多くの人にとって、将来、公的年金だけで生活できるか不安になるもの。一時期、老後2,000万円問題も世間で賑わい、貯蓄に励んでいる人もいるでしょう。それでも、長寿化が進んで老後期間が長くなりつつある昨今、経済的な不安を払拭するのは難しいことかもしれません。
貯蓄を取り崩すばかりでなく、リタイア後に少しでも年金以外の収入を得ることができればそんな不安も和らぐでしょう。シニア世代でも自力でお金を得る方法は色々ありますから、お金を稼ぎ続けることも考えてみましょう。とはいえ、リタイアしてから急に新しいことを始めようとしてもすぐに収入に結びつくとは限りません。現役時代から、老後のお金の稼ぎ方を知っておくことが大切です。
■老後にかかるお金はいくら? 年金額は?
老後の不安といってもさまざまですが、見えない将来を案じることが不安になる元かもしれません。そこで、現在シニアの人たちの生活費や年金受給額を参考に、年金だけでいくら足りないかをイメージしてみましょう。何らかの対策法を考えられて、不安も小さくできるでしょう。
・老後の生活費
総務省の「家計調査(2020年)」によると、世帯主が65歳以上の夫婦世帯の消費支出額は平均月額23万514円です。単身世帯は13万8,542円となっています。
一方、現役世代の人たちが考える、「将来、夫婦2人で老後生活を送る上で必要」な最低日常生活費は平均月額22万1,000円(生命保険文化センター調べ)ですから、それほどかけ離れた金額ではないようです。ちなみに、ゆとりのある老後生活なら平均月額36万1,000円となっています。
・貰える年金額
厚生労働省の資料を参考に、国民年金のみ受給の場合と厚生年金(国民年金を含む)受給の場合で、現在年金受給中の人が平均いくらもらっているかをまとめました。
ちなみに納付期間が25年以上と未満で分かれているのは、公的年金を受給するための納付最低年数によるものです。この年数は2017年8月以降、最低10年となっていますが、それまでは25年以上の納付が必要でした。現在年金をもらっている人の多くは25年以上納付している人たちです。
このように、将来もらえる年金額は加入している年金制度(国民年金のみか、厚生年金か)や加入(納付)した期間、また厚生年金では加入期間中の平均年収などによって変わります。ちなみに国民年金は40年間納付すると満額を受給でき、月6万5,141円(2021年度の額)です。
仮に、夫が15万円、妻が6万円、夫婦で21万円受給できれば、現在のシニアの平均生活費水準で考えたときの不足額は約2万円です。老後に月2万円稼げれば、老後資金として貯めたお金は毎月取り崩す必要もありませんし、3~4万円稼げれば少しゆとりができそうです。貯めたお金は旅行やリフォームなどが必要となる時のために置いておけられると思うと気持ちも少し軽くなるでしょう。
■老後にお金を稼ぐには
老後にお金を稼ぐ手段をいくつか紹介します。もちろん複数の方法にトライしてもいいでしょう。一般的に、老後は現役の会社員時代と違って、時間に余裕ができ、縛りが少なくなります。
・再雇用で働く
高齢者雇用安定法が改正されて、2021年4月1日から企業には70歳までの就業機会を確保することが要されます。具体的には70歳までの定年年齢の引き上げや、再雇用などです。働く人には70歳まで同じ会社や関連企業で働けるチャンスです。再雇用では、収入低下や上司・部下の逆転現象などマイナスイメージもありますが、職場や業種はそのままで働き続けられるのは大きなプラスでしょう。
・シルバー人材センターに登録する
シルバー人材センターに登録しておくと、さまざまな仕事を紹介してもらえる可能性があります。仕事の種類は一般事務から毛筆筆耕、宛名書き、育児サービス、水道・ガス検針、和・洋服リフォーム、翻訳・通訳等々、ジャンルも幅広くあります。現役時代の職業経験に限られず、趣味や得意を活かした仕事ができるかもしれません。
・シニア向けアルバイトに応募する
シニア向けのアルバイト募集も増えてきています。上記同様、これまでとは違う、やりたかった仕事をできる機会にめぐりあえるかもしれません。
・家事代行、講師など特技を活かす
特技を活かした働き方として、家事代行や講師、アドバイザーなどの仕事もおすすめです。たとえば、園芸やガーデニングの知識があれば園芸店でアドバイザーの仕事、機械整備の知識があればカルチャーセンターが開催しているロボット教室の講師などの仕事ができるかもしれません。カルチャーセンターでは、手芸、フラワーアレンジメント、絵画、語学、囲碁・将棋、話し方、ワイン等々、さまざまな教室が開催されています。今のうちから近くのカルチャーセンターが開催している教室をチェックして、今から自分の趣味に磨きをかけたり、資格を取得しておくのもいいでしょう。
・資産運用、不動産で収入を得る
資産に働いてもらう方法もあります。株式や債券、外貨、金などの運用収入や、不動産を貸して賃貸収入を得る方法です。ただし、定年退職金を元手に退職してから資産運用を始めたり、賃貸物件を購入するのはおすすめできません。資産運用も不動産運用もリスクがあるうえ、株や不動産を買ったからといってすぐに収入に結びつくとは限りません。若いうちから少額の余裕資金で資産運用を始め、知識と経験を積んでおきましょう。
■楽しみながらお金を稼ぐ!を目標に
人生100年時代といわれるほど、長生きする人も増え、老後期間はますます長くなる傾向にあります。年金や貯蓄の取り崩しを心配するのはもっともで、老後も働く必要性は高まってきていますが、「働かなければいけない」と考えてしまうと不安が募るばかりです。しかし、定年退職を機に「残りの人生、趣味や特技を活かしてお金を稼ごう」と考えれば老後に働くのも楽しみになるかもしれません。
そのためには健康も大切です。「欲張らない」、「体力的に無理をかけない」、「資産運用でリスクを冒さない」を心がけ、楽しく働きお金を稼げるように努めたいですね。