所得税や住民税の計算をする際に、年間所得額から差し引くことができる所得控除。税制改正により、2020年分所得税分(2021年の確定申告分)から全部で14種類あった所得控除が15種類に増えるとともに、一部の所得控除で金額や適用条件が改正されました。

そこで本記事では、全15種類の所得控除について概要をまとめて紹介します。

  • 年収が全額支給される訳ではない

    さままざな所得控除を紹介します

所得控除とは

確定申告をする際の所得税の控除は、大きく分けて以下の2つに分けられます。

(1)所得から差し引くことができる所得控除

(2)税額から差し引くことができる税額控除

一般的に所得控除より税額控除の方が節税効果は高いとされていますが、税額控除は確定申告をせずに適用されることはありません。

所得控除には以下の15種類があります。

  1. 基礎控除
  2. 雑損控除
  3. 医療費控除
  4. 社会保険料控除
  5. 小規模企業共済等掛金控除
  6. 生命保険料控除
  7. 地震保険料控除
  8. 寄附金控除
  9. 障害者控除
  10. ひとり親控除
  11. 寡婦控除
  12. 勤労学生控除
  13. 配偶者控除
  14. 配偶者特別控除
  15. 扶養控除

以下に一つずつまとめてありますので詳しくみていきましょう。

基礎控除

基礎控除は納税者の所得や扶養の有無といった条件などにかかわらず、一律38万円を所得から控除できていた所得控除です。基礎控除を差し引くことで所得が0円であれば、税金も0円ということになります。

仮に所得が38万円以下で、かつ所得税が源泉徴収されていた場合には、確定申告により税金の還付がなされる場合があります。

2020年分の所得からは控除額が48万円に増額されましたが、納税者の所得によっては、控除額が32万円、16万円に減額されます。また所得額が2,500万円を超えるようならば、基礎控除は受けられません。

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雑損控除

災害または盗難、横領によって生活に必要な資産に損害などを受けた場合、一定額を所得から控除できます。ただし、その年の納税者の所得合計額が48万円(2019年分までは38万円)を超える場合は雑損控除の適用を受けられます。

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医療費控除

納税者本人および家族のために支払った年間の医療費が10万円(※)を超える場合に適用できます。所得から控除できる金額は、次の式で計算した金額(200万円限度)です。

医療費控除額=実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額-10万円(※)

(※)その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等×5%の金額

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社会保険料控除

納税者本人および家族のために支払った年間の社会保険料の合計額を所得から控除することができます。社会保険料は給与天引きされている健康保険料、厚生年金保険料などのほか、国民健康保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金なども含まれます。

所得から控除できる金額は、その年に実際に支払った金額です。

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小規模企業共済等掛金控除

納税者が小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金などを支払った場合には、その支払った年間合計額を所得から控除することができます。

たとえば、個人事業主のために退職金共済の掛金、個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金、会社で加入する企業年金制度の従業員負担分などがあります。

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生命保険料控除

加入している生命保険や介護・医療保険、個人年金保険などの保険料を支払った場合、年間の払込保険料に応じて一定の金額を所得から控除することができます。保険契約日が2011年12月31日以前の契約と2012年1月1日以降の契約では生命保険料控除の取扱いが異なり、所得から控除できる上限額も違います。

  • 2011年12月31日以前の契約(旧契約) : 最高10万円(一般の生命保険・個人年金保険で各5万円)
  • 2012年1月1日以降の契約(新契約) : 最高 12万円まで(一般の生命保険・介護医療保険、個人年金保険で各4万円)

新契約で各控除額の計算をする際は、保険種類ごとではなく、保障の種類ごとに行います。加入している保険商品名だけで判断できない場合もありますので、生命保険会社から送られてくる保険料控除証明書で確認するようにしましょう。

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地震保険料控除

自宅や家財などに掛けている地震保険料を支払った場合、年間の払込保険料に応じて一定の金額を所得から控除することができます。

  • 年間の払込保険料が5万円以下の場合 : 支払金額の全額
  • 年間の払込保険料が5万円超の場合 : 5万円
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寄附金控除

納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに寄附をした場合に適用できます。所得から控除できる金額は、次のいずれか低い額から2,000円を差し引いた金額です。

  • その年に支出した特定寄附金の合計額
  • その年の総所得金額等の40%相当額

ふるさと納税も寄附金控除の対象ですが、寄附時にふるさと納税先団体に申請することで確定申告が不要になる(ワンストップ特例)など、所得控除の受け方が異なります。詳しくはふるさと納税をする前に寄附先に確認しておきましょう。

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障害者控除

納税者本人やその配偶者、扶養家族に一定の障害を持つ人がいる場合に適用できる所得控除です。所得から控除できる金額は、障害者の区分によって異なります。

  • 障害者 : 27万円
  • 特別障害者 : 40万円
  • 同居特別障害者 : 75万円
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ひとり親控除

2020年所得税分から新設された所得控除です。その年の12月31日時点で未婚のひとり親、または配偶者の生死が明らかでない一定の人が子どもを養育している場合、その年の所得額から35万円を控除できます。

ただし、子どもが他の納税者の配偶者控除または扶養控除の対象になっている場合は、その子に対するひとり親控除の適用を受けることはできません。また、納税者自身の合計所得額が500万円を超える場合は適用されません。

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寡婦控除

夫または妻と離死別した後に婚姻していない人で、上記のひとり親に該当しない人は、寡婦控除としてその年の所得額から27万円を控除できます。

寡婦控除の適用を受けるための要件は、ひとり親控除の創設に伴い2020年所得税分から見直しされています。これまで寡婦控除の適用を受けていた人は、要件をきちんと確認しておきましょう。

また、これまであった寡夫控除は「ひとり親控除」に変わっており、ひとり親控除適用の要件を満たしていれば適用されます。

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勤労学生控除

納税者本人が勤労学生である場合に、その年の所得額から27万円を控除できます。ただし、給与所得などの所得金額が75万円以下で、そのうち給与所得以外の所得額が10万円以下でなければなりません。

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配偶者控除

年間所得が48万円(給与収入だけの場合は年収103万円)以下の配偶者がいる場合、配偶者控除の適用を受けることができます。

納税者の所得から控除される金額は、納税者の所得に応じて38万円、26万円、13万円と段階的に少なくなります。なお、納税者自身の所得が1,000万円を超える場合、配偶者控除の適用は受けられません。

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配偶者特別控除

配偶者の年間所得が48万円を超え、配偶者控除の適用を受けられない場合でも、配偶者の年間所得額が133万円(給与収入だけの場合は年収201.6万円)以下であれば配偶者特別控除の適用を受けられます。

納税者の所得から控除される金額は、納税者の年間所得、および配偶者の年間所得額に応じて38万円~1万円となります。なお、配偶者所得の場合と同様に、納税者自身の所得が1,000万円を超えるようならば、配偶者特別控除の適用は受けられません。

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扶養控除

年間所得が48万円(給与収入だけの場合は年収103万円)以下の控除対象扶養親族がいる場合、扶養控除の適用を受けることができます。 納税者の所得から控除される金額は、控除対象扶養親族の年齢に応じて次の金額になります。

  • 16歳以上 : 38万円
  • 19歳以上23歳未満 : 63万円
  • 70歳以上かつ同居の親族 : 58万円
  • 70歳以上かつ同居以外の親族 : 48万円
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適用できる所得控除の数および金額が多いほど、納付すべき所得税および住民税の金額が少なくなります。適用対象となる所得控除があれば、忘れず確定申告で申告しましょう。