昨年4月に施行された「改正健康増進法」。“望まない受動喫煙をなくす” として、原則屋内は禁煙で、一定の条件をクリアした店舗のみが喫煙スペースを設けることができる。屋外では喫煙所を設けてある場所もあるが、コロナ禍の影響から休止している場所も多く、喫煙者には辛い状況となっている。
施行から1年経った現在、喫煙者と非喫煙者を対象に行ったアンケート調査をもとに、喫煙スペースの現状と今後の望ましい形について考えてみたい。
※ネットエイジア調べ「喫煙・喫煙スペースに関する意識・実態調査」
調査時期: 2021年2月22日〜24日
調査数: 20歳〜69歳の男女1,000名(喫煙者500名、非喫煙者500名)
調査方法: インターネットリサーチ
改正健康増進法から1年、現在の状況は?
最初に「改正健康増進法改正」についての認知度を聞いてみた。喫煙者は「知っている」が84.6%、知らない」は15.4% だった。これに対して非喫煙者は「知っている」が54.6%で、喫煙者に比べると30.0ポイントも低いという結果になった。
屋内での喫煙場所がさらに少なくなってしまうことは、喫煙者には大問題と言えそうだが、実際に喫煙スペースは減少しているのだろうか。
喫煙者(500名)に、2020年の4月以降(改正健康増進法の施行以降)、喫煙できる場所(喫煙スペース)の数がどのように変わったと感じるか聞いたところ、「増えた」は2.4%、「減った」は68.8%、「変わらない」は22.8%となった。やはり喫煙スペースは減少しているようだ。
喫煙スペースが減ってしまった喫煙者は、どんな行動をとっているのだろうか。昨年以降、喫煙できる場所が減ったと感じている人に聞いてみた。
「喫煙したくてもできなかった人」は67.2%、「喫煙スペースを探し回った人」は41.9%と、喫煙者にとってはストレスがたまる結果になった。さらに、具体的な行動についても聞いてみた。
喫煙者全体に聞いてみると、「喫煙スペースを探し回った」は59.2%で、喫煙者の過半数が喫煙スペースを探し回る"喫煙スペース難民"の経験があった。他にも「喫煙スペースからはみ出して喫煙」した人は27.6%、「禁煙場所で喫煙」した人は24.4%、「歩きたばこ」した人は22.6%、「たばこをポイ捨て」した人は14.8%で、マナー違反の回答も寄せられた。
そのような光景を、非喫煙者の目はどのように捉えているのかも聞いてみた。
「禁煙場所で喫煙している人を見かけたことがある」のは54%、「歩きたばこをしている人」は66.2%、「たばこのポイ捨てを見かけたことがある」のは65.6%という結果になった。非喫煙者ということもあり、どうしても厳しい目を向けてしまうということを考慮しても、過半数の非喫煙者は1年前、改正施行してからの方が喫煙者のマナー違反が目につくのかもしれない。
これは、喫煙スペースが減少したことが遠因になっていると捉えることはできないだろうか。喫煙スペースが減ったと感じる喫煙者が直面している状況は、「喫煙したくてもできないし、喫煙スペースを探してやっと見つけても、混雑していて、密を避けるためにはみ出してしまう」ということだ。
喫煙スペースが必要なのは喫煙者か、非喫煙者なのか
改正法の目的のひとつは、受動喫煙を防ぎ健康を守ることだった。しかし、喫煙スペースの減少により密な状況で喫煙せざるを得ない状況に加え、コロナ禍の影響で密を避けたいとする結果、マナー違反が目につく状況も起きているようだ。
喫煙スペースの必要性について
非喫煙者に、喫煙スペースは必要だと思うか、不要だと思うかを聞いたところ「必要だと思う(計)」は64.4%、「不要だと思う(計)」は35.6%となった。非喫煙者の多くは、喫煙スペースの必要性を認めていることがわかる。では、なぜそのように回答したのか、具体的に聞いてみた。
喫煙スペースが必要だと思う人にその理由を聞いたところ、「受動喫煙を避けることができるから」が63.7%で最も多く、「禁煙場所で喫煙する人が減ると思うから」が50.6%、「歩きたばこが減ると思うから」が43.2%と続いた。
一方、喫煙スペースが不要だと思っている人にその理由を聞いたところ、「においが漏れてきそうだから」が64%で最も多く、「煙が漏れてきそうだから」が60.7%、「3密(密集・密接・密閉)になりそうだから」が43.3%と続く結果になった。
では、非喫煙者が求める喫煙スペースとはどのようなものだろう。
非喫煙者に、どのような喫煙スペースがあるといいと思うか聞いたところ、「煙が漏れない」74.8%と「においが漏れない」67.6%のふたつが突出しており、「ゴミ箱が設置されている」29.8%、「ソーシャルディスタンスが確保できる」26.2%、「利用時間や利用人数が制限されている」19.8%と続いた。
喫煙者の望む喫煙スペースについても聞いてみたところ、「煙が漏れない」53.6%、「においが漏れない」52.6%で数字は非喫煙者より低いがトップ2は同じという結果になった。
最新設備の喫煙スペースのイメージは
喫煙者も非喫煙者も気になるのは「煙」と「におい」だということがわかった。そこで、煙やにおいが漏れないような最新設備の喫煙スペースの多い街に対するイメージについて聞いてみた。
最新設備の喫煙スペースの多い街は「住みやすい・利用しやすい」が66.6%、「たばこを吸う人吸わない人の両方にやさしい」が65.4%など、全ての質問に同意する人が多数派だった。喫煙者に同じ質問をして結果は「住みやすい・利用しやすい」が74.6%、「たばこを吸う人吸わない人の両方にやさしい」が69.0%だった。最新設備の喫煙スペースの多い街へは、お互いに良いイメージを持っていることがわかった。
煙やにおいが漏れないような最新設備の喫煙スペースがあるといい場所について聞いたところ、喫煙者・非喫煙者とも「駅前・駅周辺」(喫煙者65.4%/ 非喫煙者60.8%)が最も多かった。電車の時間を待ったり、友人と待ち合わせをしたり、時間を使うことが多い場所に設置してあればいいと考えるようだ。
以降は喫煙者と非喫煙者で差が出る結果になっている。喫煙者は「飲食店」52.4%、「商業施設」51.8%と続くが、非喫煙者は商業施設」50.2%、「オフィス」49.8%と続いた。最も差があったのは「コンビニエンスストア」で、喫煙者では47.6%だったが、非喫煙者は30.6%で17ポイント低かった。
現状はお互いに困っている!?
受動喫煙による健康被害を少なくする目的で施行された「改正健康増進法」。コロナ禍の影響も多分に受けてはいるものの、施行から1年経った今改めて状況を見返すと、「改正法による喫煙環境減→喫煙者の減少・受動喫煙機会減少→非喫煙者が無駄なストレスを感じることのない世の中」を目指していたはずが、喫煙スペース現象により実際には非喫煙者も喫煙者も双方困っている状況、と読み取る見方もあるかもしれない。