斎藤八段が挑むは、初防衛を目指す王者渡辺明名人

将棋界で最も歴史のあるタイトル戦である、第79期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社)第1局が4月7日に開幕しました。昨年初の名人位を獲得した渡辺明名人に挑むのは、名人初挑戦の斎藤慎太郎八段です。


第79期名人戦七番勝負の日程表

昨年はコロナ禍の影響で第1局が6月にずれ込んでしまいましたが、今年は例年通り4月上旬の開幕を迎えることができました。

前期、豊島将之名人から4勝2敗で名人を奪取した渡辺名人。藤井聡太七段の挑戦を受けた棋聖のタイトルは失冠してしまったものの、今年に入ってからは王将・棋王を防衛しています。棋王の防衛でタイトル通算獲得数は歴代単独4位となり、まさに歴史に名の残るトップ棋士です。

そんな王者に挑むのは27歳の若武者、斎藤八段です。斎藤八段は1993年4月生まれの27歳。2012年4月に四段に昇段すると、初参加の第71期順位戦C級2組で9勝1敗の成績を挙げ、いきなり昇級を果たします。その後は第74期C級1組で9勝1敗、第75期B級2組でも9勝1敗で連続昇級。そして前期の第78期B級1組で9勝3敗の成績を残して、A級へ昇級しました。

そして初参加のA級順位戦でいきなり8勝1敗の好成績を挙げ、名人初挑戦を決めました。第66期王座戦以来のタイトル獲得を目指します。

両者の対戦成績は、渡辺名人の3勝2敗。直近の対戦は今年3月のヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント1回戦で、渡辺名人が制しています。

開幕局の本局は、振り駒の結果斎藤八段が先手番になりました。矢倉を目指す斎藤八段に対し、渡辺名人も素直に追従します。

早囲いの駒組みを選択した斎藤八段。通常の矢倉の駒組みよりも1手早く矢倉を構築できるため、早囲いという名前が付いています。10年ほど前までは、早囲いの駒組みを選択した場合には矢倉に組むか、藤井矢倉(片矢倉・天野矢倉とも言います)に組みかの2つしか選択肢がありませんでした。ところが近年になって、第3の選択肢である「土居矢倉」に注目が集まっています。▲5八金と上がって、矢倉城の一部となるはずの金をあえて玉から遠ざける構えが土居矢倉です。

実は土居矢倉は新しい指し方ではありません。この布陣を好んで指した土居市太郎名誉名人は、大正から昭和初期に活躍した大棋士。1940年には第2期名人戦にも登場しています。この80年前の古い構えが近年、将棋ソフトの影響で見直されているのです。

斎藤八段が土居矢倉を選ぶのか、それとも通常の矢倉や藤井矢倉に組むのかがまずは本局の岐路と言えるでしょう。

一方の渡辺名人は右銀を囲いに引き付け、金銀4枚で玉の守りを固める専守防衛の構えを見せています。玉を固めて、細い攻めをつなげるのが渡辺名人の得意な指し回し。本局でも持ち味全開の将棋が見られそうです。

本日は2日制対局の1日目のため、封じ手が18時30分に行われます。決着が付くのは明日の夜になる見込みです。

名人戦初登場の斎藤八段(提供:日本将棋連盟)
名人戦初登場の斎藤八段(提供:日本将棋連盟)