東京2020組織委員会は15日、日本各地の伝統工芸品などを公式ライセンス商品化する取り組み「伝統工芸品コレクション」が全47都道府県に到達したと発表した。都内で開催のメディア説明会には、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長が登壇し、「日本の伝統工芸の魅力を世界に発信していきたい」と抱負を語った。
■出色の伝統工芸品が出揃う
「伝統工芸品コレクション」は、世界に誇る日本の技術・文化・伝統を反映した高い品質の商品を通じて、東京2020大会をいつまでも人々の記憶に残る大会とすることを目的とした取り組み。経済産業大臣の指定を受けた「伝統的工芸品」、都道府県・自治体が指定した「伝統工芸品」、これらの技術や文化を継承している「地域特産品」を対象としている。
第1弾として2019年3月13日に岩手県の南部鉄器「急須」、宮城県の玉虫塗「丸小物入れ」、福島県の大堀相馬焼「ぐい呑み」など東北被災3県の商品を発売して以来、これまで全国各地の伝統工芸品を発売してきた。第19弾として2021年2月10日に和歌山の紀州漆器「フラットプレート」、高知の土佐打刃物「三徳包丁」、栃木の大谷石製品「コースター」などを発売し、全47都道府県の商品化を達成した。
ちなみに第20弾として4月15日には福島県の会津本郷焼・会津塗「高台盆」、石川県の加賀友禅「マスク」、京都府の薫香「匂い袋」などを発売。これにより、現状で47都道府県104品目303商品の総展開数となっている。
この日、加賀友禅のマスク(桜)を着用して登壇した橋本聖子会長は「このマスクを手にしたとき、涙が出そうになりました。社会人になったばかりの頃、和装が大好きだった母にプレゼントしたのが加賀友禅の着物だったんです。すごく頑張って、母の日にプレゼントして。五輪のメダルとともに、母が一番喜んでくれたものが、そのときの着物でしたね」と秘話を明かした。
「東京2020大会のひとつの大きなテーマが復興五輪です。震災から10年が経った節目に、東北の皆さんの復興への思い、感謝を伝えたい。東北には伝統文化の底力があり、復興五輪を支えています。今回、海外の方は東京大会を参観できなくなりましたが、なにかの形で、世界の皆さんにも日本の伝統工芸品を手にとっていただく機会をつくっていけたらと思っています」(橋本会長)。
このあと、会場には東京マイスターに認定された東京三味線の作り手である河野公昭さんがゲストとして登壇。サラリーマンをしていた27歳のときに、革が破れた母親の三味線を修理しに訪れた先で伝統工芸師の職人と出会い、日本の伝統芸を守っていく話に感銘、脱サラして邦楽業界に飛び込んだという逸話を明かした。
「三味線はひと昔前まで、常に私たちの身近にある楽器でした。いまでも日本人には、三味線の音で心が和やかになる、そんなDNAが存在しているのではないでしょうか」と河野さん。東京三味線は動物の革を使わず、合成の紙(選挙の投票用紙と同じ素材)で作っていること、また通常の三味線の2/3の大きさなので飛行機にも手荷物で持っていけることなどを紹介し、伝統工芸品コレクションに選ばれたことを契機に「世界に羽ばたいてもらえたら」と期待を寄せていた。
「伝統工芸品コレクション」は、東京2020オフィシャルショップ各店、東京2020オフィシャルオンラインショップ、技わざオンラインショップなどで取り扱っている。また東京2020オフィシャルショップ とうきょうスカイツリー店の特設コーナーにおいても4月15日~4月28日まで期間限定で展示・販売する。なお大量生産できない商品もあり、かつ好評のため、すでに売り切れている商品もあるとのこと。
説明会の終了後、メディアの質問に関係者が回答した。発売された伝統工芸品コレクションの価格については「商品によって様々な価格設定ですが、平均すると2万円、中央値は8,000~9,000円です。最安値は、広島県の宮島しゃもじ『杓子型ストラップ』で800円です」と回答。今後、新たな伝統工芸品コレクションが追加される可能性については「手を上げて参加していただく形をとっており、特に締め切り日は設けていません。とは言うものの、商品化まで3~4カ月はかかるため、そろそろ、という時期になってきました」と説明していた。