「質実剛健」は日常生活のみならずビジネスシーンにおいても使われる言葉ですが、正しい意味を理解して使っている方は少ないのではないでしょうか。この記事では、質実剛健の意味や正しい使い方をはじめ、類語・対義語や英語表現について解説します。
「質実剛健」の意味とは?
質実剛健とは、充実していて飾り気がなく、強くたくましいさまという意味の四字熟語です。座右の銘や、相手を褒めるときなどに使われます。「質」は素朴であること、「実」は誠実であること、「剛健」は強くたくましいことを表す言葉です。
質実剛健の由来
質実剛健は、明治時代の「戊申詔書」が由来だとされています。官報により発布された明治天皇の戊申詔書に国力増進発展のため、勤勉倹約すること、飾りを避けて質素にすること、などが示されて広まりました。この内容がもとになり、質実剛健という言葉が生まれたと言われています。
読み方は「しつじつごうけん」
質実剛健は「しつじつごうけん」と読みます。特別難しい読み方ではないので、一度覚えてしまえば間違えることもなさそうです。一方、漢字で書こうとするとなかなか思い出せないこともあるかもしれません。忘れないためにも、それぞれの漢字がどういった意味を表しているのかをしっかり覚えておくとよいでしょう。また、「健」を「建」と間違えないように注意してください。
「質実剛健」の使い方・例文
質実剛健はプラスの意味を持つため、ビジネスシーンにおいて比較的使いやすい言葉です。ただし、不用意に自分や自分の手掛けた物を表す言葉として使ってしまうと、失礼になってしまう可能性があります。
自画自賛にならないように注意し、努力の結果や目標を表現する言葉として使用することが大切です。また、相手に使う際の正しい使い方も知っておく必要があります。
ここからは、質実剛健の使い方や例文を紹介します。正しく理解してビジネスシーンに活かしましょう。
褒め言葉としての使用が基本
質実剛健は基本的に褒め言葉として使われます。真面目な人柄や誠実さを表すときに使うのが一般的です。
<例文>
- 今回新しく入社した彼は質実剛健な人だ
- 彼女のように質実剛健な相手は信頼できる
座右の銘としても使える
座右の銘は、いつも自分の近くに備えておき、自分の戒めとする言葉です。質実剛健でありたいと自分の目標にすることは可能であるため、座右の銘として使えます。
ただし、あくまでも目標であり、「自分は質実剛健である」という使い方をしないよう注意しましょう。また、学校の校訓として使われている場合も多いです。
車などに対して使うことも
相手を褒める言葉や座右の銘として使うだけでなく、車や時計などに対しても質実剛健が使えます。
質実剛健は充実していて飾り気がなく、強くたくましいさまという意味を持つため、車の場合はシンプルさや燃費のよさ、丈夫さなどを表します。特にドイツ製の車に対して使われているようです。また、シンプルで精度の高い時計に対しても使われます。
<例文>
- A社が発表した新型車は質実剛健でクールなタイプといえる
- B社は昔から質実剛健な高級時計を売りにしている
「質実剛健」の類語
質実剛健と同じ意味をもつ四字熟語を紹介します。必要に応じて適宜使い分けましょう。
剛毅木訥 (ごうきぼくとつ)
剛毅木訥(ごうきぼくとつ)とは、心に強い意志を持つこと、意志が強く物事にくじけず屈しないこと、素朴であり飾らないこと、無口で飾り気がないことを表す言葉です。
また、剛毅木訥は「論語」において、理想的な人柄とされています。「剛毅木訥な性格」のような使い方が可能です。
剛健質朴 (ごうけんしつぼく)
剛健質朴(ごうけんしつぼく)とは、飾り気がないこと、素直であること、心も強く頼もしいことなどの意味があります。
質実剛健とほぼ同じ意味として使用可能ですが、真面目さを強調したいときには質実剛健、強い意志を強調したいときには剛健質朴を使うのが望ましいです。「剛健質朴で頼もしい」のような使い方ができます。
聡明剛毅 (そうめいごうき)
聡明剛毅(そうめいごうき)とは、道理に通じていること、心が強く、屈しないことを意味する言葉です。質実剛健の持つ意味の中では心の強さに寄っており、聡明さを兼ね備えているという意味が加わります。質実剛健と同じく座右の銘として使われることもあります。
不撓不屈 (ふとうふくつ)
不撓不屈(ふとうふくつ)とは、強い意志を持って苦労や困難、逆境に立ち向かいくじけない、またはそのさまという意味を持つ四字熟語です。質実剛健の持つ意味の中では、苦労や困難、逆境に立ち向かう真面目さ、強い意志を持つ心の強さを表しています。
不撓不屈の語源は「漢書」にあり、王商という優れた人物を評した一節からとられたとされています。
<使用例>
- 不撓不屈の精神で挑む
- 不撓不屈の根性
「質実剛健」を言い換えると?
質実剛健を別の言葉で言い換えるとどのような言葉がふさわしいのか紹介していきます。
真面目
真面目とは、うそやいいかげんなところがない、本気である、真剣である、誠実であるなどの意味を持つ言葉です。質実剛健の意味の中では「真面目である」という内容の言い換えができます。
<使用例>
- 真面目な話をする
- 真面目な人柄だ
実直
実直とは、かげひなたがないこと、律儀であること、誠実であることなどの意味があります。こちらも質実剛健の意味の中で「真面目である」という表現の言い換えが可能です。
<使用例>
- 実直な人柄だ
- 実直さが取り柄だ
誠実
誠実とは、私利私欲をまじえないこと、真心を持って相手や物事に対することという意味の言葉です。相手に対する誠実さや真面目さという意味で言い換えができます。
<使用例>
- 誠実に取り組んでいる
- 誠実でありたい
「質実剛健」の対義語
プラスの意味が強い質実剛健の対義語はマイナスの意味を持つ言葉が多く、過度な謙遜や反省すべき点の表現に使えます。
ビジネスシーンにおいては、相手方へ不利益を与えないコミュニケーションを意識して、アピールすべきポイントでのマイナス表現や、過度な謙遜にならないよう注意して使用しましょう。
不甲斐ない
不甲斐ないとは、情けないこと、意気地がないこと、まったくだらしがないことを表す言葉です。
<使用例>
- 不甲斐ない結果に終わってしまった
- 上司として不甲斐ない
- 私が不甲斐ないばかりにご迷惑をおかけし、申し訳ございません
意気地がない
意気地がないとは、やり遂げようと頑張る気力や根性が足りない、だらしがない、しまりがないという意味の言葉です。「意気地なし」という言葉で使われることもあります。
<使用例>
- 弱音を吐くなんて意気地がない
- 意気地なしな性格を変えたい
華美柔弱
華美柔弱(かびにゅうじゃく)とは、華美と柔弱という2つの言葉の意味をあわせた意味を持ちます。
「華美」には華やかで美しいこと、華やかすぎて不相応なこと、派手という意味があります。また「軟弱」は気力や体質が弱々しいことを表す言葉です。そのため華美柔弱は、華やかさがありつつも気力が乏しい様子を表します。
巧言令色
巧言令色(こうげんれいしょく)とは、心にもないお世辞や言葉を飾ること、うわべだけ愛想よくとりつくろったり、心にもなく顔つきを和らげたりすること、相手にこびへつらうことという意味を持つ言葉です。
質実剛健の、飾り気がないことや真面目であることの反対の意味を持ち、言葉や態度で相手に取り入る意味が加わります。
「質実剛健」の英語表現
四字熟語の多くは複数の意味を組み合わせた複雑なニュアンスを、共通の一言で認識できるメリットがあります。他の言語で表現する場合は、それを正確に伝えることが大事です。ここでは、質実剛健の英語表現として使われる言い回しをご紹介します。
unaffected and sincere
unaffectedは、影響するという意味をもつaffectに、否定のunがつき「影響されない」となり、転じて気取らない、素朴である、心からの、という意味をもちます。またsincereは、うそ偽りがない、言行一致である、誠実であるという意味です。これをandで対等に接続することで、2つの意味を兼ね備えます。
<使用例>
- to be sincere and unaffected.(飾り気がなく真面目である)
with fortitude and vigor
with fortitudeは毅然としてという意味を持っています。with vigorは勢いよく、元気よくという意味の表現です。andによる接続で2つの意味をあわせ持ちます。もともとfortitudeは剛勇、不屈の精神を表し、vigorは精神や身体の力、元気、力強さを表す名詞です。
質実剛健の意味のうち、特に毅然として不屈であるという「真面目であること」と「強くてたくましいこと」を表現できます。
simple and sturdy
simpleは簡単な、込み入っていない、簡素な、地味な、という意味を持ちます。sturdyは身体がたくましい、不屈の、健全な、といった意味があります。andで接続することで、これらの意味をあわせ持つ言葉としての使用が可能です。質実剛健の、「飾り気がないこと」と「強くてたくましいこと」を表現する意味になります。
「質実剛健」を理解して使いこなそう
質実剛健について、言い換え表現として使える単語や四字熟語、対義語や英語表現を紹介しました。
プラスの意味を持って使われる機会が多い質実剛健について正しく理解し、ビジネスシーンでも使えるようにしましょう。