「初志貫徹」は、座右の銘やキャッチコピーとしてもよく使われる言葉ですが、なんとなくの意味で理解している方が多いのではないでしょうか。
本記事では、「初志貫徹」の意味や使い方について紹介していきます。正しく意味を理解し、ビジネスシーンで使いこなせるようになりましょう。
初志貫徹の意味とは?
初志貫徹は、広辞苑によると「最初に決めた志を最後まで持ち続けること」という意味の四字熟語です。初志は「初めに思いたった志望やもとからの志」を、貫徹は「貫き通すこと」という意味を持ちます。
最初に決めた目標を最後まで達成しようと努力し続けられる性格や姿勢を表すため、就職や転職の面接時に、自己PRや決意表明などでよく使われます。また、他人をほめる際の表現にも適しているので、披露宴や祝賀会などのスピーチにも用いられます。
間違えやすい言葉には「初心忘れるべからず」がありますが、こちらは未熟だった頃の自分自身を忘れることなく、打ち勝とうとする気持ちを無くさないよう精進していくべきだという意味です。
初志貫徹の使い方や例文
初志貫徹の具体的な使い方を例文と一緒に紹介します。初志貫徹の使い方を理解して、ビジネスシーンでの会話に活用しましょう。
初志貫徹の精神
初志貫徹に「精神」を組み合わせると、決めたことを最後までやり続ける気持ちをより強く表せられ、目標に向かって努力ができる意志の強さを表現できます。
<使用例>
- 周囲の反対を押し切って進んだ道だから、初志貫徹の精神で最後まで乗り切ってみせる。
- 初志貫徹の精神で毎日練習してきたから、明日の試合では良い結果を残せるだろう。
- 私には初志貫徹の精神がなかったから、君のように粘り強く一つの仕事を続けられなかった。
座右の銘は初志貫徹です
座右の銘を聞かれ「初志貫徹です」と言うと、「仕事を長期的に続けてくれそうだ」「どんな仕事も責任感を持ってやり遂げてくれそうだ」といったポジティブなイメージを相手に与えることができるでしょう。
<使用例>
- 自己紹介で「座右の銘は初志貫徹です」と言っていた職場の新人は、周囲からの信頼が厚い。
- 自己PR用紙に記入した「座右の銘は初志貫徹です」という言葉が、採用担当の目にとまったようだ。
初志貫徹で乗り越える
「乗り越える」という言葉をつけることで、初志貫徹を実行すると、困難や苦難に打ち勝てる気持ちを表現できます。
<使用例>
- どんな困難も、初志貫徹で乗り越える所存です。
- 高い壁にもひるむことなく突き進んでこられたのは、初志貫徹で乗り越えられると信じてきたからだ。
初志貫徹の類語・言い換え表現
初志貫徹に似た四字熟語や、似た意味を持つ同義語はいくつかあります。初めて見る方にとっては、なんと読むのか悩んだり、読み方に困ったりしてしまうような馴染みの少ない言葉もあるので、初志貫徹の類語として併せて覚えておきましょう。
終始一貫
終始一貫(しゅうしいっかん)の終始は「初めから終わりまで」、一貫は「一つの方針を貫き通すこと」という意味があり、終始一貫は「はじめから終わりまで一つの方針や態度を貫き通すこと」という意味になります。
終始一貫に似た言葉に「首尾一貫(しゅびいっかん)」や「首尾貫徹(しゅびかんてつ)」がありますが、この2つに使われている「首尾」とは、頭から尾までを表し、「終始」と同じ意味を持ちます。
首尾一貫
首尾一貫(しゅびいっかん)の首は「最初」、尾は「最後」を表しており、一貫は「一つの方針を貫き通すこと」という意味があります。先ほどの終始一貫とほぼ同じ構成でできていて、意味も「最初から最後まで一つの方針や態度を貫き通すこと」と同じです。
初志貫徹とは期間の違いで使い分けをし、初志貫徹は長いと数年、もしくは数十年にわたって続いていくときに使う言葉であるのに対し、首尾一貫は一つのプロジェクトや期間限定の行事などに良く使われる言葉です。
徹頭徹尾
徹頭徹尾(てっとうてつび)は、徹が「貫き通す」という意味を持ち、頭が「最初」、尾が「終わりを指す」ので、「最初から最後まで貫き通す」という意味の四字熟語です。
初志貫徹との違いは表現の仕方にあり、「初志貫徹する」という表現はありますが、「徹頭徹尾する」という使い方はあまりしません。「徹頭徹尾○○する」といったように、動詞と組み合わせて使用する言葉です。
<使用例>
- 徹頭徹尾反対する。
- 徹頭徹尾続けていく。
- 徹頭徹尾調査する。
また、徹頭徹尾はゆるぎない考えや理念に使われる表現のため、変化しやすい内容やあやふやな状況に使うことは不自然です。どのような内容でも、確固たる状態にある時に使うようにしましょう。
脈絡通徹
脈絡通徹(みゃくらくつうてつ)は、脈絡は「筋道」、通徹は「貫く」という意味を持ち、2つの言葉を合わせて「物事の道筋に矛盾がなく、一貫していること」という意味になります。
初志貫徹と比較すると、「貫徹」と「通徹」の意味は貫き通すという同じ意味になりますが、「初志」と「脈絡」は意味合いが少し異なり、類語としては少し違ったニュアンスになるので注意しましょう。
初志貫徹の対義語
初志貫徹の「一つのことを最初から最後まで一貫する」という意味から考える対義語は、「考えや方針を変える」という意味を持つ言葉です。その観点からすると、変えることを良いとする場合と、良くないとする場合の2種類の意味が考えられます。以下でそれぞれのタイプの対義語を紹介しますので、注意して使いましょう。
臨機応変
「りんきおうへん」と読みます。意味は、「時と場合に応じて、その場面に合った対応をすること」で、変化することをプラスに捉えた言葉です。
ビジネスシーンではもちろん、プライベートでも使う機会の多い言葉で、その場面や状況に合った対応をすることを「臨機応変に対応する」と表して使うことが多いです。
融通無碍
「ゆうずうむげ」と読みます。「融通」は滞りがないことや、その場その場で適切に対応することを指し、「無碍」は妨げになるものがない状態のことを指します。
つまり融通無碍の意味は、「特定のことにとらわれたり、こだわったりすることがなく、自由でのびのびとしていること」で、こちらもプラスの表現として使われます。
朝令暮改
読みは「ちょうれいぼかい」です「朝令」は朝に出した命令、「暮改」は夜に変更することを指します。つまり朝令暮改は、「朝命令を出し、夕方にはそれを改める、命令・方針がたびたび変更されて一定していないこと」を意味し、変化することをマイナスにとらえた言葉です。
ビジネスシーンにおいては、主に上の立場の人から下の立場の人に対する態度として使われることが多いです。上に立つ人間のいい加減さを示すニュアンスを含む言葉でもあります。
君子豹変
「くんしひょうへん」と読みます。中国の書物『易経』の「君子(立派な人物)は、過ちを悟るとすぐにこれを改め、正しい道に復する」からきており、本来の意味からすると、「過ちに気づけばすぐに行いを改める」という良い意味で使う言葉です。
しかし、近年では「身勝手な都合で態度を翻す」といった、良くない意味で使われることが多くなっており、どちらかというとマイナスイメージの強い言葉です。
初志貫徹の英語表現
初志貫徹の英語表現を2つ紹介します。
achieve one’s original objectives
achieveには「成し遂げる」、originalには「最初の」、objectivesには「目的」という意味があるので、achieve one’s original objectivesを直訳すると「最初の目的を成し遂げること」という意味になります。
一般的に、「目的」を表す単語はpurposeを使用しますが、細かいニュアンスの違いがあるため、この場合は「objectives」が用いられます。
「達成するべき目的」を表す言葉であるのはどちらも同じですが、objectiveの方がより具体的で達成できる目標のことを指し、purposeより堅い言葉のイメージです。そのため、政治やビジネスシーンで使用することが多い言葉です。
carrying out one’s original intention
carry outには「成し遂げる」、originalには「最初の」、intentionには「意図」「意向」という意味があります。直訳すると「最初の意図したものを成し遂げること」という意味です。
なお、carrying out one’s original intentionは、単に「最初に決めたことを貫き通す」という意味で、悪い意味にもなる表現です。
初志貫徹の意味や使い方を理解して使用することが重要
「初志貫徹」の意味や使い方を類語、対義語、英語表現などを交えて紹介してきました。一つのことをやり続けることや、変わらない志を持ち続けることというのは、簡単なことではありません。しかし、やり続ければ成果はついてくることでしょう。仕事に対して初志貫徹の気持ちで取り組むことは大切です。