「粉骨砕身」は座右の銘で使われたり、就任挨拶や決意表明などでよく耳にしたりする四字熟語です。しかし、正確な言葉の意味までは知らないという方や、似た意味の「一生懸命」との違いがわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「粉骨砕身」の言葉の意味とビジネスシーンでの使い方や例文を紹介します。豊富な語彙を覚えて正しく使い分け、社会人としてのステップアップを目指しましょう。
「粉骨砕身」とはどんな意味?
粉骨砕身とは、身を砕くほど力の限り惜しまずに努力するという意味です。精一杯頑張る決意を伝える時に使います。
努力する意味を含むため、「努力します」をつける時は「覚悟」や「思い」など気持ちを表す名詞とセットにしましょう。自己犠牲の意味もあるため、使う時には注意が必要です。
なお、読み方は「ふんこつさいしん」です。
「粉骨砕身」の由来
粉骨砕身は、中国の唐の時代、禅僧「永嘉大師」によって書かれた「禅林類纂」(ぜんりんるいさん)からきた教えです。
原文は「粉骨砕身未足酬 一句了然超百億」(粉骨砕身も未だ酬ゆるに足らず 一句了然として百億を超う)という詩のような経文になっています。
訳は、「私は身を粉にして供養しているが、まだお釈迦様の御恩に報いていない。お釈迦様の説法は一句だけで百億年の修行を超える価値を持っているのに」です。
「粉骨砕身」の使い方・例文
粉骨砕身は話す時や書く時、どちらも使用できます。四字熟語は適切な場面で使うと、相手に気持ちが伝わる言葉です。ビジネスシーンに合わせて、適切な使い方をしましょう。
<例文>
- 営業成績を倍増させるため、粉骨砕身する。
- シェア上位を目指し、粉骨砕身の覚悟で努力します。
- 粉骨砕身の覚悟で臨む。
- 業務に粉骨砕身邁進します。
- 粉骨砕身の努力で働きますので、よろしくお願いいたします。
また、粉骨砕身は座右の銘としてもよく使われます。座右の銘で、精一杯頑張りたいという意欲的な姿勢を見せたいときには、ぜひ候補に入れてみてください。
「粉骨砕身」の類語・言い換え表現
粉骨砕身は日常会話ではほとんど使わないですが、ビジネスシーンで自分の決意を示す時に使うと効果的です。類語や言い換え表現を知って、微妙なニュアンスの違いを理解しましょう。
骨折り
骨折り(ほねおり)とは、努力や精を出して働くことと、仕事に対する報酬の意味です。また、努力して頑張った様子を表します。丁寧な表現の「お骨折り」は取引先などに対する時、「骨折り」は部下に対して上司が使う時に表現します。
自分の頑張りを表現する時は「骨が折れた」が一般的です。
<例文>
- この度はお骨折り頂き、感謝申し上げます。
- 骨折りのお礼に、食事をごちそうする。
努力
努力とは、目的を達成するために力を尽くして頑張ることです。努力は名詞ですが、「する」をつけて動詞としても使えます。書き言葉と話し言葉の両方で使用可能です。
<例文>
- 資格取得のために、努力する。
- 普段の努力が実って、結果につながった。
尽力
尽力(じんりょく)とは、目的のために力をつくすことです。努力と同じ意味に使われますが、努力は自分のため、尽力は他者や世の中のために使います。尽力のほうが自己犠牲を伴い、粉骨砕身に近いニュアンスを持っています。
<例文>
- 会社の立て直しに尽力する。
- ご尽力の賜物です。
腐心
腐心とは、目的達成のために頭を悩ますということです。目上の方に使う時は、「腐心された」という表現にします。類語で「苦心」もありますが、腐心のほうが問題の規模が大きく時間がかかり、困難な時に適します。
<例文>
- 会社の復興に腐心する。
- プロジェクトに腐心されたリーダー。
「粉骨砕身」と似た意味の四字熟語
粉骨砕身の四字熟語での言い換え表現を紹介します。表現力の幅を広げるためにも覚えておきましょう。
刻苦精励
刻苦精励(こっくせいれい)とは、とても苦労して励むことです。「刻苦」とは身も心も苦しむほど、励み努力するという意味があります。心も体も刻むほどの苦しい想いで、頑張る様子を表現しています。
自分の行動に対して使うと傲慢な印象を与えるため、「刻苦精励で頑張ったね」のように同僚や部下の努力を誉める時に使用しましょう。
粒々辛苦
粒々辛苦(りゅうりゅうしんく)とは、目的達成のために小さな努力や苦労の重ねが結果につながることです。「粒々」は穀物の一粒一粒を表し、農家の努力と苦労が結実したものが語源になっています。
<例文>
- 粒々辛苦のすえ、プロジェクトを成功させた。
- バイトの掛け持ちで粒々辛苦のお金を基に起業された社長。
彫心鏤骨
彫心鏤骨(ちょうしんるこつ)とは、詩文を作成する際、大変な苦心をすることを指します。訓読は「心に彫り骨に鏤(きざ)む」です。心に彫りつけ骨を刻みちりばめるような苦労を意味し、「ちょうしんろうこつ」と読むこともあります。
「彫心鏤骨の思いで作ったキャッチコピー」など産みの苦しみに適した表現です。類似表現の「苦心惨憺(くしんさんたん)」は詩文に限定しないため、ビジネスシーンでもよく使われます。
一生懸命
[一生懸命(いっしょうけんめい)」は、命がけで物事に取り組む様子を表します。相手にも自分にも使える言葉です。
また、切羽詰まった、余裕のない瀬戸際の状態を指す時もあります。「一所懸命(いっしょけんめい)」から出た言葉で、中世の頃、君主から任された一つの領土を命がけで守ることが由来です。
<例文>
- 一生懸命な姿に共感した。
- 一生懸命取り組んだ成果をご覧ください。
「粉骨砕身」の英語表現
粉骨砕身は英語で「making one's best exertions」です。「making one's best」は最善を尽くす、「exertion」は労作を意味します。苦心した作品や骨を折って労働することです。
「do one’s best」は「できるだけのことは行う」という意味に近く、粉骨砕身ほどの強い決意はありません。精一杯の努力を示す「make every effort to」も自己犠牲のニュアンスはなく意思表示程度です。
「粉骨砕身」の意味や使い方を理解しよう
粉骨砕身とは、骨を粉にし身を砕くほど労を惜しまず全力で取り組む意味で、決意表明などに使う言葉です。
粉骨砕身の言い換え表現は「骨折り」「尽力」「腐心」、類語は「刻苦精励」「粒々辛苦」「彫心鏤骨」などが該当します。ニュアンスの違いや使うシーンを覚えて、粉骨砕身を適切に使えるようになりましょう。