教育をビジネスとして継続していくことの難しさと挑戦
2020年度、15校の学校で生徒たちが取り組んだ本プログラムのフィードバックはSpace BD社にどんどん寄せられている。Space BDの永崎将利社長は前回の記事で紹介した通り、総合商社の人事部で働いていた時代に抱いた「人の優秀さとは何か」という問いが原点となり教育事業を立ち上げた人物。
「宝物のようなフィードバックであり、プログラムをより良いものに改良していきます。上野先生のお話を伺って、振り返りを実践に繋げることが大事だと再認識しました。会社の人材育成でも同じで、『知っていること』と『実践できること』にはすごくギャップがあります。これが難しいところであり、日常で繰り返し課題を意識させるように社内で『すべて自分事』というスタンプを作るなど試験的にやっています」(永崎社長)
プログラムを充実させる一方、ビジネスとして展開していくことの課題はどこにあるのだろうか。「上野先生の学校で、保護者の皆様からのご理解があるのはとても嬉しいですね。実際に教材としての手ごたえはいいし意義もあると自負しています。課題はビジネス展開です。学校や教育委員会にプログラムを購入して頂こうとすると、例えば推薦入試の結果との相関を示して『大学受験に効果があります』というところまでいかないと現実的になかなか広まっていかないかなと。社会全体の流れを作っていかないと教育を変えられないと思います」。
課題はありつつも、永崎社長にはこのプログラムが日本の将来にとって必要だという信念がある。「Space BDは宇宙商社として人工衛星の打ち上げサービスを行っていますが、最初は『儲からないよ』とみんなに言われました。でも日本の宇宙産業に必要だからとスタートし、売り上げを伸ばしています。人工衛星の場合は顧客との間で定めたスケジュール通り打ち上げ、軌道に投入すればいいが、教育は人を扱うものであり正解はない点が難しい。ただ、絶対に必要な事業だと思っています。せっかく起業家として生きるのだから、儲かるからやるのでなくて、本当に意味のあることをやっていきたい」。
今年秋、JAXAは宇宙飛行士候補の募集を行う。応募に際しての条件はパブリックコメントで広く意見を募り、柔軟に変えていこうとしている。
JAXA新事業促進部J-SPARCプロデューサー・高田真一氏は「JAXA自身も新しい世代の宇宙飛行士はどうあるべきかについては常に考えています。学校現場、教育現場から宇宙飛行士という人材の評価や育成についてフィードバックして頂きたい」と宇宙×教育が双方向で刺激しあえる未来に期待をよせている。