ソフトバンクは2021年4月8日、「ワイモバイル」ブランドにてZTE製スマートフォン「Libero 5G」の販売を開始しました。ワイモバイルブランドでは初となる5G対応AndroidスマホとなるLibero 5Gですが、なぜワイモバイルブランドで扱うに至ったのか、そしてどのような機能に注力して開発が進められたのかなどについて、ZTEとソフトバンクの担当者にグループインタビューで話を聞きました。
Libero 5Gはなぜワイモバイルから販売となったのか
Libero 5Gは、5Gの大容量コンテンツを楽しめる大画面(6.5インチ・2,340×1,080ピクセル)や3つのカメラを搭載しながら、ワイモバイル公式オンラインショップで31,680円と安価に販売されるスマホ。チップセットは「Snapdragon 690 5G」でミドルレンジ相当ですが、IP57の防塵・耐水性能と、FeliCa搭載(おサイフケータイ対応)など、日本市場を意識した機能がしっかり備わっているのが大きな特徴です。
ですがやはり大きなポイントとなるのは、5G対応スマートフォンでありながら、ソフトバンクのメインブランド「ソフトバンク」ではなく、サブブランドの「ワイモバイル」から販売されることでしょう。ソフトバンクの福住健将氏によると、Libero 5GはZTE側から提案のあったモデルであり、ソフトバンクでは当初、どちらのブランドで販売するか検討したといいます。
その上でワイモバイルでの扱いとなったことについて、福住氏はLibero 5Gがワイモバイルのニーズに合った購入しやすい価格帯で、「5Gはなんとなく高い」というイメージを払しょくできると判断したことを挙げています。以前にも、ワイモバイルブランドでZTE製の「Libero S10」を扱っており、実績があったことも採用に至る判断材料の1つになったとのことです。
一方で、ソフトバンクブランドではシャオミの「Redmi Note 9T」を2万円台で販売しており、Libero 5Gと性能は大きく変わらないながらも、値段はRedmi Note 9Tが安いというのは気になるところです。この点についてソフトバンクの鈴木義秀氏は、「ワイモバイルはローエンドからミドルレンジを求めるユーザーがメインになっている」と回答しています。
つまりハイエンドからローエンドまで幅広く扱うソフトバンクブランドとは異なり、ワイモバイルはミドルレンジ端末を厚くする戦略を取っていることから、Libero 5Gの採用はある意味自然な流れだったともいえそうです。
FeliCaはユーザーの強いニーズで搭載を実現
ZTEの側は、どのような狙いでLibero 5Gを開発、提案するに至ったのでしょうか。ZTEの黄凱華氏によると、2020年3月にソフトバンクブランドで販売されたハイエンドモデルの「Axon 10 Pro 5G」を投入していますが、今後日本で5Gの普及推進がなされる上では、価格を抑えながら多くの機能を網羅した普及モデルを提供していく必要がある――と考えたのが、開発に至る主な理由だったそうです。
Libero 5GはZTEが海外で販売している「Blade」シリーズをベースに、設計思想を受け継ぎながら日本独自の機能を搭載するなどしてカスタマイズした独自モデルです。ただ福住氏は、Libero 5Gの開発に当たってソフトバンク側から「FeliCaに関して強い要望として出した」とのこと。理由は先に触れたLibero S10を販売したあと、ショップスタッフや顧客などから「FeliCaに対応して欲しい」との声が非常に多かったためだそうです。
また、ZTEの鄧鵬氏も、FeliCaに対しては「ソフトバンクだけでなくエンドユーザーからも要望がある」と回答。Libero 5Gにとどまらず、今後のモデルにもFeliCaを搭載していきたいとの考えを示しています。
ところで、Libero 5GのFeliCa搭載場所は指紋センサーとほぼ同じ場所(端末の背面中央付近)にあることから、端末本体にFeliCaマークがありません。FeliCaマークがない端末はほかにもいくつか存在しますが、ショップなどでリーダーにかざすときどこを当ててよいのか分かりにくく、戸惑う可能性があるのも事実です。
この場所になったのは開発上、チップセット配置する場所の影響を受けたためとのこと。黄氏は「今の位置だと(FeliCaマークを)表示しにくい。ソフトバンク側と協議し、他社にも同様の事例があることから、非表示にしている」と話しています。ただ分かりにくいのは確かなので、起動時のセットアップウィザードやマニュアルなどで、位置を分かりやすくするようフォローしていくとのことです。
もう1つ、Libero 5Gで追加された特徴的な機能が、指紋センサーを用いて特定のアプリを直接起動する機能です。Libero 5Gでは5つの指紋を登録できるそうですが、それぞれの指紋を特定のアプリと連携させると、たとえば「『PayPay』などを連携すれば、画面オフの状態から指紋認証するだけですぐ決済ができる」と鄧氏は話します。
コロナ禍での開発には苦労も
日本市場を強く意識して投入されたLibero 5Gですが、コロナ禍で制約が多いこともあり、「これまでやったことがない体制の下で開発してきた」と福住氏は話しています。ソフトバンク側としてはそもそも出社ができないため、実物を見ながらの打ち合わせができず、リモート主体に開発を進めてきたことが苦労点だったといいます。
実際、黄氏によると、通常の開発ではソフトバンク側の担当者がZTEの工場を訪れて出荷検査などををしているそうですが、コロナ禍で現在は海外への渡航が難しくなっています。そこでLibero 5Gに関しては、中国から日本に実機を送って検査してもらったり、工場のライン検査をビデオミーティングツールによるリモートで進めたりしたのだそうです。
ZTEの梅翔キン氏は、開発で苦労した点の1つにFeliCaを挙げます。ZTEは以前にもFeliCa搭載スマホを投入していますが、開発時期的にバージョンが新しくなっており、それに合わせてチップセットの変更などが必要になったことこから、開発の期間内で間に合わせるよう仕様を検討するのが大変だったと話します。
現在はキャリア向けの端末供給に注力しているZTEですが、かつてはSIMフリー市場にもスマホを積極投入していました。今後、SIMフリー市場へ再び製品を投入する考えはあるのでしょうか。
この点について黄氏は、「本社の戦略として、キャリアビジネスを軸の中心においているが、MVNO向け(SIMフリー端末)は完全にやめるという決意はしていない」とのこと。今後の実績をもとに、2~3年後を見据えてSIMフリー市場向け端末を手がける計画も検討しているそうなので、そちらにも期待です。
Libero 5Gの主な仕様
- 5G網の最大通信速度(下り/上り):1.8Gbps/110Mbps
- 4G網の最大通信速度(下り/上り):416Mbps/46Mbps
- サイズ:約W77×D166×H9.2mm
- 重さ:約201.7g
- 連続通話時間(FDD-LTE網):約2,615分
- 連続待受時間(FDD-LTE網):約497時間
- フルセグ/ワンセグ:-/-
- ディスプレイ:約6.5インチ フルHD+(2,340×1,080ドット)のTFT
- メインカメラ:有効画素数約1,600万画素+約800万画素+約200万画素
- サブカメラ:有効画素数約800万画素
- 防水/防じん:IPX7/IP5X
- Bluetooth:Ver.5.1
- おサイフケータイ:○
- 外部ストレージ:microSDXC(別売り)/最大512GB
- ストレージ:64GB
- メモリ:4GB
- CPU:オクタコア(2.0GHz+1.7GHz)Snapdragon 690 5G
- バッテリー容量:3,900mAh
- Wi-Fi:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2.4GHz、5GHz)
- OS:Android 11
- カラーバリエーション:ブルー、ホワイト、レッド