プラシーボ効果は、本来医療用語として使われていた言葉です。しかし、心理現象を指すプラシーボ効果はビジネスの場面でも活用されるようになりました。

本稿では、プラシーボ効果について意味や英語表現などを解説します。ビジネスシーンでの活用方法と注意点なども紹介するので覚えておきしょう。

  • パソコンをみながら会話をしている風景

    プラシーボ効果について知りましょう

プラシーボ効果の意味

プラシーボ効果はプラセボ効果とも呼ばれる心理現象のひとつです。あるものを「本物」だと信じ込ませることで、精神的・身体的に効果が見られる現象のことを言います。

プラシーボ効果については、心理学的な実験や研究がなされてきた過去がありますが、なぜそのような精神的・身体的な効果が見られるのかという決定的な理由は、現在も解明されていません。

本来は医学用語

プラシーボ効果は、医学の現場でその存在が見つかった医学用語です。患者に「本物の効果がある薬」と伝えた上で「偽薬」を投与したとき、何の変化も生じるはずはないのに、精神的・身体的に効果があるように感じたり、実際に改善したりする現象のことを言います。

プラシーボ効果は現在でも医学の現場で利用されています。また、薬の開発時の治験などでは、実際の開発薬を投与するグループとプラシーボ(偽薬)を投与するグループを比較するなどして、積極的に活用されています。

プラシーボ効果が得られる理由とは

プラシーボ効果が得られる決定的な理由は判明していません。一説によれば、プラシーボ効果は思い込みによる「古典的条件付け」のメカニズムに類似しているのではないかとも言われています。また、古典的条件付け以外にも、信じたいという期待や、外部からの暗示によるものなど、様々な可能性が指摘されています。

  • さまざまな薬

    プラシーボは医学用語で「偽薬」という意味です

プラシーボ効果の事象紹介

プラシーボ効果の代表的な事象を紹介します。どのような時にプラシーボ効果が見られるのかを知りましょう。

ビタミン剤で病気が改善

治療中の患者に、その病気に対して効果のある薬と説明した上で、ただのビタミン剤(偽薬)を投与します。投与された患者は、本来は薬による改善は見られないはずなのに、精神的に症状の軽減を感じたり、実際に身体的な症状が改善したりといった好転の変化が現れたそうです。

漆でかぶれる

ある実験で、触れた草木は漆であると伝えると、本当は漆に触れてはいないのに、漆に触れたかのように思い込み、皮膚に症状が現れるといった事象です。この場合、被験者は「漆に触れると皮膚がかぶれる」という知識を事前に持っていることが前提条件となります。

ノンアルコール飲料で酔う

ノンアルコール飲料とわかっていても、アルコール飲料に近い味や香り、見た目といった刺激に脳が反応し、アルコールと同じ効果を期待して飲むことで、アルコールを摂取したかのように酔った気分になる事象です。この事象は「空酔い」とも呼ばれています。

  • 白衣を着た女性

    プラシーボ効果が確認された例を紹介します

ビジネスシーンでプラシーボ効果を活用する

プラシーボ効果は医療だけではなくビジネスシーンでも活用できます。ビジネスシーンにおけるプラシーボ効果の活用例を紹介します。

自分は仕事ができると思い込む

新しい仕事やプロジェクトが上手くいかない時など、仕事に対して不安を覚えることは誰しもあります。そんな時に「自分は仕事ができる」「上手くいく」と思い込んでみましょう。

自分はできると思い込むことで、本来以上の力が発揮されたり、心理的変化が生じポジティブになったりすることが期待できます。ポジティブな思考は仕事を円滑に進めるでしょう。

部下のモチベーションを高める

上司が部下に仕事を依頼する際、仕事の内容や目的と共に、「なぜ」「どうして」その仕事をその部下に依頼したのかを一緒に伝えます。上司からの期待や信頼を得ていると感じた部下は、「自分ならできる」と思い(思い込み)実力以上に仕事をこなせるでしょう。

このようにプラシーボ効果を使えば、ポジティブに部下や後輩といった相手のモチベーションを高めることが期待できるのです。

他人の成功体験模倣する

上司や先輩などの成功体験を聞いてそれを真似したり、取り入れたりすることで、成果を上げたり目標を達成したりすることが期待できます。

例えば、「自社製品は世界一だと信じて売り込んで年間売上1位を達成した」と優秀な先輩から成功体験を聞いた時、それを模倣して、自分もそのように思って営業することで、営業成績が伸びる可能性あります。

成功者の格言を取り入れる

著名人や有名な経営者など成功者の格言の中に、「〇〇をすれば、成功する」という前向きな内容のものがあれば、それを実践することで自信を持つことができ、実際のビジネスでもプラスの効果が現れるというものです。

上杉鷹山の「なせば成る、なさねば成らぬ、何事も」の有名な格言のように、「やればできる、やらなければ何にもならない」と思って、何事にも挑戦する姿勢ができるのは、正にプラシーボ効果がビジネスでプラスに働く例といえます。

  • オフィスの風景

    ビジネスシーンでプラシーボ効果を活用しよう

プラシーボ効果のデメリット

ビジネスシーンにおいてポジティブに働かせることができるプラシーボ効果ですが、期待していない結果となってしまうこともあります。ここでは、プラシーボ効果の3つのデメリットについて解説します。

1.ネガティブ要素のプラシーボ効果

ポジティブなプラシーボ効果があるように、ネガティブなプラシーボ効果も存在します。ネガティブな思い込みを作ることによって、そのきっかけが発生すると、悪い方向に状況が向かってしまうのです。

例えば、効能は同じなのに、「ジェネリック薬品は安いが効果が先発薬品に劣る」という勝手なイメージによって、ジェネリック薬品を服用しても良い効果が得られないといったケースがあります。

2.偽り要素に依存してしまう

偽薬であっても精神的・肉体的に変化が出てくるのがプラシーボ効果です。そのため、偽り要素に依存しすぎるあまり、その要素がなくなると効果が期待できなくなってしまうというデメリットがあります。この薬を飲むことで効果があると思い込ませることが大切です。

3.過剰な自信を持ってしまう

「自分ならできる」と思い込むことによるプラシーボ効果を期待するのは良いのですが、努力や実体の伴わない自信過剰な思い込みは、ビジネスの中でネガティブに働く事があります。

行き過ぎた自信過剰は嘘や社会規範の違反をもたらすことも危惧されます。実力が伴ってこそ長期的で建設的な成功を収めることができるため、謙虚に努力や学びを続ける意志を持つことは大切です。

  • ソファーに座りながらメモを取る人

    プラシーボ効果のデメリットを把握しましょう

プラシーボの英語表記

プラシーボ効果は英語で「Placebo Effect」と表現します。英語の発音は「プラシーボ」となりますが、フランス語では「プラセボ」となります。日本語では、どちらの発音を使っても問題ありません。

プラシーボの語源

Placeboは、ラテン語のプラケーボーに由来し、意味は「気に入るようにしよう」です。そこから派生して、現在のプラシーボの「偽薬」という意味ができました。

マーケティングでプラシーボ効果が使える

マーケティングにおいてもプラシーボ効果が活用されています。例えば、「魚沼産のお米は美味しい」「日本製品は品質が良い」といった、消費者の思い込みを活かした商品のブランディングなどがその例です。

もちろん、実際の商品やサービスで良いものを提供しないと長期的なビジネスとして成り立ちません。「日本製品は品質が良い」と思って購入し、実際に品質のよい商品を手にすることによってファンとなり、次回への購入へとつながるのです。

こうしたマーケティングにおけるきっかけ作りのひとつとして、プラシーボ効果が活用できます。

  • 数人で会議をしている様子

    プラシーボ効果を有効活用しよう

プラシーボ効果を活用して能力を引き出そう

プラシーボ効果がどのような場面で確認できるのか、また、ビジネスシーンでの活用例についても解説してきました。プラシーボ効果はうまく使えば、自分や周りのモチベーションアップにつなげられます。ビジネスを成功に導くために、プラシーボ効果を活用してみましょう。