「悲しい」と「哀しい」。どちらも「かなしい」と読み、さまざまな文章に登場する表現ですが、微妙にニュアンスが異なるのはご存じでしょうか。

この記事では、2つの言葉の違いにスポットを当てていきます。

  • 悲しい・哀しい・愛しいの違い

    「悲しい」と「哀しい」について知りましょう

悲しいと哀しいの違いは? 愛しいとの違いも解説

まずは「悲しい」と「哀しい」のそれぞれの意味を理解しましょう。

悲しいの意味

「非」という漢字は羽が開いているようにみえることから「割れる」という意味を含みます。その下に心があることで、「心が割れるほどつらく切ない気持ち」を表しています。

哀しいの意味

哀しいも悲しい同様、つらく切ないときに使う言葉であることに違いはありませんが、内に秘めたつらさや思いを表現したいときに「哀しい」を用いる傾向があるようです。

「悲しい」も「哀しい」も、心が痛んで泣けてくるような気持ちを表す言葉です。ただし「哀愁」という言葉にもあるように、「哀しい」には「寂しい」「かわいそう」といったニュアンスが含まれ、文学的・詩的な表現で好まれることが多いようです。また、「悲しい」の方が常用漢字となります。

愛しいの意味

古文などで見かける「愛し」という言葉も「かなし」と読みますが、意味は異なります。「切なくなるほど、大切で可愛い」という気持ちを表し、愛おしいという表現と似ています。

悲しい・哀しいの使い方・例文

ニュアンスの違いを理解するために、「かなしい」を含む表現と例文をいくつか紹介します。

悲しいの使い方・例文

常用漢字に登録され、公用文に用いられるのは「悲しい」です。例文をいくつか見ていきましょう。

悲しむ声

多くの人が悲しんでいる様子を表す際に使います。

<使用例>

  • 有名アーティストが突然引退を発表し、悲しむ声が続々と届く
  • 人気レストランの閉店に、悲しむ声が広がっている

悲しみにくれる

悲しみがしばらくの間、続いている様子を表します。

<使用例>

  • 悲しみにくれる家族に、お悔やみの言葉をかけた
  • 資格試験に落ちた友人が、悲しみにくれている

哀しいの使い方・例文

常用漢字では「あわれ」や「アイ」と読み、「かなしい」とは読みません。ただし、内に秘めた切なさやあわれな様子といったニュアンスを伝えたいときに使います。

哀しみの色を浮かべる

表情にいたたまれなさや哀愁が漂っている様子を指します。

<使用例>

  • ニュース速報を聞いた人々は、一様に哀しみの色を浮かべた。
  • 彼は顔に哀しみの色を浮かべ、通りを歩いていた。

哀しみが増す

切なくてつらい気持ちが、時間を追うごとに増幅する様子を指します。

<使用例>

  • 父の形見を見るたびに、哀しみが増すばかりだ。
  • 哀しみが増すあまり、自暴自棄になった。
  • 悲しい・哀しい・愛しいの違い

    「悲しい」と「哀しい」の使い方を理解しましょうA@悲しい・哀しい・愛しいの違い

悲しい・哀しいの類語・言い換え表現

ここでは、「悲しい」「哀しい」の類語・言い換え表現をご紹介します。

やるせない

「やるせない」とは、「思いを晴らすすべがない」「切ない」「どうしようもできない」という意味です。

やりきれない

「やりきれない」とは、「気持ちがおさまらない」「辛抱できない」という意味です。

切ない

「切ない」とは、「悲しさや寂しさ、恋しさなどで胸が締め付けられるような気持ち」を意味します。

悲しいと哀しいの英語表現

次に英語表現について、例文やニュアンスの違いを交えながら紹介します。

sad

「悲しい」「哀しい」をストレートに表す単語は「sad」です。

<使用例>

  • She speaks in a sad voice.(彼女は悲しそうな声で話す)
  • I'm sad because my sister left me.(妹が去り、私は悲しい)

unhappy

不運な状態や嬉しくない気持ちを表す際に使います。不満である、といったニュアンスも含んでいます。

<使用例>

  • She looks unhappy today.(彼女はとても悲しそうだ)
  • I’m unhappy with my score.(私は自分の点数に満足していない)

devastated

大きなショックを受け、うちひしがれた様子を指します。

<使用例>

  • She was devastated when she heard the news.(彼女はそのニュースを聞いて悲しみに打ちひしがれた)

悲しいと哀しいの違いを把握して正しく使おう

「悲しい」と「哀しい」について紹介してきました。同じ意味なので、迷ったときは「悲しい」を使えば間違いありません。

あえて使い分けるなら、「哀しい」は内に秘めた、胸が詰まるような思いを表現するときに適しています。ニュアンスの違いがわかれば、表現の幅がいっそう広がりますね。