昨年から続く新型コロナウイルスの拡大により、テレワークの利用を拡大し、オフィスを縮小する企業が増えている。そうした中、タレントマネジメントシステムを提供するカオナビは、「社員が出社したくなる」オフィスに刷新した。時代に逆行しているようにも思える同社の取り組みだが、同社はオフィスの刷新によって何を目指しているのだろうか。
オフィスと会社のブランドを連動
今回のオフィス刷新を取りまとめたのは、CDO(最高デザイン責任者)を務める玉木穣太氏だ。同社は2020年7月にCDOを新たに設け、玉木氏が同職に就任した。玉木氏はXCOGの代表取締役CEOを継続しながら、兼業というスタイルでカオナビのCDOを務めている。
そもそも、カオナビでは社員が増えてきたことから、新型コロナウイルスが登場する前から、オフィスの拡張を計画していた。当時は、大抵の企業がそうであるように、総務部がオフィスの刷新を担当していたという。
通常、会社でレイアウトを変更する際、番号で席の場所が示された見取り図が使われる。玉木氏はあの無機質な見取り図を見た時、「コーポレートのブランドとオフィスがバラバラで動いている。これではいけない」と思ったそうだ。そこで、オフィスもカオナビのブランドを体現すべく、プロジェクトを練り直すこととなった。
社員が来たくなるオフィスを構築
では、カオナビの目指しているブランドとはどのようなものか。まず、カオナビは、社員と会社が対等な関係を構築する「相互選択関係」を目指している。社員を雇用しているからといって、会社が社員よりも上に立っているわけではないのだ。働き方においても「相互選択関係」が重視されており、「出社するか」「リモートワークをするか」は、社員が選択することができる。
そして、この「相互選択関係」を体現するオフィスのデザインコンセプトが「(T)OWN」だ。これは、従来の出社を前提とした「OFFICE」という考え方から、OWNの前にTを足したものとなっている。OWNは所有者のようにという意味があり、まるで自分の居場所のように感じられる、街をイメージしたデザインコンセプトとなっている。
玉木氏は「新オフィスは、働くための場所とは考えていません。働くことに加えて、遊びに来る、仲間と集まる、コーヒーを飲みに来る、さまざまなことができる場所と考えています」と語る。
しかし、新型コロナウイルスによって、労働環境はガラリと変わった。カオナビでも潤沢なオフィスに拡張するか、議論はあったそうだ。その時の状況について、次のように語る。
「社員にとって何が幸せかということを考えたら、パンデミックがあろうがなかろうが、われわれはオフィスを持つという結論に至りました。会社を避難場所にしてもらいたいと考えています。100%テレワークで働くことは、必ずしも幸せとは限りません。家で仕事がしづらい人もいます。そんな人は『会社に来てください』というわけです」
また、玉木氏は「会社にとってオフィスは何かという起点で話を進めると、オフィスデザインは失敗します。社員が通いたくなる、来てくれるオフィスを目指すことが大切です」とも話す。つまり、カオナビは、社員に徹底的に寄り添ったオフィスを追及しているのだ。