古いものから新しいものまで、歴史と文化が交差する街・銀座。伝統の系譜を継ぎながら進化を遂げている江戸前鮨がある。大人なら知っておきたい真の鮨のうまさ。「銀座 鮨 奈可久」を訪れてみた。
伝統を継ぐ「銀座 鮨 奈可久」
「銀座 鮨 奈可久」は、銀座7丁目の銀座七四五ビル1階に店を構えている。六本木にある名店「六本木 奈可久 」からの暖簾分けだが、もとを辿ると銀座御三家の一つといわれた江戸前寿司の「奈可田」から生まれたお店。六本木で修業した店主の村上亀(むらかみひさし)さんが銀座に伝統の江戸前鮨を持ち帰ってきた。
店内はヒノキが香るぬくもりのある雰囲気。木の買い付けから行ったというこだわりぶりで、L字型の机やまな板なども1本の木から揃えているという。カウンター8席に4人まで入れる個室が1つ。店主の目が行き届く温かな空間だ。
メニューは、基本おまかせ2万1,450円。にぎりのみのおまかせは1万5,400円。長年の修行で鍛えた確かな目利きで選んだ旬なネタを提供している。今回はおまかせでいただいてきた。
おまかせで江戸前鮨の味を堪能
店主との距離も近いカウンターでは、小話を聞きながらメニューを楽しむことができる。まずは鮨に合うお酒を選びながら料理を待つ。日本酒やワイン、焼酎など様々なものが用意されているが、おすすめは「空(くう)」(2,530円)「摩訶(まか)」(3,080円)とのこと。愛知のお酒で東京でもこれを味わえるお店は少ないのだとか。今回は「空」をいただくことにした。クセのない柔らかな舌触りでほのかな甘みのある上品な味わいのお酒だった。
お通しは子持ちのやりいか。穴子を煮詰めた汁で味をつけているそうで、甘めな仕上がり。濃厚なたまごも味わい深く、これからどんな料理が出てくるのかわくわくさせてくれる。品数は季節によって変わるが、おまかせの場合おつまみは5~6品、にぎりは10~12品が登場するとのこと。
カウンターでは、店主の繊細な腕を間近で目にすることができた。細やかな包丁使いに、絶妙な加減でしゃりを握る姿。洗練された動きは思わず見続けてしまうほどだ。
「食事やお皿からも季節を感じてもらえるよう、ひとつひとつ思いを込めて作っています。江戸前の伝統を守りながら、ひと手間加えたオリジナルの料理でみなさまに楽しんでいただきたいですね」
和やかな店主は細部までこだわりを持つ。調理をしながらネタの産地や豆知識を教えてくれ、大人としての教養が高まる場でもあった。
魚に様々な工夫を凝らした江戸前鮨らしい赤身の漬けは、鮮やかな色合いで存在感があった。熟成された鮪はもっちりと舌にまとわりつくような感覚。濃い旨みを引き出し、シンプルさの中に匠の技が光る。
鮨の王道でもある中トロは、厚切りで絶妙な柔らかさ。季節によって最もおいしいものを買いつけているそうで、鮪らしいうまみを堪能できた。
江戸前鮨の代表的なにぎりである車えび黄身のおぼろ漬けは、六本木 奈可久から引き継いだもの。黄身酢おぼろは甘みがあり、しゃりの酸味と程よく絡み合う逸品。
この他にも、おつまみではカワハギの肝和えや焼き物としてのどぐろが。にぎりでは、佐賀のコハダや富山の白エビの昆布締め、愛知のたいら貝など趣向を凝らしたメニューが次々と並んだ。お口直しにはじっくりと時間をかけて火を入れたたまご焼き。スイーツのような甘さにほっと一息をついた。
現在はコロナ禍のため予約必須。16時から21時まで営業中。
「お仕事でもデートでも、おすしが好きな方をお待ちしています」と店主の村上さん。銀座の鮨という敷居の高さはあるかもしれないが、一足入ってみれば鮨好きをきっと温かく迎え入れてくれるだろう。
●information
銀座 鮨 奈可久
住所 : 東京都中央区銀座7-4-5 銀座七四五ビル 1F
営業時間 : 17:00~24:00(4月21日まで16:00~21:00)