AMDが3月19日に販売を開始したRadeon RX 6700 XTのリファレンスモデルは、ミドルレンジに位置づけられたことでデュアルファンを搭載して登場しました。しかし発表会の最後、「各ベンダーからRadeon RX 6700 XT搭載カードが登場します」というシーンで紹介されたオリジナルファン搭載モデルは、なんとMSIを除いてすべてトリプルファンだったのです。

  • 発表時公開されたパーツメーカーのラインナップ。ほとんどみんなトリプルファン採用

「リファレンスモデルではデュアルファンなのに、なんでトリプルファンで設計したんだろう」「かなりクロックを高められるRadeon RX 6000シリーズということもあり、冷却力が高いほうが性能を引き上げられるということなのかな」という筆者の疑問に対し、ASUS JAPANのご厚意でトリプルファン搭載モデル「ROG-STRIX-RX6700XT-O12G-GAMING(以下ASUS ROG STRIX 6700 XT)」をお借りすることができました。というわけで今回は、トリプルファンを搭載する最強モデルとデュアルファンを搭載するリファレンスモデルで、かんたんに性能や高負荷時の温度をチェックしてみようと思います。より詳細なベンチマークについては「Radeon RX 6700 XTを試す - RTX 3070より速い? 普及帯でNVIDIAと真っ向勝負」を要チェック!

  • デュアルファンとトリプルファンに違いはあるのか?

デカくて重く、ミドルレンジ感を超えた威容

まずはASUS ROG STRIX 6700 XTについて外観をチェックしておきましょう。冷却機構には、多くのブレードを備えて中央だけ逆回転して効率を高める「Axial-techファンデザイン」を採用。GPUチップとの接触を2倍にするという「MaxContactテクノロジー」を搭載し、強力な冷却性能を実現しているとのこと。バックプレートがVRAMの裏面あたりに接触しており、抜かりなく冷却が行われている様子です。

手に持ってみると、ずっしりとした重みにミドルレンジらしからぬ存在感を感じました。ヒートシンクを覆うカバーも高い質感で、側面にはイルミネーションをカスタマイズできるARGB LEDと強度を高める金属フレームを備えます。かなり重いので、サポートステイなどで支持したほうが安心して使えるでしょう。

  • トリプルファンは真ん中だけ逆回転することで冷却効率を高めるとのこと

  • 映像出力端子はDisplayPort×3、HDMI×1。ブラケットにはステンレススチール 304を採用して強度を高めています

  • 補助電源には8pin×3を要求し、2.9スロットを専有する分厚さです

  • 鮮やかに輝くイルミネーション。デフォルトだとさまざまな色に遷移していくアニメーションになっていました

  • Dual BIOS仕様なので、"P"を選択しています

ピーク性能と高負荷時の温度をチェック

今回グラフィックスカードのベンチマークに用いたのはAMD Ryzen 7 3700X、16GBメモリ、AMD X570マザーボードで構成したプラットフォームです。ケースには収納せず、テストはベンチ台で実施。パフォーマンステストには「3DMark Fire Strike」「3DMark Fire Strike Extreme」「DirectX Raytracing feature test」と、重量級ゲームタイトルとして「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を用いました。最も温度が高まった状態をチェックするため、「OCCT v8.0.1」で負荷をかけて最大温度でのクロックを確認しています。

  • ASUS ROG STRIX 6700 XT「GPU-Z」:2,644MHz

  • リファレンスモデル「GPU-Z」:2,629MHz

  • ASUS ROG STRIX 6700 XT「3DMark Fire Strike」:27659

  • リファレンスモデル「3DMark Fire Strike」:27369

  • ASUS ROG STRIX 6700 XT「3DMark Fire Strike Extreme」:16580

  • リファレンスモデル「3DMark Fire Strike Extreme」:16197

  • ASUS ROG STRIX 6700 XT「DirectX Raytracing feature test」:13.87fps

  • リファレンスモデル「DirectX Raytracing feature test」:13.46fps

  • ASUS ROG STRIX 6700 XT「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク:11464」

  • リファレンスモデル「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」:11341

GPU-Zで最大クロックについてチェックすると、ASUS ROG STRIX 6700 XTは最大2,644MHz、リファレンスモデルは2,629MHzとそこまで大差はありません。ベンチマークテストの結果でもASUS ROG STRIX 6700 XTのほうが若干上回っていると言えますが、体感できるほど大きな差にはなっていません。もっともリファレンスモデルの補助電源は8pin×1、6pin×1なので、もっと大きく差がつくかなと思っていたところ。しかし、高負荷時の動作温度には圧倒的な大差がつきました。

  • ASUS ROG STRIX 6700 XTの「OCCT v8.0.1」

  • リファの「OCCT v8.0.1」

OCCT v8.0.1でしばらく大きな負荷をかけ、温度が高止まりになったときの状態をチェック。画像中、右上のグラフで表示されている「GPU Hot Spot Temperature」がタスクマネージャーのGPUで温度として表示されている数値です。結果としてはASUS ROG STRIX 6700 XTが77度となり、リファレンスモデルの97度という数値に対して20度も低い温度で動作していることがわかりました。動作クロックにもおよそ200MHz前後の差がついており、ここでもASUSのオリジナルファンが優れていることがわかります。なお、パフォーマンスへの影響としては上述の通りあまり大きなものではありません。

ASUSのトリプルファンなら熱いGPUも余裕で乗りこなせる

補助電源やファンの規模から推測されるほどパフォーマンス面では大きな差がつかなかった一方、高負荷時の動作温度には圧倒的な大差が現れた今回の検証。Radeon RX 6700 XT搭載カードの設計時、メーカー各社がトリプルファンを採用することに決めた理由が垣間見えることになりました。

また、ファン全開時の動作音についてもASUSのトリプルファンモデルのほうが小さく感じたことも実用上重要なポイントです。デュアルファン搭載のリファレンスモデルではかなり大きな甲高い風切り音が発生しており、ケースに収めてもかなりうるさく感じそうでしたが、ASUSのトリプルファンはよく調整されているという印象。実ゲームシーンでここまで高負荷になることはそうないと思いますが、ASUSのデカくて光る立派なクーラーは伊達ではなく、ゲーマーの集中を妨げることなく没入感を高めてくれるに違いありません。

  • パーツが光ると格好いい(マザーボードはASRockのX570 Taichiです)