注文に対して発行される「注文書」は、注文内容に対して注文者と取引相手が相互確認できる大切な書類です。注文書がなくても商取引はできますが、下請法の対象となる場合には注文書の提示が義務付けられています。この記事では注文書の基本的な書き方や、テンプレートなどについて詳しくご紹介します。

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    下請法に該当する取引では、商品や製品を発注する際に注文書の提示が必要です

注文書の基本

まずは注文書の基本を理解しましょう。

注文書とは

注文書は注文者が商品やサービスなどに対し、注文の意思表示をするために作成する書類です。注文者と売主が個数や注文品、納期といった具体的な内容を相互確認することで取引が簡略化し、トラブルを未然に防ぐことができます。注文書の形式はPDFやFAX、メールほか、クラウド形式のものなどがあります。

契約は注文が承認されたときに成立するため、注文書がなくても電話やメールで済ませることも可能です。しかし下請代金支払遅延等防止法(通称下請法)では、下記のように定めています。

親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。(下請代金支払遅延防止法 第3条)

下請法違反とならないためにも注文書は作成するべきといえるでしょう。なお下請法の対象となる取引は下記の通りです。

【下請法の対象となる取引】

取引の種類 親事業者(発注側) 下請事業者(受注側)
物品の製造・修理委託及び政令で定める情報成果物・役務提供委託を行う場合 資本金3億円超 資本金3億円以下
(個人を含む)
資本金1,000万円以上3億円以下 資本金1,000万円以下
(個人を含む)
情報成果物・役務提供委託を行う場合 資本金5,000万円超 資本金5,000万円以下
(個人を含む)
資本金1,000万円超5,000万円以下 資本金1,000万円以下
(個人を含む)

参照:公正取引委員会「下請法の概要

商取引の基本

商取引では、取引の検討から納品に至るまで、提案や交渉、見積、契約などのステップがあり、それぞれに必要な書類があります。 商取引の基本の流れと使用書類をみてみましょう。

【取引のステップと使用書類】

取引内容 使用書類
1 検討 秘密保持契約書(NDA)
2 提案・商談・交渉 見積・企画書・提案書
3 契約 基本契約書
4 注文・発注 注文書・発注書、個別契約書
5 注文受諾・発注受諾 注文請書・発注請書、個別契約書
6 納品 納品書
7 検収 検収通知書
8 支払 請求書・納品書

注文書は、基本的に注文者から売主に提示するものです。売主から見積書や企画書の提案があり、注文者がその内容に合意した段階で作成されます。

初めての相手と取引をする場合、重要な情報を開示する取引であれば、まず「秘密保持契約(NDA)」を取り交わしましょう。秘密保持契約書によって取引相手に秘密厳守を約束させれば、取引を進めるうえで安心です。

注文書が必要なシーン

注文書は上記表の4にあたる、具体的な商品や見積金額が決定し契約が取り交わされた後に作成されます。前述の通り口頭やメールなどで注文を済ませることもありますが、注文内容の証拠となる書類がない場合、後からトラブルとなる可能性もあります。

何らかの理由で注文時に注文書を提示していなければ、後から提出するようにしましょう。

  • 注文書の基本

    注文書は「注文します」という意思表示をする目的で作成し、注文内容の証拠にもなります

注文書の作成方法

注文書を作成する場合は、送付日や注文内容・納期・代金など、明確にすべき項目を記載しましょう。Web上にはさまざまなテンプレートが配布されていますので、それらをカスタマイズして使うと便利です。

(3)平成00年00月00日

(1)○○○○株式会社

〇〇部 〇〇 〇〇〇様

(4)〇×〇×株式会社 

〇〇〇県〇〇市〇〇町0-00

〇〇部 〇〇 〇〇〇

TEL /FAX 00-0000-0000

(2)注文書

(5)拝啓 時下益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素より格別のご愛顧を賜り、御礼申し上げます。

このたびはお見積書をご送付いただき、ありがとうございました。

貴社お見積書にしたがいまして下記商品を注文いたしますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

敬具

(6)品名数量単価

商品名

数量

単価

備考

       
       
       
       
       
       
       
       

(7)合計金額   00,000円

(8)納 期    平成00年00月00日

(9)支払い方法  銀行振り込み(納入後00日以内)

                                    

                                      (10)以上

参照:マイクロソフト(商品注文書・商品売買契約書)

(1) 注文先: 注文先企業名を記載します。
(2) 注文書タイトル: はっきり大きめに記載します。
(3) 注文日: 注文した日付を記載します。
(4) 注文者名: 注文者である企業名や担当者名を記載する欄です。注文内容について照会しやすいよう、電話番号やメールアドレスを右上に記載しておくと親切です。
(5) 定型挨拶文: 「拝啓」「敬具」を忘れずに入れましょう。
(6) 注文内容: 注文内容の詳細を記載する欄です。内容物や数量など、明確にすべき項目を入れましょう。
(7)合計額: 合計額を記載します。
(8) 納期: 納品してほしい期日を記載します。
(9)支払い条件: 別途契約書などに定めがある場合は「契約書に準ずる」と記載します。
(10)以上で締めます。

  • 注文書の作成方法

    基本的に注文書には決まった書式はありません。テンプレートを利用してカスタマイズするのがおすすめです

注文書と発注書の違いとは

  • 注文書と発注書の違いはある?

    注文書と発注書の違いはある?

商取引上の注文書と発注書の意味は同じですが、何を注文・発注するかによって使い分けることがあります。

注文書は、主に文房具や印刷物、食品、部品、住宅など「形があるもの・数が数えられるもの」に使用します。一方発注書は、デザインやカスタマーサポート、プログラミングなど「形がないもの・数が数えられないもの」に使用します。

ただし企業によっては明確に分けず、まとめて「注文書」または「発注書」とすることも。法的にも効果の差はないため、厳密にこだわる必要はありません。

【発注書と注文書の違い】

注文書 発注書
使用対象 形があるものや数量を数えられるもの 形のないもの・数を数えられないもの
具体例 自動車部品・書籍・住宅・パソコン・食料品 など プログラミング・ナレーション・動画作成・研修 など

発注書テンプレート集

公正取引委員会が公開しているテンプレートや、オリジナルのテンプレートをご紹介します。注文書を作成する場合の参考にしてみてください。

公正取引委員会の汎用的な3条書面の例(規則で定める事項をひとつの書類に含めた場合)

  • 発注書テンプレート集

    公正取引委員会の汎用的な3条書面の例(規則で定める事項をひとつの書類に含めた場合)

参考: 下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例

公正取引委員会の汎用的な3条書面の例(算定方法による場合)

  • 発注書テンプレート集

    公正取引委員会の汎用的な3条書面の例(算定方法による場合)

参考: 下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例

公正取引委員会の汎用的な3条書面の例(当初書面に記載することができない特定事項がある場合)

  • 発注書テンプレート集

    公正取引委員会の汎用的な3条書面の例(当初書面に記載することができない特定事項がある場合)

当初書面に記載することができない特定事項がある場合は、その理由と未定事項が確定する期日を記載する必要があります。

その他注文書サンプル

注 文 書

令和   年  月  日

       

御中

下記のとおり注文致します。

株式会社

〒000-0000

[納品場所]

(住所)

TEL/FAX:

[希望納期]

   年   月   日

担当者名:

品    名

数 量

単位

単 価

金 額

         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         
         

小  計

消費税等

合  計

  • 注文書と発注書の違いはある?

    注文書はPDFやFAXなどで送りますが、送付後に電話などでフォローすれば、取引相手もより真摯に対応してくれるでしょう

注文書でビジネスをスムーズに進めよう

注文書は「取引相手に注文の意思表示をするための書類」です。一般的には必要不可欠なものではありませんが、下請法に該当する取引では必要です。注文書があれば注文時のミスを防ぎ取引がスムーズに進行するだけでなく、内容が証拠として残るのでトラブル防止にもつながります。できるかぎり注文書を作成し、無駄なストレスをなくしましょう。