富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の新しい代表取締役社長 執行役員社長/CEOとして、2021年4月1日付で大隈健史氏が就任。同日午後3時から、オンラインで記者会見を行った。

大隈新社長は、「FCCLは、人に寄り添い、お客さまの課題を解決する製品やサービスに注力する体制ができているが、活躍できるフィールドやポテンシャルはこんなものではない。昨年(2020年)から開始した富士通ブランドPCのアジアへの展開は、もっと広げていきたい。レノボが世界で展開しているPC以外の製品やサービスを、富士通との協業のなかで、日本のお客さまに最適な形で届けたい」などとした。

  • 富士通クライアントコンピューティングの社長に就任した大隈健史氏(写真右)、前社長の齋藤邦彰氏は会長へ就任(写真左)

また、「世界最軽量PC(編注:13.3型ノートPCのLIFEBOOK UH-X/E3)は、FCCLの技術の結晶であり、業界をリードしてきた存在。今後も世界最軽量PCの座は譲ることなく、継続的に投資を進め、追求していく」と述べ、独自性を持ったPCづくりを継続する姿勢を強調した。

大隈新社長は、千葉県出身の41歳(1979年12月生)。就任直前まで、Lenovo PCSD アジアパシフィックSMBセグメント担当エグゼクティブディレクターとして、シンガポールを拠点に、アジアパシフィック地域におけるレノボのPCおよびスマートデバイス事業グループの中小企業セグメントを統括。現地ニーズの独自性をとらえながら、製品企画やマーケティングを主導してきた経験を持つ。

それ以前は、NEC Lenovo Japanグループの最高執行責任者を務めたほか、Lenovoアジアパシフィック地域のチームを指揮し、コマーシャル部門やオペレーション・eコマース事業などを指揮してきた。

「ミッドマーケットに対して、直接、電話をかけるコールセンターをゼロから立ち上げ、中小企業向けに特化したeコマースサイトであるSMB PRO STOREを構築したり、チャネルパートナー向けのツールやシステム、ポータルサイトを構築したりといった、新たな取り組みを進めてきた。5年前には業界3位だったSMB市場におけるポジションが、いまでは1位にすることができている」(大隈新社長)

2012年にLenovoに入社する前は、McKinsey & Companyの日本支社およびフランクフルト支社にて、コンサルタントとして8年間勤務。2011年のレノボとNECのPC事業におけるジョイントベンチャーの実現には、McKinseyの立場から関与していた。2004年に早稲田大学大学院理工学研究科を卒業している。

  • FCCLが掲げるミッション

自身の性格を「せっかち」と語り、「数字を細かく詰めて、結果を速く求めることが得意。四半期単位で成果を求められるなかでは必要な要素」としながらも、「FCCLは、開発、調達、生産、販売、マーケティング、サポートまで、エンド・トゥ・エンドで、自前で展開する企業。長期的視点も大切になる。会長や経営幹部の助けを得て、よいバランスを探したい」とした。

大隈新社長「FCCLはジョイントベンチャー発足から3年を経過し、レノボと富士通の両親を持つ独自のポジションを築いている。レノボは、社員数6万人、売上高5兆円以上という世界規模の製造業であり、調達力やサプライチェーンに強みを持つ。また、富士通は、世界有数のITソリューション企業であり、DXに力を入れている。

FCCLは、2社が持つ規模とソリューション提案力、販売力を引き継ぎながら、FCCL独自のチャレンジを行う体制を整えた。独自のクリエイティビティを発揮する場とともに、世界最軽量PCといった尖った製品への投資も継続的にできている。ふくまろ(編注:FCCL製のPCに導入されているAIアシスタント)によるサービスにも挑戦し、お客さまに認められている」

FCCLの課題や、そこからの発展については以下のように述べた。

大隈新社長「日本でビジネスを行い、世界に広げていくという上では、レノボやNECといったレノボグループのPCブランドとは異なる独自の立ち位置を持つ必要がある。その際に、どちらかに寄るというのではなく、FCCLの独自性を持つための最適解を探し続けることが必要。それが課題であり、やりがいになる。

国内コンシューマ市場には、これまで通り高付加価値製品を投入していく。アジアのビジネスパートナーからは『Made in Japan』を待望しているという声が聞かれる。私がこれまで培ってきた香港やシンガポールといったアジアでの経験、マーケティングの知見、アジアに持つネットワークを生かして、アジアでのビジネス拡大にも貢献したい。

今年(2021年)は富士通のPCが発売されてから40周年。その節目に齋藤会長からバトンを受け継ぎ、FCCLをリードしていくことに喜びを感じている。アグレッシブに、お客さまに貢献していきたい」

  • 今後はレノボとのシナジーを高めるとともに、アジアでのビジネスを拡大

前社長の齋藤邦彰氏は取締役会長に就任

齋藤新会長2018年5月1日から1,000日を経過し、自信満々で社長のバトンを渡すことができる。お客さまとの約束はこれからも変わらない。Day1000まで継承してきたことはこれからも続ける。

FCCLのミッションは、コンピューティングの社会実装。これにより、お客さまの生活をコンピューティングでより良くし、それをなるべく多くの人や場所、長い時間でお役に立つことを追求する。PCは人と人とのインタフェースであり、人に寄り添うコンピューティングを続けていくことが大切。コロナ禍でも、人に寄り添っていたからこそ、お役に立てた。例えば、音も大切にしてきたことが、音楽教室でのリモートレッスンに生き、軽量化を追求してきたことが、より多くの場所でリモート利用できることにつながり、急激な変化にも対応できた。

人に寄り添う製品ポートフォリオはこれからも変わらない。お客さまの要望をいち早く実現し、お客さまのお役に立つという独自性はこれからも磨き上げていく。環境の変化によって、お客さまがコンピューティングする時間が増えている。いつでもどこでも簡単に――というコンセプトに加えて、疲れないというキーワードも加えたい。

一人でも多くのお客さまにベストフィットする製品ポートフォリオ、さらにベストフィットさせるためのBTOによるカスタム化。これらの製品をいち早く届けるための自前の開発チームや工場、高品質なライフサイクルでのサポートといった、製品、サービス、開発、製造、サポートをしっかりと継続していく。

最軽量モデルの追求はやめることはない。軽量化は、いまのトレンドに応える本質的な技術であり、軽量化を追求する姿勢も変わらない。また、ふくまろのようなAIアシスタントも継続していく。ただし、過去の延長線上では収まらないのもPC業界の特徴なので、さらなる進化も遂げていく」

恒例の本社壁紙と歴代PCの紹介も

今回の会見では、ふくまろのかぶりもの(※)を「FCCLの王冠」と称して、齋藤新会長から大隈新社長に贈呈。質疑応答の時間帯は、大隈社長が「ふくまろの大隈です」と改めて自己紹介し、これをかぶりながら回答していた。

※2018年1月に行われたふくまろの発表会見にて、齋藤会長が着用して話題を集めた

  • 「FCCLの王冠」とするふくまろのかぶりものを身に着けて質問に答える大隈新社長

大隈新社長「日本は課題先進国であり、それに対してテクノロジー企業がなんらかの回答を示すのは当然の責務。高齢者をはじめとして、すべての人のQoL(Quality of Life)向上に貢献したい。ふくまろを活用した様々な新サービスを考えており、今年度中には最低でもひとつは、新たなサービスをリリースしたい」

今後の役割分担については、斎藤新会長が「レノボと富士通の『いいとこどり』をするというのがFCCLを伸ばしていくキーワード。会長と社長の関係もこの方針を継続したい。これまでもレノボとの人材交流は行ってきたが、シナジー効果をより発揮するため、適材人材の交流をより積極的に検討したい」と述べた。

2020年来、FCCLが開催する記者会見は神奈川県新川崎の本社にあるオリジナル壁紙の前で行われており、その壁紙に描かれた富士通の歴代PCを齋藤前社長が紹介することが恒例になっている。例えば以前は「FMV BIBLO」や「FM TOWNS」が取り上げられた。

  • 1981年に発売された富士通初のPC「FM-8」を、壁紙を使って紹介

今回は、FM-8を紹介。「これが、いまから40年前の1981年に発売された最初のPC。『FM』の名称は富士通マイクロブロックから来ており、半導体部門が自ら半導体を作って、組み立てたもの。40周年を迎える今年(2021年)は、製品への力の入れ方が違う。ぜひとも楽しみにしてほしい」と、今後発売する新製品に期待を持たせた。

さらに齋藤新会長は、FCCLが新たな体制となってから約1,000日間の成果について振り返り、「成果はたくさんあったが、レノボの調達力、コスト競争力を得たことは大きな成果だった。13.3型ノートPCの世界最軽量を何度も更新したことも大きな成果であり、レノボが持つバックエンドの力があったからこそ実現できた。また、デザイン性があがったとも考えている。これまで富士通ブランドのPCはシニア層には評価されていたが、いまひとつだった若い人たちからの評価が高まっているのが、その理由である。チャレンジングなPCを投入し続けていると言われるようになった点も大きな成果」と語った。