タレント・俳優の片岡鶴太郎が、テレビ朝日系スペシャルドラマ・終着駅シリーズの最新作『終着駅シリーズ37 停年のない殺意』が、あす4月1日(20:00~)に放送されるのを前に、共演した故・岡江久美子さんについて語った。

  • 片岡鶴太郎=テレビ朝日提供

37作目となる今回、片岡演じる牛尾刑事が捜査に当たるのは、東京・新宿の公園で若い男性の遺体が見つかった事件。被害者は文房具メーカーの社長秘書・伊庭崇彦(堀井新太)で、第一発見者の妹・晴美(山谷花純)は、兄から「面白いものを見せてやる」と呼び出されていたことを打ち明ける。しかし晴美だけでなく、父・悌二(尾美としのり)、母・頼子(七瀬なつみ)も“面白いもの”には心当たりがないという。

聞き込みを進めた牛尾は、勤務先の社長・市野清明(国広富之)をはじめ、誰からも「優秀で素晴らしい青年」と褒められる崇彦に裏の顔があったのではないかと考える。また、父・悌二がつぶやいた「7.5センチの幸せ」とは。次第に、平凡な一家に潜む切なくも悲しい真実が浮かび上がっていく。

昨年4月、新型コロナウイルスによる肺炎で急逝した岡江さんは、1997年放送の第7作からシリーズに登場。岡江さんが亡くなった後「終着駅シリーズはどうなるんですか?」という問い合わせが多数あり、片岡や監督、プロデューサーは話し合いを重ねた。その結果、「岡江さんに代わる人はいない」という思いから、岡江さんが演じた牛尾の妻・澄枝の姿は、過ぎし日の追憶の中で静かに登場することに。

片岡は「ファンの方々はこの作品を見れば、岡江さんの存在を改めて感じてくださると思いますので、終着駅シリーズが続く、ということは、岡江さんもまた生き続ける……そんな意味があると思うんです」と語り、「天国の岡江さんには『シリーズが続くかぎり、精一杯、務めさせていただきます』とお伝えしたいです」とメッセージを送る。

さらに「追憶シーンには牛尾刑事のナレーションが入るのですが、僕の思いを牛尾さんの言葉にのせています」と、岡江さんへの感謝をセリフに込めたことを明かし、「みなさんにこの作品を見ていただいて岡江さんを思い返していただけたらうれしい」と呼びかけた。

そのほかキャストへの思いなど、片岡のコメントは以下の通り。

――最新作『停年のない殺意』の見どころは。

家族……特に父と息子の男同士なんて、なかなか面と向かって本心を吐露するのは難しく、行き違いが起きがちですよね。今回は、そんなすれ違いから生まれた、切なく悲しい事件が展開していきます。ミステリーではありますが、事件の推理だけでなく、犯罪に手を染めることになってしまった人物の心情にまで思いを馳せていく展開……。それこそが終着駅シリーズの真骨頂であり、監督が常に追い求めているところです。そういう意味で、本作はまさに終着駅らしい作品だと思います。

放送よりひと足早く完成版を見たのですが、面白かったですね! 尾美としのりさん、七瀬なつみさん、国広富之さんらベテラン勢も素晴らしかったし、堀井新太くん、山谷花純さんら若手のみなさんもとてもいいお芝居をされていて、私自身、涙してしまったぐらいです。そして、改めて岡江久美子さんという素晴らしい女優さんを失った悲しみを感じさせられました。お亡くなりになって1年近く経ちますが、みなさんにこの作品を見ていただいて岡江さんを思い返していただけたらうれしいですね。

――1996年の第5作から牛尾刑事を演じてきたが、25年を振り返って思うことは。

僕は一切、過去の作品を振り返らないんです。監督、プロデューサー、脚本家の方々が次はどんなメッセージを牛尾刑事に託してくれるのか、それを楽しみにしているので、25年続いたからといって“慣れる”ということはなかったですね。どれだけ演じてきても、脚本をいただくたびに僕にとってはまた新たな作品という位置づけなので、脚本を読んだら牛尾刑事を務めるために彼の言霊であるセリフをしっかりと自分の体や魂に吸い込ませ、牛尾刑事の肉体と精神を携えて現場に行く……。これしかないです。

――視聴者へメッセージを。

人間、日常生活の中で、誰しも被害者や加害者になりうる瞬間があると思うんです。ふと心にわいた怒りのせいで感情的になってしまったり、配慮がほんの少し足らなかったり……。そういう一瞬の感情の交差の中で犯罪は起きてしまうし、人は常にそういう危うさを持っているのだと思います。そして事件が起きて初めて、昨日までの平穏な日常がいかに大事だったか、“当たり前の尊さ”に気づく……。だから、そうならないように「今の私の行動は大丈夫なのだろうか」と常に省みる心を持つことが大事なんだなと思います。終着駅シリーズにはそういう大きなメッセージが根底に流れています。コロナ禍の行き詰まった状況の中だからこそ、日常の幸福を考えながら静かに最新作を見ていただけたらうれしいですね。