コロナ禍の影響か、「密」を避けてできる趣味である釣りがブームだ。しかし、やってみたいと思っても初心者にとってはちょっとハードルが高めな印象。
そこで今回は魚のスペシャリスト「さかな芸人ハットリ」に、初心者でもすぐにできる釣りの楽しみ方、そして釣った魚を食べるためのコツを聞いてみた。
サカナ芸人ハットリ
2010年芸人デビュー、日本さかな検定1級・潜水士などの資格を持ち、2019年3月には「釣り大好き芸人」としてテレビ朝日系列「アメトーーク!」に出演。
自身のYouTubeチャンネルで公開している「歌詞を全て魚の名前にした替え歌」が人気。
直近では歌手・Adoの配信限定シングル「うっせぇわ」を魚の名前だけで替え歌にして歌い上げた動画がTwitterで3万リツート・12万いいねを獲得、テレビ朝日系列「グッド! モーニング」に取り上げられるほど話題となった。
初心者はまずセットを購入して「海釣り公園」にGO!
釣りを始めるにあたって、まず気になるのが「道具は何を揃えればいいのか」ということ。これは「釣り具屋さんに行けば、初心者の方にぴったりな一式揃ったセットがあります」と、さかな芸人ハットリさん。大体2,000円~3,000円くらいで仕掛けから竿、リールまで揃ったものが売っているという。
「あとはまず、何を釣りたいかを考えると良いと思います。初心者の方におすすめは2つあって、ひとつは群れでぐるぐる周っているアジの子供やイワシを釣るサビキ釣り。カゴのような形状の仕掛けにエサを入れて釣ります。エサを仕掛ける際に手に臭いが付いてしまいがちなのがネックかもしれませんが手軽です。
もうひとつは、底にいるハゼやカサゴなどを釣るもの。生きている虫をエサにするのでサビキ釣りほど手に匂いはつきませんが、動くエサが苦手な人には不向きかも。
難易度はどちらも同じくらいなので、食べてみたい・釣ってみたいと思う方からチャレンジしてみてほしいですね」
道具を揃え、釣りたい魚が決まったら次に悩んでしまうのが「どこで釣りができるのか」だが、さかな芸人ハットリさんがおすすめするのは……
「海釣り公園と呼ばれる場所が全国に何カ所かあります。整備されていて柵があるから安全だし、場所によっては救命道具を貸してくれるところもあるんです。釣り具屋さんが併設されているところもありますよ」
とのことで、初心者にも釣りにチャレンジしやすい環境が整っている場所なのだそう。
自分で釣った魚を食べる醍醐味は「新鮮な瞬間しか味わえない味」
自分で釣った魚はせっかくなら食べてみたい! ですが、処理の仕方などが難しそうと思いがち……
「確かに、いきなり三枚おろしをするのはハードルが高いかもしれません。でも、アジやイワシ・ハゼなら内臓だけサッと取り除いて、唐揚げにすればカンタンです! そういうところから始めて、さらに興味が湧いたら三枚おろしに挑戦してみるくらいでいいと思います。YouTubeなどの動画で三枚おろしの方法が見られますから、特に今の時代は挑戦しやすいと思います」
自分で釣った魚を食べる醍醐味は、「スーパーなどで売られる状態になる前の、新鮮な段階でしか味わえない弾力があったりする」そうで、徐々に変わっていく味の順を追って楽しむこともできるのだとか。通になればなるほど、「どのように新鮮な魚を寝かせ熟成させるか」といったことにハマっていく人も多いらしい。
しかし、「食べても大丈夫な魚かどうか」はきちんと見極めないといけない。
「フグは見た目ですぐにわかると思いますが、気を付けてほしいのは密かに毒針をもっている魚です。ゴンズイ、ハオコゼ、アイゴは初心者の方でもよく釣れてしまい、見た目も安全に見える魚なのですが、ヒレのように見える毒針をもっていてケガにつながることも。慣れないうちは、魚は素手で触らずに魚用のトングなどで触れるのがいいと思います」
「今、釣りが注目されていることはさかな芸人としては喜ばしいことです。ただ、ゴミを放置する人が増えたり、入ってはいけない所で釣りをする人が現れたりして問題になっています。釣り場のルールを守り、海を大切にする気持ちを持って釣りを楽しんでいただけると幸いです!」
「深海生物を200種類食べるまで捕獲した魚介類以外食べないチャレンジ」挑戦中!
これまで「1カ月間自分で釣った魚以外食べないチャレンジ」「1カ月間、築地市場で投げ銭としてもらった魚以外食べないチャレンジ」「300種類の魚を釣るまで、自分で釣って調理した魚以外、食べないチャレンジ」などユニークな挑戦をして注目されてきたさかな芸人ハットリさん。
なんと現在は2020年11月から「深海生物を200種類食べるまで捕獲した魚介類以外食べないチャレンジ」に挑戦しているそうで、「深海生物」ということでこれまで以上に苦労しているのだそう。
「深海生物はさすがに魚だけでは種類が少なく厳しいので貝やカニも含めています。静岡県沼津市・駿河湾の戸田(へだ)という深海生物が有名な場所があるのですが、11月に2~3回ほど漁師さんの船に乗せてもらい、ごっそり深海生物を持ち帰り、自宅で毎日食べましたね。
緊急事態宣言が出てからはお店での購入も含め、漁師さんから送ってもらうなどしてチャレンジを続けています。現在178種まで達成したのであと少しです!」
そもそも、今回深海生物でのチャレンジをしたのは「イベントなどで深海魚好きなお子さんに絵を描いてほしいと言われることが多かった」ため、子どもたちのために深海生物にもっと詳しくなりたいという思いからだったそう。
「ただ、深海生物については研究が進んでいないこともあり、調べるのが大変なんです。食べていいのかすらわからないものも多い。漁師さんに『お前それ食ったの?』と引かれるものもありました」
漁師さんが最も「引いた」生物がこちら。左からウミグモの仲間、ウミケムシの仲間、クモヒトデの仲間。見た目と名前だけですでに食欲が失せるが、「僕は大丈夫でした」とさかな芸人ハットリさんはケロリ。
有名な深海魚では、「ラブカ」も食べた。映画『シン・ゴジラ』の第二形態のモデルになったともいわれている深海魚でサメの一種。
「脂っこすぎないのに魚としてのおいしさが感じられて、刺身でも煮つけでも揚げ物でもおいしい万能な魚ですね」
これまで10種以上のサメを食べてきたさかな芸人ハットリさんが「一番おいしい」と感じたそうで、味は新鮮なタラに近い、プリっとした食感なのだそう。
さらに深海魚の中では最も有名なのが「リュウグウノツカイ」。日本で人魚やアマビエのモデルになったともいわれている神秘的な魚だ。
「見た目はタチウオのようですが、おいしくなかった(笑)。とぅるとぅるしていて生臭い卵白みたいな食感が、煮ても焼いても固まらないんです。食べるものではないと思いましたが、昔の人は『リュウグウノツカイを食べると不老不死になる』と信じていたそうで、なんとなくその気持ちだけはわかる気がしました」
日本一周して300種類の魚を釣った時の記録を図鑑に
そんなさかな芸人ハットリはこの4月に『日本一魚好きな芸人の魚図鑑 さかな芸人ハットリが日本一周して出会った魚たち』(KADOKAWA)を出版した。
「『300種類の魚を釣るまで、自分で釣って調理した魚以外、食べないチャレンジ』で日本1周をした時に釣った魚の中で特に印象に残っているものを紹介しています。
地方でしか出会えないものも多く、たとえば北海道で釣った「オオカミウオ」は1メートル近い大きさで顔もかなり迫力があり、怪魚ハンターの方が釣るのに心血を注ぐようなレアな魚。
そんな見ていて楽しい本になっているはずです。僕自身が図鑑大好きな子どもだったので、お子さんや釣りが大好きな方に読んでほしいですね」