コロナ禍のステイホームで何か新しいことにハマった――という人は多いのではないでしょうか。そのひとつとして筆者の周りで人気なのが、ハンドドリップで淹れるコーヒーです。手軽においしく淹れられるコーヒーメーカーはたくさんありますが、良いコーヒー豆と出会ったときなどは、ハンドドリップで淹れたくなります。

単にコーヒーを飲むだけならインスタントやカフェポッド。コスト優先なら挽いてあるコーヒー豆を使ってコーヒーメーカーで淹れればいいでしょう。でも、少しでもおいしく飲みたいと思うようになってくると、その都度コーヒー豆を挽いて、挽きたて淹れたてのコーヒーに行き着きます。コーヒー粉と比べて圧倒的に香り高く、風味が楽しめるはず。最近では、手軽に使えるミル内蔵の全自動コーヒーメーカーも数多く登場しています。

  • ハンドドリップで淹れるコーヒー、少しの慣れでおいしく淹れられて楽しい!

挽きたてのコーヒーを淹れていると、コーヒー豆の産地による味の違いや、焙煎の具合による風味の違いなども楽しめるようになっているかもしれません。そして、コーヒーにこだわる中でとてもハードルが高いのが焙煎です。

コーヒー豆は産地で収穫されたあと、乾燥した豆が輸入されます。それを各地のロースターが焙煎して、コーヒーを淹れられる状態の豆になるわけです。

焙煎とは、豆を加熱してさまざまな化学変化を起こすこと。たとえばメイラード反応は、トーストしたパンに焼き色がつくのと同じで、タンパク質などが変化して焦げたような色になり、甘味や香りを引き出すもの。このほか、甘味や苦味を引き出すカラメル化、熱分解、加水分解が行われ、コーヒーのおいしさを引き出しています。

ただし、焙煎は非常に難しい……。ベストな状態で焙煎しないと焦げ臭くなったり、酸味だけが強く残ったりして、コーヒー豆のポテンシャルを生かせないどころか殺してしまいます。

  • コーヒー好きならいつかは挑戦してみたい生豆の焙煎

IoTでおいしく簡単に自家焙煎

今回、手軽にコーヒーの生豆を焙煎できる「SANDBOX SMART コーヒーロースター」を試してみました。ここ数年で日本以上にカフェ文化が広がっている、台湾のスタートアップ企業によるプロダクトです。

  • 「SANDBOX SMART コーヒーロースター」とクーラーのセット

SANDBOX SMART コーヒーロースターは、スマホアプリから生豆の種類や焙煎具合などを選択するだけで、セミオートでコーヒー豆を焙煎できる家庭用焙煎機です。

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本体はかなりコンパクト。幅230×高さ260×奥行き255mmというスクエアなボディです。焙煎方式は電熱直火式で、一度に100gのコーヒー豆を焙煎できます。内部にステンレス製のドラムがあり、そこにコーヒー豆を入れて焙煎する仕組みです。

  • SANDBOX SMART コーヒーロースターの正面と側面

  • 前面のドアを開けるとドラムにアクセスできます

  • ドラムを取り出したところ。側面のフタを開いてコーヒー豆を入れます

スマホアプリから焙煎をコントロール

では実際に、「SANDBOX SMART コーヒーロースター」を使って焙煎してみましょう。SANDBOX SMART コーヒーロースター本体の電源をコンセントに接続して、スマホでアプリを立ち上げ、ペアリング(Bluetooth)を実行します。

  • SANDBOX SMART コーヒーロースター本体の電源をコンセントに差すと待機状態に。アプリを立ち上げて、ペアリングメニューから「SANDBOX SMART コーヒーロースター」を選びます

  • アプリのメイン画面。「曲線データベース」から焙煎設定を選択

焙煎の設定は、「曲線データベース」から選びます。基本となる「プリセット曲線」には、浅煎り、中煎り、深煎りという3種類について、電圧の違い、ゆっくりと加熱するスロー焙煎の設定があります。基本的には110V設定を選んで焙煎。

「アドバンスド曲線」には、豆の産地や状態に合わせた設定を用意。「コンペティション曲線」には、2020年コーヒー焙煎大会の設定が並んでいます。こういう先人のすばらしい焙煎を手軽に試せるのも、コーヒー好きにはうれしいところ。

  • 「曲線データベース」をから「プリセット曲線」を選ぶと、さまざまな焙煎設定が表示されます

さて、1回目の焙煎は、プリセット曲線から「浅煎り」を選びました。アプリ画面上の「焙煎開始」を押して予熱をスタートし、ドラムに生豆を100g入れておきます。

  • ドラムにコーヒーの生豆を100g投入

  • 「100g 浅煎り(110V)」設定を選択して、焙煎開始をタップ

  • 予熱スタート

  • 予熱完了の画面が表示されたら、ドラムをセット

予熱が完了したら、フタを開けてドラムを入れます。庫内が熱くなっているので、付属の手袋をして作業。ドラムをセットしてフタを閉めたら焙煎スタートです。庫内に熱風が充満してドラムが回りだし、アプリ画面には庫内温度などがリアルタイムで表示されます。

  • アプリにはリアルタイムで庫内の温度やRoR(温度上昇率)を表示

「浅煎り」では、コーヒー豆の皮が割れるクラック音が連続して鳴りだすと焙煎終了の合図。アプリの「第1クラック」ボタンを押して焙煎を停止します。急いでドラムを取り出して、焙煎が終わったコーヒー豆をクーラー(セット品)の上に広げて冷却。浅煎りの焙煎時間は約14分でした。

  • 浅煎りで焙煎したコーヒー豆をクーラーの上に広げて冷却。これを早くやらないと、余熱で焙煎が進んでしまいます

基本的な焙煎の手順は以上です。

プリセット設定を使う限り、ユーザーが行うのは予熱後にコーヒー豆を入れるのと、クラック音のあとでコーヒー豆を取り出すだけ。焙煎を止めるタイミングは音が重要なので、SANDBOX SMART コーヒーロースター本体のそばにいる必要はありますが、温度管理などは任せられます。

焙煎後のコーヒー豆には少しチャフ(薄皮)が残っていましたが、クーラーで冷やしたあとにザルで混ぜたら一層きれいになりました。できれば、虫食い豆や未成熟豆、欠けている豆などをハンドピックで弾いていくと、淹れたコーヒーの雑味を減らせるでしょう。弾いた豆は肥料や消臭芳香剤として使えるのでムダになりません。

  • 自家焙煎したコーヒー豆をハンドドリップで。この時間が楽しい!

焙煎したコーヒー豆を1日休ませてから、挽いてハンドドリップで飲んでみました。浅煎りのコーヒー豆は、酸味が先に来る口当たりでとても爽やか。サードウェーブ風のコーヒー風味です。

続いて深煎りにも挑戦。深煎りの場合はクラック音がしたあとも焙煎を進め、「第2クラック」が来たらストップ。焙煎にかかった時間は約16分です。浅煎り(約14分)より長い時間焙煎しただけあって、光沢のあるダークローストのコーヒー豆ができあがりました。

  • 深煎りのコーヒー豆。クラック音で止めるタイミングを判断します

深煎りのほうは、漆黒の苦味とコクが強いコーヒーに。いわば、純喫茶などで飲める昔ながらのしっかりコーヒーのようです。同じコーヒー豆でも、焙煎具合を変えるだけでこれだけ変わるのかと改めて驚きました。

これが自家焙煎の魅力。焙煎によってコーヒーがまったく違うものに変わります。さらに、焙煎したコーヒー豆の保存期間によっても風味は変化するため、好みの焙煎具合と保存期間を探すのも楽しそうです。また、SANDBOX SMART コーヒーロースターのアプリでプリセット曲線は自在にカスタマイズできるため、生豆の状態や好みに合わせて調整するのも楽しみのひとつ。

  • プリセット曲線のカスタマイズ画面。各コントロールポイントの時間や火力、ファン風量やドラムの回転、クラックの設定を調整できます

個人的には、プリセットの深煎りと中煎りの間ぐらいが好みだったので、その辺りを狙った設定にカスタマイズ。自分で作った設定は、マイ曲線として保存できます。

趣味としてのコーヒーに魅力的なプロダクト

単にコーヒーを飲むだけなら数百円。しかし、SANDBOX SMART コーヒーロースターがあれば、コーヒー豆の挽き、ドリップ、そして焙煎にまでこだわった自分だけのコーヒーが淹れられます。それはコーヒーを飲むというだけではなく、コーヒーを趣味として楽しむもの。今回、焙煎しているとき部屋に漂う香りを楽しみながら、より深くコーヒーを感じられてうれしくなりました。

そう考えると、自宅に焙煎機があるのはすごく魅力的ではないでしょうか。手の空いた週末などに一週間分のコーヒー豆を焙煎――それは非常に楽しい時間。SANDBOX SMART コーヒーロースターは今後、有償のプレミアム会員に向けて多彩な焙煎設定を提供していく予定もあるとのこと。コーヒーの世界にどっぷり浸れそうです。