見積書とはどのような書類かについて、一般的な商取引や必要な理由などを示しながら解説します。見積書のフォーマットと書き方・作成時の注意点についても説明するため、見積書を作成する際はぜひ参考にしてください。
見積書とは
見積書とは、仕事を受注して正式に仕事を受ける前に受注者が発行する証憑(しょうひょう)の一種です。受注者が見積書で示した取引条件に対し、発注者は検討を行い、発注するかどうかを決定します。
見積書を含め、商取引の中で発行される証憑は、帳簿類と同じく保存が義務付けられています。では、一般的な商取引と見積書以外の証憑との関係はどうなっているでしょうか。
一般的な商取引と見積書
一般的な商取引の流れと、証憑の関係は以下の通りとなっています。
- 受注者:見積書を発行
- 発注者:見積書を確認して発注を決めると発注書を発行
- 受注者:発注書を受け取り仕事を進め、納品時に納品書を発行
- 発注者:納品を受けて受入検査(検収)を行い受領書(または検収書)を発行
- 受注者:請求書を発行
- 発注者:代金を支払う
- 受注者:入金を確認して領収書を発行(ただし銀行振込の場合は一般的に領収書を発行しない)
このように、見積書は一連の商取引の中で最初に発行する証憑です。
見積書と発注書
受注者から見積書を受けた発注者は申し込みの意味合いで発注書を発行し、受注者が発注書を受け取ると契約へと進みます。発注書の内容は以下の通りです。
- 発注者の氏名または法人名、住所、電話番号
- 取引を行う年月日
- 取引の内容(商品名や業務内容、数量など)
- 取引金額(小計、消費税額、総合計)
- 受注者の氏名または法人名
- 納品日
- 納品場所
- 支払条件
基本的には、見積書に書かれた取引条件が発注書に反映されるため、受注者は発注書が届いたら見積書と相違がないか確認します。
見積書の役割
見積書の役割は、「契約内容の確認」と「価格や内容の比較」の2点です。複数の受注者がいて受注を競い合っている場合、発注者は複数の受注者から見積書を受け取り、取引条件のよい受注者を選びます。
ちなみに、複数の個人や法人に対して同じ条件で見積もりを依頼することを「相見積もり」あるいは「あいみつ」と呼びます。
見積書が必要な理由
見積書が必要な理由としては、主に3点挙げられます。
1.納品の内容と金額を明確にするため
見積書によって、納品する製品や業務の内容、数量、金額が明確になり、取引内容を具体的に当事者の間で共有できます。納品日も明確になり、契約内容に対して認識のずれがなく以降の取引を潤滑に進められるのです。
2.取引記録を残すため
見積書を作成して発注者に渡すことで、取引記録が残ります。口頭の約束だけでは、後から双方の言い分に食い違いが発生するかもしれません。書面で取引記録を残すことで、トラブルを未然に防止できます。
3.取引の流れを作るため
発注者は、見積書を受け取ることによって、取引を開始するかどうかの判断をします。見積書は、取引の流れを作るためにも重要な役割を果たす証憑です。
見積書のフォーマットと書き方
見積書の一般的なフォーマットとして、Microsoftが公開しているExcelのテンプレートを紹介します。
見積書の無料テンプレートは、インターネット上でさまざまな種類が公開されています。おしゃれなテンプレートや建築業界向けなど業種にそったテンプレートもあるので、必要に応じてインターネットで検索してみてください。
一般的な見積書の記載内容については、以降で説明します。
宛先と通番
宛先は、個人名「〇〇様」または法人名「〇〇御中」を記載します。通番は、同じ契約の証憑(見積書・納品書など)で同じ番号を振るようにしてください。
発行者に関する項目
発行者に関する情報を記載します。発行者の個人名または法人名・住所、発行者の印鑑(法人の場合は社印)も押印します。
タイトル・件名
どのような契約なのかがひと目でわかるように件名をつけて記載します。
発行日または提出日と有効期限
発行日または提出日と、有効期限を記載します。見積書には納品日を記載するため、発行日または提出日から発注までにあまりにも時間がかかってしまうと、納品日に影響が出ます。そのため、有効期限は必ず記載するようにしましょう。
見積金額
見積もりの合計金額を記載します。税込か税抜かも明示してください。
商品に関する情報
納品する商品(業務やサービスも含む)に関する情報を、以下の形で記載します。
- 品番・品名
- 商品の数量
- 商品の単価
- 商品の金額
Excelのフォーマットと関数を使って、商品の数量と単価を入力すると金額が自動的に算出されるようにしておくと計算ミスも避けられるためおすすめです。
また、値引きを行う場合は、値引きに関する行を1行作成し、商品の金額部分で「▲」か「-(マイナス)」を使って表現してください。本来の見積金額と値引額を明示しておかないと、後から「値引きした・しない」とトラブルになる可能性があります。
金額や税金に関する項目
各商品の金額を表の最下部で小計し、消費税額および合計金額を明示しましょう。合計金額がそのまま見積金額となります。計算ミスや入力ミスを避けるため、合計金額がそのまま見積金額に反映されるように関数を作っておきましょう。
備考
全体に関わる注意書きや連絡事項があれば記載します。見積書の内容は、そのまま発注するかどうかの判断材料になるため、入力ミスは極力排除するように注意してください。Excelの関数を活用して自動計算できる部分は自動計算をする、同僚や上司・部下と二重チェックを行うことも重要です。
見積書作成時の注意点
記入ミス以外にも、見積書を作成する上で注意したい点があります。どのような点に注意するべきかを確認して、見積書作成に活かしてください。
見積書の記載内容と納品内容を合わせる
見積書に記載する商品・サービスなどの内容は、納品内容と合わせてください。見積書と実際の納品内容に乖離があるとトラブルの元となるので要注意です。1つの契約で作成した見積書や納品書などの証憑はひとまとめにして管理し、他の契約と混同しないように整理しておきましょう。
納期設定は慎重に
納期の設定は、スケジュールの見積精度が甘いとずれてしまうので注意しましょう。あまりにも遅すぎる納期では、競合相手に負けるかもしれない、という懸念があるかもしれません。しかし、納期が守れず信用を失うことの方が問題です。納期が妥当かどうか上司にチェックを仰ぐなど、慎重には慎重を期してください。
見積書は可能な限り早く提出
見積書の提出が遅れると、ライバルの受注者に先を越される懸念が大きくなります。記載内容には慎重を期す必要がありますが、その一方でできる限り早く見積書を提出し、受注機会を逃さないようにしましょう。
見積書はビジネスにおける基本の書類
見積書は、取引の始めに作成する基本の書類です。発注者は複数の見積書を比較して、発注先を決めるのに利用します。一方受注者は、取引内容を明確にして後々トラブルにならないよう、見積書を作成します。
見積もりに記載する商品やサービスの名称と数量、単価などは納品内容に合わせて記載し、トラブルを未然に防ぎましょう。また、納期の設定は慎重に行い、確実に守れる納入日を設定してください。