発注とは、ビジネスで仕事を依頼するときによく使われる言葉です。実際に日ごろから活用しているビジネスパーソンも多いでしょうが、類語である注文との区別をきちんと理解している人となると、その数はぐっと減ることでしょう。
この記事では発注の正確な意味や発注の流れ、発注書に必要となる項目などをご紹介します。
発注と注文の意味
まずはともによく聞く発注と注文のそれぞれの言葉の意味と違いを理解しておきましょう。
発注とは
「発注」とは、注文を出すことを表す言葉です。ビジネスシーンでは、備品など品物などの購入を申し込む場合や、仕事の依頼を頼む場合などに用いられます。
この例からもわかるように、発注という言葉は「対企業(業者)」というケースにおいて用いられることが多いです。「A社に河川工事を発注する」という表現はあっても、「A社に河川工事を注文する」といった表現はあまり聞かないのではないでしょうか。
注文とは
「注文」とは、品物の製造・配達などの依頼や、品物を購入するときに用いられる言葉です。後ろに続ける言葉を変えることで、注文をする側・受ける側両方で使えます。
- 注文する
- 注文を受ける
発注との対比という意味で考えると、注文という言葉は「対個人」というケースにおいて用いられることが多いです。「レストランでハンバーグ定食を注文した」という表現はあっても、「レストランでハンバーグ定食を発注した」といった表現はあまり聞かないのではないでしょうか。
発注と注文の違い
発注と注文の意味を正しく理解したところで、改めて2つの違いをみていきましょう。
(1)発注は使える対象が限られるが、注文は限られない
注文は後ろに続ける言葉を変える(「注文する」と「注文を受ける」)ことによって、注文をする側と受ける側のどちらでも使える言葉です。一方の発注は注文を出すことを表す言葉である以上、注文をお願いする立場の人(する側)しか使えないため、使える対象が制限されます。
(2)発注は主に企業向けに、注文は主に個人向けに用いられる
先ほども少し触れましたが、発注は主に企業や業者に対して用いられるケースが多いです。
【使用例】
- A社に最新技術を搭載した潜水艦を発注した
それに対し、注文は個人に対して用いられるケースが多いです。
【使用例】
- 喫茶店に入り、店員さんにアイスコーヒーを注文した
発注と受注の違い
「受注」とは、注文や仕事を受けることを表す言葉です。「発注」は注文や仕事の依頼をすることなので、「受注」は「発注」の対義語です。
例えばA社からB社へ仕事を依頼した場合、下記のように「発注」と「受注」を用います。
- A社がB社へ仕事を発注した
- B社はA社からの仕事を受注した
例のように、仕事や注文を受けた場合には、「受注」を用いてください。
発注の流れ
ビジネスにおいて実際に発注するのであれば、ビジネスにおける取り引きの流れを理解しておく必要があります。ビジネスで一般的に扱われる書類や、取り引きの流れについて見ていきましょう。
申し入れと承諾が必要となる
契約が成立するためには、注文や依頼をする側が申し入れし、相手側が承諾することが必要です。申し入れに当たるのが「発注」で、相手に注文が届いて「受注」すれば、契約が成立します。
申し入れと承諾には原則として書面は必要ありませんが、金額や内容をはっきりさせるために書面が用いられることは多いです。
見積書をもらう
会社で高額な備品などを注文するときや、仕事の依頼をする前に、先方の会社に依頼して見積書を作成してもらいましょう。見積書には商品やサービス内容の明細、単価や数量、合計金額など、取り引きに必要となる情報が記載されています。
内容に納得できない場合や、数量や金額などを交渉したい場合など、見積書が複数回発行されることもあります。
発注する
見積書の内容に合意して、社内で承認されて発注が決まったら正式に発注を行います。発注には、「発注書」「注文書」が発行されるのが一般的です。発注書は契約が成立するうえで必須ではありませんので、省略されることもあります。
しかし、金額や内容のトラブルを防ぐために、通常は発行されるケースが多いです。金額や内容のトラブルを防ぐためにも、書面を取り交わしておくのがおすすめです。
受注をする
発注書などで発注を打診された会社が、承諾することで契約が成立します。「受注書」や「発注請書」は必ず必要なわけではありませんが、間違いを防ぐために発行する会社は多いです。契約が成立したら、商品の手配やサービスの提供を行います。
発注書の書式
トラブルを防ぐためには最低限記載したい項目は押さえておきたいところ。そこで、発注書の書式を紹介します。
テンプレートを活用する
ミスやトラブル防止のため、共通の発注書テンプレートを用いている会社は多いです。決まったテンプレートがとくになければ、インターネット上に存在しているさまざまなテンプレートを活用しましょう。
例えば、Microsoftの公式サイトでは、Wordで使える発注書のテンプレートを配布しており、無料で使用可能。一から自分で作成しなくてもよく、発注書作成の手間を軽減できます。
発注書に必要な項目
発注書は必ずしも作成しなければならない書類ではないため、法律で決められた様式はありません。しかし、後々のトラブルを避けるために、いくつか備えておきたい項目があります。
- タイトル(発注書、注文書など)
- 送付先(依頼先の会社や個人名)
- 発注日
- 発注番号
- 発注内容
- 単価
- 数量
- 小計
- 支払い条件
- 納期
- 消費税額
- 合計額
上記を参考にしながら、発注書を作成していきましょう。
発注書テンプレート例
テンプレートサイトなどに掲載されている既存のテンプレートを活用すると、発注書を比較的簡単に作成できます。
あらかじめ必要な項目が設定されており、時間をかけずに発注書を作成できますので、うまく活用してください。
発注書発行時の注意点
発注書は業務で発行する正式な書類ですので、作成するにあたっていくつか気をつけておくべき点があります。のちのちのトラブルを防ぐために、作成時に注意すべき点を見ていきましょう。
見積書の内容をもとに発注書を発行する
発注書を作成するために、あらかじめ先方から見積書を発行してもらっている事例が大半のはずです。
見積書には、金額や条件など発注書作成時に必要となる情報が記載されています。受注先が処理をスムーズに行えるよう、手元にある見積書の内容をもとにして発注書を作成しましょう。
発注書は必ずしも必要ではない
契約は、申し入れと承諾があれば成立します。発注書は発行義務がある書類ではありませんので、発注書がなくても契約は可能です。
例えば、定期的に商品を注文しているなじみの取引先など、電話でのやりとりで契約が成り立つケースもあります。
ただ、ビジネスにおいては、万が一のトラブルを防ぐためや社内処理のために発注書を発行する場合が多いです。
発注書には保管期間が定められている
発注書には、保管期限が定められています。
法人税法 | 事業年度の確定申告書提出期限翌日から7年間 |
会社法 | 10年間 |
法人と個人事業主とで保管期間が異なります。すぐに捨てずに必要な年数保存してください。
発注書に収入印紙が必要な場合もある
発注書には基本的に収入印紙を貼りつける必要がありません。
しかし、発注書が契約書として扱われる場合には、発注書は課税文書とみなされるため、収入印紙を貼らなければなりません。
印紙税額は契約の金額によって異なり、契約金額が1万円未満なら不要です。
課税文書に収入印紙を貼らなかった場合は最高3倍の金額の過怠税が徴収されますので、忘れないように貼りつけましょう。
発注の流れを理解してスムーズに仕事を進めよう
仕事の依頼や品物の注文などをするときに、「発注」という言葉が用いられます。類義語として「注文」が用いられる点や、対義語が「受注」であることを知っておくと、やりとりがスムーズです。
ビジネスで発注するときには、相手方から見積もりをとったり、社内で承認をとったりなど、発注に関わる手続きはいくつかあります。その際必ずしも発注書の作成が必要なわけではありませんが、後々のトラブルを防ぐために発行するのが一般的です。
発注書の作成には、社内のテンプレートや、ダウンロードサイトなどを活用するとスムーズに作成できます。まずは上司や職場の先輩にテンプレートがないか確認してみましょう。
発注に伴う手続きは意外と多いので、少しずつ慣れていき、スムーズに発注できるようになっていきましょう。
参照文献
総務省e-gov法令検索
国税庁 契約書や領収書と印紙税
国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間及び保存方法