新型コロナウイルスの感染拡大によりネガティブな影響を受け「運が悪いな…」と感じている人も多いでしょう。一方、そうした状況下でも動じず、着実に人生を歩む人もいます。この先行き不透明な世の中で必要なのは、想定外の事態に負けないために「自分の運を安定させる」ことなのかもしれません。
著書の累計発行部数が、世界中で800万部を超えるベストセラーとなっている作家・本田健さんは「運は管理できるもの。普段のちょっとした振る舞い次第で安定させることができる」と語ります。
■運は管理できるもの
みなさんは「運」と聞くとなにを思い浮かべますか?
運は、人の力ではどうにもならないものと考えがちですが、運は「管理できるもの」だとわたしは考えています。自分のバイオリズムのようなもので、上がったり下がったりするのが運だととらえているのです。
運を上手に管理すれば、人に運を貸すことができるし、与えることもできるし、逆に人からもらうこともできます。たとえば、推薦というものがありますが、これはその人の信用を借りる行為です。その意味では、誰かに推薦してもらうというのは、その人の信用という運を受け取ることと同じです。
運は、お金と同じように貸し借りをしたり、貯めたりできるものなのです。当然、運を使いきってしまう場合もあります。傲慢になったり、欲深くなったりすると運は離れていきます。
仲がよかったはずの学生時代の友人が、社会に出て出世したら「俺はおまえとはちがうよ」みたいに態度が変わった経験がありませんか? そんな人は、一時的にはうまくいっても、そのうちなにかに足を引っ張られるでしょう。なぜなら、一時的に「人気」を得ても、同時に「人望」をなくしているからです。
■運=人望×人気
運をシンプルに言葉で表すと、こうなります。
運=人望×人気
人気は激しく上がり下がりしますが、人望は基本的には一定しています。つまり、誰かに「あの人って素晴らしいよね」「素敵だよね」といってもらえる人は、それほど多くの人に人気がなくても、いい運を持っています。逆に、「あの人はちょっとね…」といわれる人は、やがて運気が下がっていきます。
興味深いのは、人望がなくても人気がある人も存在することです。
芸人さんや俳優さんが、あるときを境にブレイクする現象がありますが、これは人気が先行して急上昇した状態といえます。
あまりに一気にブレイクし、人望が人気についていけなければ、絶頂からたたき落とされることもあります。運のメカニズムをわかっておらず「自分はすごい!」と勘違いしてしまうのです。
人気とは、風のようなもの。急に吹き上がることもあれば、あっという間に風向きが変わってしまうこともあるわけです。
一方、人望は積み上げていくものです。そのため、短期間で人望が高まることも失うこともありません。すごくお世話になっている人が、約束の時間にめずらしく遅れたとしても、別にそれだけで、相手に対する尊敬の気持ちは失われませんよね?
人望は、言い換えれば信用であり、確実なものなのです。
■ちょっとした振る舞いが人望につながる
新型コロナウイルスの感染が、世界的に拡大しています。そんな一見「運が悪い」と思える出来事が起こっているときでも、日頃からしっかりと生きている人は、運が安定しています。
運について個人的な話を少しすると、わたしにはあまり敵がいません。なぜかというと、わたしは普段から、できる限りみんなと仲良くしようと心がけているからです。それを「八方美人作戦」と名づけています。
そのため、もしわたしの悪口をいう人がいても「健さんはそんな人じゃないよ」と誰かがいってくれているようです。こうしたときに、「あの人微妙だよね」といわれるか「そんな悪い人じゃないよ」といってもらえるかで、運にも大きなちがいが生まれるわけです。
そのためには、普段から約束を守るのは当然だし、相手になにかあれば進んで助けることが大切です。そうしたフラットな人間関係を無視して、自分の都合だけで生きていると、あっという間にアンチが増えるのです。
これは、一般のビジネスパーソンでも主婦でも同じこと。約束を守ったり、気にかけて声をかけてあげたりと、普段のちょっとした振る舞いが、その人の人望につながります。いったん、まわりの人があなたを信頼してくれるようになると、しめたものです。
大事なのは、そのように普段から人望を積み重ねながら、自分で運を管理する姿勢です。
■自分がコントロールできることに集中する
もちろん、世の中には管理できない運もあります。それこそ今回の世界的なウイルスの蔓延は、個人の力ではどうしようもありません。飲食業や観光業などに携たずさわる人は、運の悪いめぐり合わせに立ち会うことになりました。こういう「まさか」が、人生には起こります。
いま世界の誰もが未来の見通しが立たず、自分の仕事が続くかどうかもわからない状態です。ではどうするのか?
それは、「自分ができないこと」は忘れて「自分がコントロールできること」に集中することです。
自分ではどうしようもない事態に悩んでいても仕方ありません。世の中には、ピンチを機に新しくビジネスをはじめ、逆に年収を増やす人もいます。同じことを体験していても、考え方次第で、全然ちがう結果になるのです。
いまの状況が一生続くわけではありません。運は必ず上がったり下がったりするので、いま自分はアクセルを踏むべきか、ブレーキをかけるべきなのか、自分でコントロールできる運の流れを見極めることが大切です。
■自分に「いい質問」をする
わたしたちは、なにか嫌な出来事が起きると、すぐに「なぜ?」「どうして?」と、その理由を探してしまいます。
「なぜ、あんなことをいってしまったんだろう?」
「どうして、こんなに生活が苦しいのだろう?」
「なんでリストラされたんだろう?」
「なぜあの人は、わたしのもとから去ったのだろう?」
でも、嫌な出来事について、その都度「なぜ?」「どうして?」と自分に問いかけていると、思考はますますネガティブな材料を探しはじめて落ち込んでしまいます。それと同時に、あなたの運気も下降するでしょう。
そこで、どうせ「なぜ?」「どうして?」と問いかけるなら、それをポジティブな質問に変えてみてください。
「なぜ、あのときうまくいったのだろう?」
「どうして、家族や友人に恵まれているのだろう?」
「ここからどういうことが起きたら、人生大逆転のドラマになるのだろう?」
すると、「わたしは運がいいから」「愛されているから」といった答えが自然に出てきます。
こうして自分にとって「いい質問」をするだけで、運の流れがまったく変わってきます。わたしたちは、1日に何百回も質問を無意識に繰り返しているといわれますが、自分にいい質問をすれば、ポジティブな材料がたくさん集まってきます。
質問に明確な答えが出なくても、まったく構いません。それよりも、日頃から、自分と自分のまわりのいいところに目を向ける習慣をつけていく。それによって自分に自信が持てるようになり、そんなあなたに触れたまわりの人もいい気持ちになっていきます。
そして、本当に運気が上がっていくのです。
■「思いどおりにならない」から生きる甲斐がある
人生の真実のひとつは、世界のどんな成功者でも、思いどおりに生きられた人はいないことです。
いまどんなに成功しているように見える人でも、話を聞くと、数々の失敗や挫折を経験し、本人としては最初に考えていたとおりの人生を生きていないとわかります。どちらかというと失敗のほうが多かった、という人もいるぐらいです。
それでもみな、幸せに生きています。つまり、思いどおりに生きられないことは、けっして運が悪いことでも不幸なことでもないのです。
なにもかも思いどおりになれば、それは楽しい人生でしょうか?「思いどおりの人生になったらいいな」と思うかもしれませんが、失敗や挫折を乗り越える体験がなければ、自分の人生に手応えを感じることもできません。
そう考えると、人生は失敗やピンチの連続だからこそ、楽しく充実するともいえます。思ったとおりではなく、思わぬ展開を見せてくれるからこそ、人生はつらく、楽しく、生きる甲斐があるのです。
もっともつまらないのは、失敗や挫折を怖れて、できるだけ失敗しないようにと流すように生きることです。波風立てないように生きるのではなく、いまこの瞬間をワクワクしながら、自分が波風を立てて生きるから、人生は充実していくのです。
失敗は、むしろ人生を楽しくしてくれます。 そして、そんな感じで楽しい人生を生きる姿勢が、また素敵な運を、あなたに運んできてくれるでしょう。
構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)
※今コラムは、『「うまくいく考え方」新しい時代で幸せになる5つの法則』(著:本田健 プレジデント社)より抜粋し構成したものです。