住民税は、給料から天引きをされている会社員を除き、自分自身で納付しなければなりません。通常、住民税は年4回に分けて支払いし、それぞれ納期限が決められています。コロナ禍で期限までに住民税の納付が厳しくなったという声を聞くこともありますが、定められた期限までに納付しないと延滞となり、市区町村から督促状が送られてしまいます。

もしも、督促状が届いた後も住民税が払えないようだと、どのような事態を招くことになるのでしょうか。本記事で詳しく解説します。

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住民税を滞納することのデメリット

住民税は給与から天引きされる特別徴収と、市区町村から送られてくる納付書をもとに自分で納める普通徴収という2つの徴収方法があります。以後、本記事中では普通徴収について説明していきます。

普通徴収では、1年分の税金を通常4期に分けて、6月、8月、10月、1月の各末日(納期限が土曜・日曜・祝日の場合、その翌営業日)までに納付することになっています。期日までに市区町村で納付の確認ができなければ、督促状が送られます。

督促状が届くと延滞金を払う義務が

うっかり払い忘れることはあるもので、督促状が「払い忘れていますよ」という単なるリマインド通知であればとくに問題ないかもしれません。しかし、住民税の場合は督促状が郵送される時点で延滞していることになり、ペナルティとして「納期限の翌日から税金完納の日までの日数に応じた延滞金」が加算されてしまいます。

延滞金の割合は、いつが納期限かによって異なります。たとえば2021年1月1日~同年12月31日までの場合は、納期限の翌日から1カ月以内であれば年2.5%、1カ月経過した後は年8.8%に上がります。

それでも納付はおろか、連絡、相談もしないようだと、差し押さえなどの滞納処分が行われます。差し押さえの対象となる財産は、金銭的価値があって換価処分により税に充てることが可能なものすべてが対象です。

たとえば給与や預貯金、不動産のほか、生命保険契約や自動車、有価証券、家賃収入、売掛金、動産(電化製品、宝石などの貴金属、骨董品、絵画等)など差し押さえられる可能性があります。

住民税が払えなくなる理由

予期せず収入が激減してしまったり、予定外の出費ができて住民税を払うお金がなくなるような事態に陥ったりすると、予定通りに住民税を払えなくなる可能性があります。

そもそも住民税は前年の所得を基に税金額が決められます。つまり、前年の所得額が多ければ、今年払うべき金額はそれだけ高くなります。次のような人は事前に準備しておかないと、納税がきついと感じるかもしれません。

  • 前年は事業も順調な売り上げがあったけど、今年は売り上げが大幅にダウンした
  • 前年は正社員として働いていたけど、退職して転職先が決まらない
  • 前年までは家賃収入を得ていたけど、賃借人が退去し、その後入居者が見つからず収入がない

通常、住民税を自分で払う個人事業主やフリーランス、失業者といった人は、国民健康保険料、国民年金保険料なども自分で払わなければなりません。さまざまな支払いが重なって、すべての支払いに対応できないというケースもあるでしょう。

滞納者がとるべき対応法

期限内に払うのがベストですが、もしも納付が難しいようならば、納期限が来る前に居住している市区町村へ相談してみましょう。住民税には病気や災害、退職、事業廃止のほか、さまざまな理由で一時的に納税することが困難な際、一定期間納税が猶予されたり、減免されたりする制度があります。

以下で詳しくみていきましょう。

徴収猶予(分納)

徴収猶予とは、税金を納期限までに納付することができないときに、最大1年間の範囲内で分割などにより納税できるようになる制度です。

住民税の納期は4期ごとに決められており、1回当たりの金額が大きい場合もあります。そのため、たとえば毎月納付にするなど、1回当たりの納付額を小さくすることで納付しやすくする方法です。ただし、猶予期間や分割回数は本来の納付額や財産の状況などによって決められます。

「猶予」と聞くと「最大1年間納付を待ってくれる」と考えがちですが、間違えないようにしましょう。なお、猶予期間中は徴収猶予が認められた期間中の延滞金の全部または一部が免除されるとともに、新たな督促や差し押さえなどの滞納処分が行われなくなります。

減免

猶予などをしても納税できないようならば、住民税の減免が認められる場合があります。世帯の収入が生活保護基準以下で、けがや病気・高齢などの理由により今後2年以上資力回復の見込みがないときなど、納税者の申請に基づき、収入・支出・蓄えや家族の状況などを踏まえて決定されます。

コロナの影響による徴収猶予の特例も

徴収猶予は病気や災害、退職、事業廃止のほか、さまざまな理由で一時的に納税することが困難な状況にある人を対象とした制度ですが、新型コロナの影響で納付困難となった人には「納税の猶予の特例(特例猶予)」が設けられています。

具体的には、前年同時期に比べて事業等の収入がおおむね20%以上減少した人で、一時納付、または納入が困難となっている人が対象です。特例猶予では、原則必要となる担保の提供や延滞金が不要になります。

本記事を執筆している時点(2021年4月)では、2021年1月末分の納期限がすでに到来しており、この分に対する特例猶予申請は2021年2月1日をもって終了しています。しかし2021年2月2日付けで総務省が各自治体に対して、2021年2月1日の申請期限終了後にも、事情によっては柔軟な対応を行う旨通知を出しています。特例申請のことを知らなかったという人は、管轄の市区町村に相談してみるとよいでしょう。

なお、これまではとりあえず納付できたという人も、次回の2021年6月には2020年所得分の新たな住民税の納付書が届きます。現時点ではこの分の特例猶予についてはまだ公表されていませんが、市区町村のホームページなどで定期的に確認してみましょう。

特例猶予と通常の徴収猶予、どちらの場合も納期限が来る前に相談・申請、納付準備などの対策を行うことが何より大切です。