映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の大ヒット御礼舞台挨拶が4月11日に新宿バルト9で実施された。庵野秀明総監督と、鶴巻和哉監督、前田真宏監督、声優の緒方恵美氏(碇シンジ役)が登壇。その模様をレポートする。

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    映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』大ヒット御礼舞台挨拶が新宿バルト9 シアター9で開催された
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3月28日には「エヴァンゲリオン」シリーズの声優陣14人を迎え、1997年以来となる舞台挨拶が行われたが、今回は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを通して最初で最後となる、監督陣登壇の舞台挨拶だ。新宿バルト9 シアター9や、全国328の劇場への舞台挨拶生中継に駆けつけた熱心なエヴァファンがその様子を見守った。

なお、このレポートでは作品の内容に多少触れる部分もあるので、読み進める場合は注意して欲しい。

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    映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』大ヒット御礼舞台挨拶の登壇者。左から緒方恵美氏、庵野秀明総監督、鶴巻和哉監督、前田真宏監督
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【以下、作品の内容に触れる箇所があるためご注意ください】

総監督・原作・脚本を務めた庵野氏はイベントの冒頭、「僕がエヴァ関連で表に出るのは、最初の制作発表の時と、(新世紀エヴァンゲリオン劇場版の)一本目が春に間に合わないときに『すいません』という謝罪会見の時以来なんです」と発言して観客の笑いを誘いつつ、「今日は皆さんに直接、スタッフの代表としてお礼を言う最後のチャンスかなと思って、出ることにしました」と述べ、会場から大きな拍手が贈られた。

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    総監督・原作・脚本を務めた庵野秀明氏

監督の鶴巻氏は、「テレビ番組のおかげで色々な方に体調を心配されることがあって声をかけていただくことも多いんですけれど、元気にやっております、安心してください(笑)」と挨拶(編注:NHKが3月22日に放送した密着取材番組「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」のことを指すと思われる)。同じく監督の前田氏は「新参者ですのでお手伝いという感じもありますが、参加できてとてもよかったです」と話した。

碇シンジ役を務めた声優の緒方恵美氏は、今回は監督陣にさまざまな話を聞いていくMCとしてイベントを進行。庵野氏と共にこういった会見に臨むのは、前出の謝罪会見以来だという。

興収70億円超、庵野氏「本当にありがたい」

『新世紀エヴァンゲリオン』のTV放送から既に25年以上が経ったエヴァンゲリオンシリーズ。その集大成となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が興行収入70億円を超えたことについて、緒方氏に心境を聞かれた庵野氏は「本当にありがたいんです。前作(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』)を超えて、80億ちょっといったら『シン・ゴジラ』を超えてくれるので。そこに行ってくれたら僕の中ではレコードになるし、100億行ってくれるとアニメ業界の活性化にいいんですよ」とコメント。

「シン・エヴァの興収100億がアニメ業界の活性化にいい」、とはどういうことだろうか? その理由を庵野氏は、「鬼滅(の刃)とか新海(誠)さんが100億を超えるのはもう当たり前、100億を狙って当然の作品群なので。宮さん(宮崎駿氏)のところ、ジブリもそうですけど。でも、エヴァはロボットアニメなんです。ガンダムっていう有名なロボットアニメもありますけど、ガンダムですら100億はいってない。こんなニッチなロボットアニメで100億を目指せるのは本当にありがたいこと。こういうものでも100億いくっていうのはアニメ業界にとって本当にいいんです」と説明するも、「(エヴァは)ロボットアニメだったんですか!?」と驚きを隠さない緒方氏をはじめ、会場全体が庵野氏の「ロボットアニメ」という表現の仕方にどよめいた。

興収について、鶴巻氏は「僕も『:Q』を超えてくれたので安心してますし、レコードとしても『シン・ゴジラ』を超えたいよなぁ、と。もう少し行けたら良いなと思います」、前田氏も「今ここに来て下さっている皆さん、ビューイングで見ていただいている皆さんのおかげ。ありがとうございますという気持ちでいっぱいです」と感謝の意を述べた。

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    舞台挨拶のMCを担当した緒方恵美氏。(当然ながら)ファミリー向けのアニメ作品と違う観客席の人々を見て「“ぼっち”で参戦されてる皆さん、あ、目を逸らさないでください」と呼びかけて笑わせた

制作終えても「あれ、もう終わり? 本当に?」

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作を終えたときの心境を緒方氏から問われた鶴巻氏は、「スタッフ初号、つまり最初に完成した映画を観る機会があるんですけど、涙しているスタッフも結構いました。申し訳ないけど僕はただ、終わってよかったなと思っただけで、エヴァ全体のこととか全然考えてなかったですね。目の前の『明日終わるのかなぁ〜』、みたいなことだけが終わってくれたっていう感じだった」と振り返った。

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    監督の鶴巻和哉氏

これについては、前田氏も同じ心境だったそうで、「色々直しが来ていたので、最後の方はそれをずっとやっていました。あれ、もう終わり? (作業は)もう来ないの? もう来ないの? 本当に来ないの? 本当に? とちょっと疑ってるところもあって。でも本当に終わったんだ、と安心しました。ほっとしました」と、最後まで疑心暗鬼だった心中を吐露。緒方氏も、声優陣のグループ連絡網の中で「初号が終わっても劇場公開になるまで油断はできぬ」とささやかれていたことを明かした。

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    監督の前田真宏氏

庵野氏は同じ問いに対して、「僕も安堵ですね。ああ終わった、終わった、と」といくぶん投げやりな雰囲気も見せ、会場に笑いのさざめきが。庵野氏は続けて、「終わったときは感謝ばっかり。スタッフがメインですけど、各セクションに行って頭を下げてありがとうございました、ありがとうございました。と言って回ったのが僕の(制作の)終わりです」と答え、「こういうところ、NHKさん撮ってないんですよ」と、「プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル」の番組内容を念頭に置いた発言で会場を沸かせた。

総監督と監督の役割分担については、「庵野さんは監督、僕とか前田さんは助監督みたいな立場。(映画の)パートごとに現場を仕切っていく感じ」(鶴巻氏)だったそうだ。

ちなみに、前出のNHKの密着取材番組について緒方氏に「ご覧になりました?」と遠慮がちに問われると、庵野氏は「僕は見ていない、僕が映っているものは見ない。嫌だから」。鶴巻氏も「僕も実は見てないんです。先日(番組の)ディレクターの方と会ったんですが、スイマセン5年後に見させてください、と謝りました(笑)」。録画して見たという前田氏は、「よくできているなと。庵野さんがどういうふうに映画を作っているかという、スゴく膨大な記録があって——カッコよくエディットしてあってなるほど、と思いました」。