決勝トーナメント進出には2連勝が必要。前期挑戦権を争った両者のどちらかが早くも脱落となる

第34期竜王戦(主催:読売新聞社)1組出場者決定戦の▲羽生善治九段-△丸山忠久九段戦が4月1日に東京・将棋会館で行われています。前期は挑戦者決定三番勝負で対決した両者。そのときは羽生九段が2勝1敗で挑戦権を獲得しています。今期は敗れると敗退となる出場者決定戦での対戦となりました。

羽生九段は1組ランキング戦1回戦で佐々木勇気七段に勝利した後、永瀬拓矢王座に敗れています。丸山も1回戦は佐藤康光九段を破りましたが、2回戦で稲葉陽八段に敗れてしまいました。

3組~6組まではランキング戦優勝者のみが、2組はランキング戦決勝進出者2名のみが決勝トーナメントに進めるのに対し、1組はシステムが異なります。

1組は最高クラスのため、決勝トーナメント進出枠は5つ設けられています。勝ち抜けシステムはいたってシンプル。2回負ける前に3回勝てばよいのです。たとえランキング戦1回戦で敗れても、出場者決定戦で3連勝すれば5位として決勝トーナメントに進めます。

羽生九段と丸山九段のようにランキング戦2回戦で敗れた棋士は、4位の枠を懸けて4人のミニトーナメントを戦います。本局の勝者は出場者決定戦決勝で木村一基九段-阿部健治郎七段戦の勝者と対戦します。

本日10時から開始の本局は、振り駒の結果羽生九段が先手番になりました。丸山九段が後手番ならば選ばれる戦型は決まったも同然。そう、丸山九段のエース戦法である、一手損角換わりです。前期の挑決三番勝負では第1局と第3局で出現したこの戦型。第1局では丸山九段が、第3局では羽生九段が勝利しています。

一手損角換わりに対して、現在有力とされている先手の作戦は2つあります。早繰り銀と棒銀です。羽生九段は前述の第1局では早繰り銀を、第3局では棒銀を採用していました。

第3局以来の対戦となった本局でも羽生九段は棒銀を採用。31手目までは第3局と同一の進行をたどりましたが、32手目に丸山九段が手を変えました。前回の敗戦を踏まえた改良策でしょう。

第3局の丸山九段は、2筋から4筋方面で戦いを起こす指し回しを見せました。ところが本局では飛車先の歩を突き捨ててから、△9三桂と着手。飛車と桂の協力で、縦から羽生玉に襲い掛かる狙いです。対する羽生九段も一度2六から▲3七銀と引いた右銀を、▲3六銀~▲3五銀とずんずん進めていきます。こちらも飛車と銀で縦の攻めを繰り出す作戦です。

攻め駒としては桂よりも銀の方が強いため、攻めの威力だけを見れば羽生九段が勝ります。しかし、問題は玉の位置。羽生玉が相手の攻め駒に近い7八に居るのに対し、丸山玉はまだ初期配置の5一のまま。あえて手損することによって、玉を戦場から遠ざけることに成功しています。攻めの威力差が勝るのか、それとも玉の安全度の差が勝るのか。そこが本局中盤の注目ポイントです。

持ち時間5時間の本局は、本日夜の終局見込みです。対局はABEMAで動画中継、将棋連盟Liveで棋譜中継されています。50歳になっても第一線で活躍する、同い年の両者の対決から目が離せません。


浅井広希(将棋情報局)

前期挑決三番勝負を戦った羽生九段(左)と丸山九段。写真はそのときのもの(提供:日本将棋連盟)
前期挑決三番勝負を戦った羽生九段(左)と丸山九段。写真はそのときのもの(提供:日本将棋連盟)