ひやむぎとそうめん。どちらも夏場の暑い季節になると食卓で活躍してくれる心強い食材ですが、この2つには明確な違いがあることをご存じでしょうか?
本記事ではひやむぎとそうめんのそれぞれの製造方法や歴史などを紹介します。今さら両者の違いについて聞けなかった方も、違いを聞かれて自信がない方も見分け方を確認しましょう。
ひやむぎとそうめんの違い
ひやむぎとそうめんは、大きく分けて「麺の太さ」「製造方法」「食感」の3点に違いがあります。それぞれ具体的にどう異なるのかをみていきましょう。
麺の太さ
機械製法の場合、ひやむぎとそうめんの太さは日本農林規格(JAS)によって以下のように定められています。
【そうめん】……直径1.3mm未満
【ひやむぎ】……直径1.3mm以上で1.7mm未満
ただし、手延べ製法の場合は直径1.7mm未満であれば、ひやむぎ、そうめんのどちらでもよいことになっています。これは手延べそうめんの代表ともいえる、徳島県つるぎ町の半田地域の名産品「半田そうめん」が関係しているとされています。
半田そうめんの太さは1.7mm前後であるため、本来は「手延べひやむぎ」と名前を変える必要があったのですが、江戸時代から多くの方に親しまれてきたことを考慮して、手延べそうめんの太さに関するJAS規格が改正されました。
製造方法
ひやむぎもそうめんも素材は同じですが、その作り方にも違いがあります。
【そうめん】……挽き臼で挽いた細かい小麦粉の生地に、油を薄く塗り手を使って伸ばします。
【ひやむぎ】……製造工程の中で平らな板や麺棒などの道具を使って、伸ばしたり切ったりします。うどんや平麺のきしめんづくりの製造方法に似ています。
食感
太さが異なるため、食感にも違いがあるようです。
【そうめん】……つるつるとしたのどごしの良さが特徴的。
【ひやむぎ】……そうめんより太さがあるため、麺のコシや食べごたえを感じやすい。
両者に大きな味の違いはありませんが、麺の太さから現れる食感の差で好き嫌いが分かれることもありそうです。
ひやむぎとそうめんの歴史
ひやむぎとそうめんの歴史を知れば、両者の違いがより理解できます。名前の由来や歴史的時代背景などをあわせて紹介しますので、違いを比較しながら整理してみましょう。
ひやむぎの歴史
ひやむぎの起源は室町時代にさかのぼります。当時、細いうどんは「切麦(きりむぎ)」とも呼ばれ、冷えた状態で食べるのを「冷麦(ひやむぎ)」、温かい状態で食べるのを「熱麦(あつむぎ)」と呼んでいました。
やがて「熱麦」が少なくなり、現在のひやむぎ・冷や麦になったといわれています。
そうめんの歴史
そうめんは、奈良時代に中国から伝わったものが起源です。「索餅(さくべい)」という唐菓子から作られ、僧侶の間食として食べられていました。
室町時代になると「索餅」が「索麺(さうめん・さくめん)」になり、江戸時代には「素麺(そうめん)」と名前が変化していったといわれています。
ひやむぎに色付き麺が入っている理由
ひやむぎにはピンクやグリーンの色付き麺が数本だけ混ざっているものがあります。この理由はご存じでしょうか? この色付き麺の存在理由は「そうめんと区別しやすくするため」とされています。
昔はそうめんやひやむぎ、うどんなどが一緒に並べられて販売されていました。うどんとの違いは見た目でわかるものの、そうめんとひやむぎは似ているため、ひやむぎに色付き麺を入れることで、違いがはっきりとわかるようになったのです。
ひやむぎとそうめんの茹で方
どちらとも茹で方に違いはありません。基本的な美味しい茹で方は、大きめの鍋でたっぷりの水(1人前分の100gに対して水1L程度)を沸騰させ、ひやむぎやそうめんをパラパラと入れます。
さらにお湯が沸騰したら弱火にして麺をはしでほぐしましょう。パッケージに記載されている茹で時間を参考にします。茹であがったら素早くザルに移し、冷水で揉み洗いをして完成です。
そうめんとにゅうめんの違い
そうめんとにゅうめんの違いは食べ方にあります。そうめんは麺を茹でて冷まし、麺つゆにつけ数種類の薬味と一緒につけ麺で食べますが、にゅうめんはそうめんを茹でた後、温かく煮て食べます。
にゅうめんは奈良県発祥の郷土料理といわれていますが、食べ方は温かい出汁つゆをかける方法と、温かい出汁つゆの中で煮る方法があります。エビやしいたけ、かまぼこなどがにゅうめんの具として入り、寒い冬でもそうめんをおいしく食べられます。
ひやむぎとそうめんの違いを知っておこう
ひやむぎとそうめんは見た目も似ていますが、いくつか違いがあります。仮にレシピにある料理をつくるとなった際、ひやむぎとそうめんを間違えてしまうと料理自体が失敗に終わる可能性もあります。本記事を参考にして両者の特徴をしっかりと理解しておきましょう。