見え始めた」という、冬から春へ転ずる喜びを感じとることができます。

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    一陽来復の由来を理解しましょう

一陽来復の例文

一陽来復には、どのような使い方があるのでしょうか。例文を通して、言葉の理解を深めましょう。

一陽来復を願う

「悪いことが続いているところへ、再び良い流れを呼び込みたい」という願いを込めた表現です。

<使用例>

  • コロナ禍で不自由な生活が続きますが、感染予防を徹底し、一陽来復を願うばかりです
  • 悪い出来事が続いたので、一陽来復を願い神社を訪れた

一陽来復の兆し

冬の終わりに感じる春の気配、つまり良いことが訪れることへの期待を込めたいときに使います。

<使用例>

  • 今日、梅のつぼみがふくらんでいるのを見て、一陽来復の兆しを感じました
  • 長かった苦闘の日々に、一陽来復の兆しが見えました

一陽来復の御守とは

神社によっては、ちょうど一陽来復のころの冬至から立春にかけて、御守を置くことがあります。縁起を担ぎ、来復の「復」を「福」と変えていることもあります。

穴八幡宮の一陽来復の御守

一陽来復の御守で有名な神社の一つに東京都新宿区の穴八幡宮があります。同神社は毎年、12月の冬至の日から翌年2月の節分の日まで一陽来復御守を頒布しています。

一陽来復の御守のご利益

穴八幡宮の一陽来復の御守は、福神(打出小槌)に起因しています。穴八幡宮によると、この打出小槌は公家の水無瀬家が山城国国宝寺より感得したものを同神社に納めたもので、聖武天皇が養老七年の冬至の日に龍神により授けられた宝器と伝えられているそうです。

そんな由緒ある一陽来復の御守は「金銀融通の御守」とも称されており、「商売繁盛」「金運上昇」のご利益があるとされています。そのため例年、一陽来復の御守頒布初日の冬至には、同神社に行列ができるほどの賑わいとなるそうです。

一陽来復の類語・言い換え表現

次に、類語や言い換え表現を紹介します。

南至

「なんし」と読みますが、意味は冬至と同じです。北半球では一年で昼がいちばん短く、夜がいちばん長くなる日です。一陽来復には冬至の意味もあるので、この南至も類語といえるでしょう。

苦尽甘来

「くじんかんらい」と読み、苦しい日々が終わり、楽しい日が来るという意味を表す四字熟語です。状況が良い方向へ転じるという意味で、一陽来復と似ています。

<使用例>

  • 苦しい下積み時代を経て、苦尽甘来の毎日だ
  • 勉強しながら考え込む子ども

    来復と来福の違いを知りましょう

一陽来復と一陽来福の違い

前述のとおり、お守りで一陽来福とする神社もありますが、本来は元の状態へ戻るという意味の復を使うのが正解です。どちらも良い状況へ転じるという期待を込めて使いますが、本来は一陽来復であることを心にとめておきましょう。

一陽来復の英語表現

ここからは、一陽来復と似た表現の英文を紹介します。

I feel I’m in luck

luckは、幸運やつきを意味しており、be in luckは「運がよい状態にある」という意味です。運が向いているという点で、一陽来復と似た表現といえます。

Luck has finally come my way

finallyは「ついに」「とうとう」という意味で、「ついに運が向いてきた」と訳せます。苦しい日々から良い方向へ向かうことを指すという点で、一陽来復と近しい意味を持ちます。

一陽来復の意味や使い方を理解しよう

一陽来復という言葉について紹介しました。もともとは冬から春へ同じように季節が巡ることを指しますが、「苦しい状態からよい状態へ向かう」という意味でも使われます。テスト勉強で苦しいとき、会社のプロジェクトで行き詰まっているとき、この言葉が頼みの綱になるかもしれません。