フジテレビなどを傘下に置くフジ・メディア・ホールディングスが、過去に外資規制に違反していた問題について、総務省は4月9日に記者会見を開いた。武田総務大臣は、総務省が過去に厳重注意を行っており、また放送業務認定時は外資規制に抵触していなかったことから「放送法上、放送業務認定の取り消し処分はできない」とし、「今後、制度改正を行うことも重要」と述べた。

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    武田総務大臣(総務省YouTube公式チャンネル 4月9日記者会見より)

既報の通り、フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジ・メディアHD)は、過去に放送法で定められた外資規制に違反していた可能性があるとの報道を受け、事実関係を調査。2012年9月末から2014年3月末までの間、外国人議決権比率が20%を超えていたことを認めた。

総務省も、フジ・メディアHDへのヒアリングや、省内の調査によって上記の事実関係を確認。同社の外資規制違反状態が解消された後、2014年12月上旬頃に、同社の当時の常務から、総務省の当時の放送政策課長に対し、放送法の解釈について相談があったという。

武田総務大臣は、この相談の中で「(同社が)不注意により外資規制違反の状態にあり、どういう理由であれ申し訳なかったと謝罪したこと、同社から総務省への報告が遅れたことへの謝罪もあった。違反の状態は既に解消されており、放送政策課長から同社に対して、今後このようなことを二度と起こさないよう厳重に注意した」とコメント。

「昭和56年の内閣法制局見解などにより、同社の認定放送持株会社としての認定について、外資規制違反の状態がその時点(放送事業者としての認定時)で存在しないのであれば、放送法上、認定の取り消しを行うことができないと判断した」と武田総務大臣は述べ、「この考え方は今も妥当と考えるが、いずれにしても過去において外資規制違反の事実があったことは遺憾であり、重く受け止めている」とした。

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    フジ・メディア・ホールディングスの公式サイトより

なお、放送事業者の外資規制違反を巡っては、総務省が放送法の外資規制違反を理由に、東北新社メディアサービスの認定基幹放送事業者としての認定を5月1日付で取り消し、これによりBS放送「ザ・シネマ4K」の放送が4月30日24時で終了になることが決まっている

東北新社とフジ・メディアHDでは対応が異なるが、この点について報道陣から問われると、「昭和56年、当時の郵政省から内閣法制局に相談し整理した考え方があり、外資規制については、違反の事実をもってただちに免許が無効になるものではなく、取り消しという行政処分を実施する必要があるということ。このため、取り消し処分を行う時点で、取り消し事由が存在することが必要となっており、当該事由が存在しないのであれば、取り消し処分を行うことができないとされている」(武田大臣)。

その上で大臣は、「2014年当時(同社へ厳重注意したとき)は、当時の担当者がこの考え方にのっとり、(総務省は)取り消し処分を行えないと判断したもの。今でもこの考え方は妥当だと考えられる」と、フジ・メディアHDの認定取り消しが行えない理由を説明した。

一方、東北新社の事案については、「フジ・メディアHDの放送業務認定時は、外資規制に抵触せず、その認定は適正であった。これに対して東北新社は、そもそも当初の認定時に外資規制に抵触していた。本来ならば認定そのものを受けることができなかった、という点で大きな違いがある。東北新社については当初の認定に重大な瑕疵(法的な問題)があったため、総務大臣の職権で行政手続法に基づく一連の手続きを経て認定を取り消した」とした。

武田総務大臣は、「こうした事案が二度と発生しないよう、制度改正を行うことも重要と考えており、迅速に検討するよう指示した。総務省での審査の強化が必要で、たとえば外資比率の状況を定期的に把握できるような制度に改めることや、審査に関わる担当部署を設置することを含め、審査体制の充実について指示した」としている。