売買契約書は、ビジネスシーンでもよく見かける重要な書類です。本稿では、売買契約書の基礎知識として、どのような種類があるか、一般的な記載内容についてまとめました。印紙税や印鑑、作成時の注意点についても解説します。

  • 売買契約書とは

    売買契約書の基本を確認しよう

売買契約書とは

売買契約書とは、製品やサービスの売主と買主で、取引に関する内容を記載した契約書の一種です。取引内容は、支払条件や支払日・製品やサービスの名称・数量・支払額などがあり、売買する製品やサービスにより、取引内容は変わります。

通常、売買契約書はマイホームや自動車など、金額の大きな売買取引を行う場合に作成します。コンビニやスーパーマーケットなど日常の買い物のような少額の取引の場合、売買契約書を取り交わすことはありません。

その理由は、契約金額が150万円以下の場合は、契約書を省略できるよう予算決算及び会計令100条の2で定めているためです。

売買契約書の種類

売買契約書の種類は、売買する製品やサービスの種類により多種多様です。売買契約書は主に不動産関連と商品関連に分類されています。それぞれどのような種類の契約書があるか、代表的な例を見てみましょう。

売買契約書の種類 不動産関連 商品関連
具体例 ・土地売買契約書
・建物売買契約書
・借地権付建物売買契約書
・区分所有建物売買契約書
・土地売買予約契約書
・農地売買契約書
・商品売買契約書
・物品売買契約書
・継続的商品取引基本契約書

不動産は一般的に高額の取引となるため売買契約書を作成します。売買契約書の種類は、取引対象の不動産の種別ごとに分かれています。土地と建物を一緒に売買する場合は「土地建物売買契約書」としてまとめることも可能です。

商品関連の「継続的商品取引基本契約書」は、何度も同じ商品を売買する際の基本的な取り決めを行う「取引基本契約書」の一種です。取引基本契約書については、関連記事の「取引基本契約書」の内容をご確認ください。

売買契約書の重要性

売買契約書の重要性は、売買上発生しうるトラブルを未然に防止し、売買後に予想されるさまざまなリスクを最小限にとどめる点にあります。

売買契約書の基本フォーマット

売買契約書の標準的な例として、公益社団法人全日本不動産協会の公開している、「土地・建物売買契約書」の標準契約書例を紹介します。

・公益社団法人 全日本不動産協会「土地・建物売買契約書の例

具体的な記載事項については、次で説明していきます。

  • 売買契約書とは

    売買対象が高額な場合や企業間取引では売買契約書が必要となる

売買契約書の記載事項

売買契約書の記載事項は、不動産関連と商品関連で少しずつ異なります。各種類の売買契約書ではどのような記載事項があるのかをまとめました。

土地建物売買契約書の場合

土地建物売買契約書の場合、一般的には以下の項目を記載します。

記載事項 内容
売買物件の表示 登記記録に基づき、売買物件の内容を記載します。土地・建物双方の所在地・面積などが明示されます。
売買代金の額・支払日 売買代金や手付金などの金額および買主の支払日を記載します。
手付金の取り扱いについても記載が必要です。
土地の実測・土地代金の精算 土地の実測値が登記上の値と異なる場合があるため、実測して登記上の値と相違があれば、実測値に合わせて土地代金の精算を行う旨記載します。
所有権の移転と引渡し 所有権の移転と引渡しの時期を記載します。
付帯設備等の引継 住宅の付帯設備について、何を残すのか、また何を撤去するのかについて記載します。
公租公課等の精算 固定資産税や都市計画税、マンションの場合は管理費の清算について記載します。引渡し日を基準として日割りで清算するケースが一般的です。
手付け解除 手付け解除の条件を記載します。
引渡し前の物件の危険負担 天災など買主・売主双方に責任のない理由で取引する土地・建物が滅失・毀損する場合の取り決め(危険負担)を記載します。
契約違反による解除 当事者のうち、片方が債務不履行の場合に、もう片方が契約解除できるという取り決めについて記載します。違反者は、違約金を支払うよう取り決めるのが一般的です。
反社会的勢力の排除 反社会的勢力の排除に関する取り決めを記載します。
ローン特約 買主が努力したにもかかわらず住宅ローンを組めなかった場合、無条件で契約を解除できる特約です。
瑕疵担保責任
(かしたんぽせきにん)
隠れた瑕疵(欠陥など)が見つかった場合に、売主が損害賠償の義務を負うかどうか、負う場合はどのぐらいの期間まで責任を負うかを取り決めて記載します。

土地建物の売買契約書で特徴的な点は、手付金や住宅ローンについての規定です。その他、トラブルがないようさまざまな記載事項について記載し、買主・売主双方で協議する部分は協議し、売買契約書の内容を定めます。

継続的商品取引基本契約書の場合

商品売買契約書のうち、継続的に取引を行う「継続的商品取引基本契約書」の記載内容については、こちらを参考にしてください。

物品売買契約書の場合

物品売買契約書の場合、一般的には以下の項目を記載します。

記載事項 内容
基本合意 売主と買主の明示および本契約書が売買契約であることを記載します。
目的物 売買の対象となる製品・サービスの名称や数量を記載します。
代金 代金の額・支払期日・支払方法を記載します。
納品日時と場所 製品・サービスを買主に引渡す日時と場所を明記します。
所有権移転時期 製品・サービスの所有権がどの時期で移転するかを記載します。通常は、引渡し日か代金の支払日です。
検査 買主が商品を受け取った後の検査方法や検査機関を記載します。
遅延損害金 代金が期日までに支払われなかった場合、買主に対して売主が請求できる遅延損害金の利率を記載します。
瑕疵担保責任 土地建物売買契約書と同じ
契約解除 土地建物売買契約書と同じ
協議 本契約書に定めのないことについては、買主と売主が話し合うという旨を記載します。
合意管轄 トラブルが発生した場合、どこで審議するのかについて記載します。

製品やサービスの数量や代金、支払方法など、売買に必要な情報を漏れなく記載します。代金の支払日や、所有権移転のタイミングなど、トラブルになりそうな部分は当事者同士でしっかり話し合って記載することが重要です。

  • 売買契約書の記載事項

    売買する目的物によって売買契約書の記載事項は異なる

売買契約書作成における印紙や印鑑の扱い

売買契約書を作成する際、印紙や印鑑の扱いをどうするのかも確認しておきたいポイントです。

印紙の要不要と金額

売買契約書は、内容によって課税文書となり、印紙が必要となります。例えば、不動産売買契約書は1号文書となり課税対象です。契約書に代金を受け取った旨が書かれている場合は17号課税文書となります。また、継続的商品取引基本契約書の場合は7号文書となり4,000円の印紙税が必要です。

印紙税額の一覧は、以下を参考にしてください。
・国税庁「印紙税額

ただし、売買契約書を電子化して電子取引にすると、印紙税は不要となります。何通も売買契約書を発行して印紙税がかかる場合は、契約書を電子化することも検討してみましょう。

印鑑の扱い

売買契約書には、基本的に印鑑登録済みの実印や登記済みの法人印鑑などが使用されます。また、社印も必要となる場合や印鑑証明を求められる場合もあるため、事前にどの印鑑が必要かを確認しましょう。

書類を買主と売主で2通作成する場合、後から契約書が改ざんされることのないように、割印(わりいん)を押します。また、記載内容で訂正がある場合は、二重線を引いて訂正印を押しますが、訂正印には契約で使用した印鑑を利用してください。

  • 売買契約書作成における印紙や印鑑の扱い

    売買契約書に用いる印鑑には実印を用意しよう

売買契約書作成時の注意点

売買契約書作成時には、特に注意したいポイントがあるので見ていきましょう。

売買契約書における各項目は具体的になっているか

売買契約書の記載事項は、すべて具体的な内容になっているか、何度も見直しましょう。特に、目的物の引渡し・所有権の移転時期・代金の支払時期や支払方法は、トラブルになりやすいので要注意です。

売買契約における売主の責任

売主は、基本的に無過失責任を負わなければなりません。無過失責任とは、故意や過失がなくても責任を負う必要がある、ということです。そのため、免責事項や危険負担の項目に関して、買主と売主がどこまで責任を負担するか詳細に取り決めましょう。

  • 売買契約書作成時の注意点

    記載事項は具体的に

売買契約書の確認ポイントを把握しよう

売買契約書は、契約時や契約後にトラブルとならないよう、取引に関する内容を取り決めた契約書です。買主と売主は利益が相反するため、慎重に打ち合わせをして双方が納得できる内容にする必要があります。

ビジネスシーンでも目にする機会の多い売買契約書。確認ポイントを把握して、売主側・買主側の視点でチェックできるようにしましょう。

公益社団法人 全日本不動産協会 土地・建物売買契約書の例
国税庁 印紙税額
e-Gov法令検索 予算決算及び会計令100条の2