戦型は山崎八段の△3三金型早繰り銀
藤井聡太棋聖への挑戦権を懸けた、第92期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社)決勝トーナメントの準決勝、▲渡辺明名人-△山崎隆之八段戦が4月16日に東京・将棋会館で行われています。勝者が挑戦者決定戦に進出する大一番です。
前期、藤井七段(当時)に五番勝負で敗れ、棋聖のタイトルを失った渡辺名人。今期は決勝トーナメントからの登場で、ここまで斎藤慎太郎八段、出口若武五段を破り、リターンマッチまであと2勝としています。
山崎八段も決勝トーナメントから登場。佐藤康光九段、豊島将之竜王を破って準決勝まで勝ち進みました。前期は準決勝で永瀬拓矢二冠(当時)に敗れています。今期はその先に進むことができるでしょうか。
両者の対戦成績は、渡辺名人の11勝4敗と、渡辺名人が大きく勝ち越しています。直近の対戦は2020年1月の朝日杯将棋オープン戦で、このときは山崎八段が勝利しています。
振り駒の結果、渡辺名人が先手番となった本局。普通の角換わりの進行かと思いきや、山崎八段が10手目に変化しました。通常の角換わりなら後手から角交換をする局面で、山崎八段は△3三角と上がり、相手に角交換するよう迫ります。渡辺名人は角を換え、山崎八段は△3三同金と取りました。
山崎八段の狙いは、素早く早繰り銀を繰り出そうというものでした。通常の△3三銀・△3二金型と比べ、本譜の△3三金型なら一手早く右銀を活用することができます。
山崎八段は守りには手をかけずに、24手目に早くも△7五歩と突いて開戦。狙い通りの速攻です。しかし、素早さの代償に守りは非常に薄い陣形となっており、渡辺名人もすぐに継ぎ歩攻めで反撃に出ています。
本局は互いに玉を囲うような展開にはもうならないでしょう。守りの薄い玉をどちらが先に仕留められるか。非常にスリリングな将棋を楽しめそうです。