登場そのものは告知されていながら、詳細は不明だった「G-SHOCKのスマートウオッチ」がついに公開となった。正式名称は「G-SQUAD PRO(ジー・スクアッド プロ)」。その名からわかる通り、スポーツ&フィットネスを主眼としたモデルだ。
今回リリースされるモデルの型番は「GSW-H1000」。価格は88,000円で、5月15日の発売予定だ。ここでは現時点で確認できる内容を中心に、そのディテールをご紹介しよう。なお、各種の画面は最終仕様と異なる場合があることをあらかじめご了承いただきたい。
ゴツイ見た目と細やかな設計
冒頭の通り、G-SQUAD PRO GSW-H1000はG-SHOCKのスマートウオッチである。利用するには「Wear OS by Google」(旧称:Android Wear。以下、Wear OS)をダウンロードしてお使いのスマートフォンにインストールする必要があり、Android版とiOS版が用意されている。
まず、スマホでWear OSを起動してGSW-H1000をペアリング、各種の設定を行うが、この製品に興味がある人なら操作には問題はないだろう。すべての機能を利用するには、さらに「G-SHOCK MOVE」アプリを別途インストールする必要がある(今回はGSW-H1000対応版G-SHOCK MOVEアプリのリリース前であったため、ここではご紹介できないのだが)。
では、外見をひと通り見ていこう。パッと見の印象は、なんとといっても「ゴツい」! 本家G-SHOCK(これも本家)でも最近あまり見なくなった、ウレタンバンパーを多用した凸凹の多いラギッドデザイン。これは「G-SHOCK初のスマートウオッチ」ということもあり、インパクトを重視したデザインという意味もあると思われる。が、スマートウオッチという精密機器(のイメージ)をしっかりガードする視覚的な安心要素ともなっている。
厚みもすごい。19.5mm(マルチセンサー部突起含まず)と、まるで特撮ヒーローの変身アイテムみたいな存在感。これを運動しながら着けるのは少々ためらうビジュアルだが、なんと重さはわずか103g。ケースバックの素材にチタンを使用していることが大きく寄与していると思われる。
各種のデータをより正確に測定するためには、裏ぶた(マルチセンサー)を腕に密着させる必要があることから、装着性にも強く配慮されている。バックとウレタンバンドをつなぐ部分には樹脂製のカバーがセットされ、本体が手首の形(楕円)に無理なく沿うようになっているのだ。
バンドはG-SHOCKの強度基準を満たすソフトウレタンバンド。バンドの内側をえぐったような形状とすることで、丈夫さとしなやかさを両立している。スキーやスケートボードといったウェア上からの装着も考えて長めになっており、締め付け具合を微調整できるよう穴も多めに空いている。
表面のテクスチャーは、ベゼル上のバンパーから連続するデザイン。バンパー上には、例によって「G-SHOCK」「PROTECTION」の色埋め文字があるが、この周囲にモールドがあるのはGSW-H1000が初。周囲のモールドに色埋めの塗料が回り込まないようにする技術革新が行われている。
下部バンパーの下にあるのはマイク。開発を担当したカシオのスポーツ健康インキュベーションC 戦略企画部 第一企画室室長 佐合祐一氏によれば、音声入力とG-SHOCK規格である20気圧防水との両立はかなり難しかったとのこと。
PRO TREK Smart(5気圧)やボール状のひとつ眼カメラ「G's EYE」(10気圧相当。カシオ独自規格)でのノウハウを持つカシオでさえ、20気圧防水マイクの難易度は指数関数グラフ的な上昇率だったそうだ。
バッテリーは充電式。PRO TREK Smart同様、マグネット付き端子付きの専用USBケーブルで充電する。1回の満充電での動作時間は、通常使用で1.5~2日、モノクロディスプレイのみで時計を動作する「タイムピース」モードで約1カ月。これはPRO TREK Smart「WSD-F30」と同等の性能だ。
画面表示を自由にカスタマイズ!
PRO TREK Smartが「スマートアウトドアウオッチ」を強く標榜しているように、GSW-H1000も「マルチスポーツ&フィットネス用途」に重点を置いており、これが強力な個性となっている。
右センターボタンでWear OSのメニューを表示し、ここからは標準的なWear OSの機能を使う。メッセージや天気、音声認識など基本的な機能は、通常のウオッチ画面からのスワイプでも呼び出せる。
右下のボタンを押すと「CASIO'S APPS」と呼ばれるGSW-H1000独自のメニューが起動。ここから高度や気圧、コンパス、タイドグラフ、心拍などのツールや、アクティビティ(スポーツ)を選べる。
選べるアクティビティは、「ランニング」「トレイルランニング」「ロードバイク」「サイクリング」「マウンテンバイク」「屋内ワークアウト」「プールスイミング」「サーフィン」「セーリング」「カヤック」「SUP(スタンドアップパドルボード)」「スキー」「スノーボード」「トレッキング」「フィッシング」「ウォーキング」など。
計15種のアクティビティと24種の屋内ワークアウトに対応する。これら運動中の記録や運動時の心拍などを記録し、画面で確認できる。
これら各種スポーツに関するセンシングや計測にはG-SQUADをはじめ、ゴルフセンサー、そしてアシックスと共同で開発、サービスを展開する「Runmetrix(ランメトリックス)」で培われたノウハウが存分に投入されているという。Runmetrixについては別記事『カシオとアシックス、ランナー向けサービス「Runmetrix」提供開始 - 専用?G-SHOCKも』をご覧いただきたい。
さらに、新しい種目のセンシング技術も開発・追加された。たとえばプールスイミングでは、あらかじめプールのコース長を入力しておくことで、コースのタイムや往復数だけでなく、泳法まで自動的に解析するというから驚きだ。コースの往復数は、ターンのモーションを読み取ってカウントしているとのこと。
佐合氏いわく、中でも手厚くサポートされているのがランニングとのこと。走行中のタイムやペース、心拍はもちろん、GPS、GLONASS、みちびきに対応する測位機能を内蔵、走行中の現在位置を地図上で確認したり、履歴として走行経路を記録できる。
GSW-H1000側に地図をダウンロードしておけば、スマホを携帯する必要もない(このスタンドアロン地図は大きなポイント)。ウオッチフェイスの背景に地図を表示することも可能だ。
また、前述のRunmetrixについても2021年6月にはWear OS by Google版アプリが公開され、GSW-H1000もこれに対応する予定。腰に装着するのモーションセンサー(オプション)とも連携するようになるとのことで、おそらくそこからがGSW-H1000の本領発揮となるだろう。
このように充実したセンシングデータを、スポーツをしていないときでも確認できるよう、通常のウオッチフェイスも工夫されている。GSW-H1000のウオッチフェイスには「DIGITAL」「ANALOG」「2レイヤー」がある。
ここではその効果がもっともわかりやすい「DIGITAL」を例に見てみよう。
ウオッチフェイス「DIGITAL」は画面が「上段」「中断」「下段」で構成され、それぞれに表示する内容をカスタマイズできるのだ。たとえば、上段に「バッテリー残量」、中段に「時刻・ワールドタイム」、下段に「予定」を表示した場合はこんな感じ(↓)。
続いて、上段に「気圧・気圧グラフ」、中段に「時刻・ワールドタイム」、下段に「高度・コンパス」を表示した場合(↓)。
上段に「心拍数」、中段に「消費カロリー・歩数・心拍数」下段に「消費カロリー・週間統計」を表示した場合(↓)、といった具合だ。
そのほかにも、スマートフォンで撮影した写真や動画に対して、GSW-H1000で取得した各種センシングデータを合成する「センサーオーバーレイ」機能なども実装が予定されている(合成はアプリ「G-SHOCK MOVE」で行う)。運動を撮影して、GSW-H1000で取得したデータを合成して、SNSにアップしたり自分の記録jとして保存したりできるわけだ。スポーツ本来の魅力をさらに引き出す新しい体験が広がりそう。
G-SQUAD PRO GSW-H1000を触っていると、特段スポーツへの興味や経験がなくても「何かやってみようかな」と思わせるから不思議だ。いや、実は不思議でも何でもなくて、日ごろから抱いている体力の低下や健康への不安を、多彩なセンシングデータが可視化してしまうからなのだろう。
在宅時間が増えてとかく運動不足になりがちな昨今、G-SQUAD PRO GSW-H1000の登場は健康的な生活を取り戻すひとつの機会かもしれないなぁ……。などと、ベルトの上に乗っかった贅肉をつまみながら思う私なのだった。